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新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 特別編

2000-09-20 12:43:00 | 映画-2000年

「ガンダムに乗ってラブ&ピース」

 テレビ版『新機動戦記ガンダムW』の後日談、っていうか戦後に新たなる危機が発生したという設定。

 たまたま偶然にも『逆襲のシャア』と一緒に借りて観たのだが、なんとも対照的な作品だった。

 この作品にテーマは「ラブ&ピース」。
 同時に、平和になった世の中で行き場を失った兵士たち、平和に対して無自覚で体制に従順で愚かな民衆も描いている。
 
 世界の平和と自由のために、再びガンダムチームの5人が立ち上がるのだが、そのために彼らは「非殺」という態度を選択する。
 戦闘はするが、人は殺さない。
 モビルスーツは破壊するが、パイロットは殺さない。
 彼らはこの思想に則って戦い、そして(最終的には)勝利を収めてしまうのだが、それはあまりにも幼稚すぎる描写だ。
 しかも、ラストは民衆が己の過ちに気づくという、安易すぎる楽観論。
 もちろん主要人物は誰も死なず、大団円のハッピーエンド…戦争なのに。
 
 でも、こういうの好きです。大好きです。

 理想を理想論として片づけ、現実は語るが、何もせずに皮肉な笑みを浮かべるだけの人間よりも、あり余る正義感をフィルムに叩き付ける方が好き。
 だから、この作品が大好き。

 こういうところが『逆襲のシャア』ひいては富野作品とは対照的なところ。
 富野作品では、常に「死」の現実が描かれており、決して楽観的な状況を描こうとはしないし、主要人物も死んでしまう(『イデオン』に至っては全員死ぬ)。
 こういう生臭い人間性、現実を描くのが富野作品だし、富野氏自身「死ぬこと」の実感という言葉で語っている。

 だが、私は作家の作品性や作家性を問う以前に、作品の「娯楽性」に重きを置いて観てしまう。
 そういう私にとっては、この『ガンダムW』の後味の良さは、とても爽快だった。

 きっと、この作品は反戦映画なのだと思う。
 反戦映画といえば、オリバー・ストーンのベトナム三部作が思い浮かぶ。
 終戦後、行き場を失った五飛やゼクスの苦悩する姿には、『ジャックナイフ』のロバート・デ・ニーロをだぶらせる。

 でも、この作品では、そういった負の部分(敗北感、孤立、退廃)にはあまり焦点を当てていない。
 それよりも、先程も述べた「正義感」をガンダムという媒体に乗せて、反戦メッセージをフィルムに思い切り叩き付けている。
 それは理想論すぎるし、決してあり得ない絵空事でさえある。むしろ、稚拙でさえあると言える。
 現実には「歴史を繰り返す(Endless Waltz)」だけだろう。
 でも、そんなわかりきったことを、わざわざ映画で描いても仕方がないことだ(先駆者がたくさんいることだし)

 方法論や描写の違いは些末な物だと思う。
 この作品からも十分に反戦メッセージは届いた。
 そして、なによりも見終わった後に爽快な後味が残る。
 楽観的で、脳天気な結末。でも、圧倒的な「ラブ&ピース」のパワーで押しまくった爽快な後味こそが、私にとっては重要なのだ。

 爽快な後味といえば、物語が完結して登場人物にはそれぞれ彼女ができたわけだけど、なぜかカトルにだけはできなかった。
 しかも、むさ苦しい野郎どもに囲まれているし。
 何となく可愛そう(笑)

 ちなみに「大好き」とは私にとって最大の賛辞である。
 このときCVには菅原祥子さんをあててほしい。

『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz 特別編』(ビデオ)
監督:青木康直
出演:緑川光、矢島晶子、関俊彦、中原茂、折笠愛、石野竜三、佐久間レイ、子安武人、横山智佐、紗ゆり、冬馬由美、松井菜桜子、他
ナレーション:大塚明夫
評価:7点(ガンダムWなので+1点)


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