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重要文化財の秘密 東京国立近代美術館


東京アートひとり旅の最終レビューは、東京国立近代美術館70周年記念展「重要文化財の秘密」です。

 

今回の展覧会は、近代美術の重要文化財68点のうち51点が全国から集結したとても価値のある展覧会です。なぜ価値があるかと言うと重要文化財作品保護の観点から公開が限られているからです。さらにこれらの第一級の美術品が一堂に介することはまず難しいからです。そして、ここ東京国立近代美術館は近代美術の重要文化財の大半を所蔵しているからこそ今回の展覧会が実現したと言えます。

日本の美術史において近代美術は分岐点であり新しい芸術のスタート地点ともいえます。現在の日本の芸術の革新の源は近代美術から始まったと言っても過言ではないと思います。また、今日の洋画、日本画、工芸の世界においても新しい潮流であり、当時の美術界においては問題作と言える作品が数多く存在します。

たとえば洋画作品で初の指定となった高橋由一の「鮭」は写実表現の傑作でありその質感を表現するために切り取られた皮の脂との対比で表されたいわれています。また、後期の展示となりますが菱田春草の「黒き猫」は文展の審査員を委嘱された春草が制作期間5日間でありながら春草の独自の表現方法が散りばめられています。

また、関東大震災の潜り抜け100年の経過でありながら見事な保存状態と水墨画の傑作である大絵巻である横山大観の「生々流転」や長く行方が分からず昨年新たに重要文化財となった鏑木清方の「築地明石町」の美人画など枚挙にいとまがないです。

現在では何か「現代美術」だけが革新的なもののように思われがちで、難解な芸術表現や意味不明な作風に目を向けがちな昨今ですが、近代美術における重要文化財の革新性は観る人を容易く理解でき、さらに深く芸術への感動を誘うと思います。

会期は5月14日まで(菱田春草の「黒き猫」は5月9日から14日まで)まだ一か月余りと余裕があります。美術ファンなら見逃せない展覧会ですのでぜひご鑑賞ください。


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