今話題の政治ミステリー映画で藤井道人監督、松坂桃李、シム・ウンギョン主演の「新聞記者」を鑑賞
今回の映画、いわゆる巷で話題となった忖度、悪巧みをモデルにしたもので、東京新聞記者の望月衣塑子のベストセラーを原案にしています。内容としたリアルとフィクションが混在する映画らしい作品です。
シム・ウンギョン演じる東都新聞の記者・吉岡エリカのもとに、医療系大学新設計画に関する極秘情報が匿名FAXが届きます。ある強い思いをもって真相を突き止めるべく調査に乗り出します。一方、松坂桃李演じる内閣情報調査室の官僚・杉原は、現政権に不都合なニュースをコントロールする任務に疑問を抱き、かつての上司の謎の死により、政権の内部情報を暴くために吉岡に協力します。権力に立ち向かう二人に果たして勝算はという内容です。
映画のモデルになったと思われる記者の望月や元文部官僚の前川氏などが、対談形式のテレビ番組として流れる中で、内閣情報調査室の情報操作による様々な工作がモデルとなった事件と重なるようにミステリアスに展開して、実に面白い作品でした。また、権力に対峙したマスコミが直面するある種の危機感もうまく表現されていました。また、主役のシム・ウンギョンと松坂桃李の感情の揺れ動きや、事件のカギを握る、現上司役の田中哲司や元上司の高橋和也の好対照の役どころも光り、地味で渋い作品ながら、出演者がそれぞれの役どころを好演している点も魅力の一つです。
政治家がよく口にする平和ボケの日本に対して、異なる側面で突き付けているところも今までの日本映画にないリアリティーを感じ、ラストの意味深な問いかけも見事です。先ずは、ニュートラルな気持ちで作品を観てほしいなと思います。権力が踏み込んではいけない領域が理解できるのではないでしょうか。
