先日、名古屋栄近辺にて、二つの美術展を鑑賞してきたので紹介します。本日1本目は、女流写真家で映画監督でもある「蜷川実花展ー虚構と現実の間に」です。
蜷川実花と言えば、映画「さくらん」「ヘルタースケルター」などの映画監督として広く知られ若い世代の支持も高い。しかし、そのルーツは写真界の芥川賞として有名な木村伊兵衛写真賞の受賞だろう。彼女の写真は、美術業界でも高く評価され僕自身も写真家としてのイメージが強い。また、一世代前の人には蜷川幸雄を父に持つことで馴染みがあるでしょう。
さて今回の展覧会。彼女の全貌を知るうえで最も大きな展覧会となっています。入場口には彼女自身がもっとも好きな桜の作品が四方に様々な形で切り取られた来場者をやわらかなピンク色で迎えてくれます。
次の部屋に入ると日本を代表する老若男女の有名人のポートレイトが色鮮やかに競演。壁一面に大小無数のポートレイトは被写体となったモデルの顔が生き生きと映し出され、撮る側と一体化したようなナチュラルさを感じます。原色の有名人物図鑑から一転、闘病中の入院中の病室から父の視点で映し出された日常作品は、徐々に死出の旅に向かっていく父の心境を代弁するかのようにおぼろげにゆっくりと投影さえとても印象的です。そんな優しさから一変してセルフポートレイトではモノクロームの実花本人の姿がエロスを放ちながら生身の彼女が迫ってきます。
他にも近年、蜷川が制作した映像作品が3本上映されています。また、ファインダー越しに見える様々な被写体の作品が壁面一杯に展示され独特な極彩色の世界が展開されています。ポートレイト作品を除いてほぼ撮影可能ですので、蜷川ワールドを記録と記憶にとどめてみてはどうでしょう。
東海地区では、現在バンクシー展が注目を浴びていますが、ぜひ若い世代にも蜷川実花の写真と映像ワークをぜひ観てもらいたいと思います。
次回は、愛知県美術館で開催中の横尾忠則展をご紹介します。
※会場でも上映されている「TOKYO道中」の映像作品