美術館を訪れる時に、その美術展での作品と共に建築も楽しみのひとつとなっています。優れた美術館は、その建物も美しく非日常を深く感じることができます。
美術館建築においても、その魅力を十二分に感じることができる建築家のひとりに安藤忠雄氏がいます。僕が建築に深く興味を抱くきっかけを作ってくれた人で、一般的にもコンクリート打ち放しの建築で有名な建築家です。
その安藤さんのドキュメンタリー番組が先日NHKのBSで「闘う建築家・安藤忠雄」として放映されました。今回の番組は代表的な安藤建築と広尾の新しい教会の建築が紹介され、安藤さんの建築哲学と人生観が色濃く投影された興味深い番組でした。
コンクリート建築には、その無機質な存在から嫌う人も多いのですが、安藤さんのコンクリート建築を観ていると、その完成されたコンクリートの打ち放しの美しさは群を抜いていて自然の中に佇む姿は、自然と融合された存在のように感じます。まさに自然への畏敬の上に成立するものだと思います。
今回の番組でも、その点に重きを置いて制作され、光や水、緑と安藤建築の関係性がよく理解できる内容でした。
また、番組で紹介されたベニスのプンタ・デラ・ドガーナ美術館は17世紀の建築物を生かし、内部にコンクリートの美術館のための箱を作る画期的な方法をイタリアの職人の技術の中で作り上げたもので、古い建物の壁のレンガに一切傷をつけずに完成したことに、伝統建築への敬意も感じました。
番組制作中に2回目のガンを公表され、術後も精力的な活動を続ける安藤さん。新しい挑戦の中で新たに生まれる安藤建築が楽しみです。