映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。中谷美紀主演のヒューマン映画「繕い裁つ人」です。
池辺葵氏のコミックを原作に作られた作品で、祖母の意志を継ぎ南洋装店を営む一江を中谷美紀が、彼女の洋服に惹かれて既製服の販売を勧める百貨店員・藤井を三浦貴大が演じています。
祖母の作った洋服を愛する人々の交流やその洋服を手直し続ける一江。彼女のデザイナーとしての才能に惹かれ既製服への進出を勧める藤井。偉大な母親から離れ、引き継いだ娘を陰で支える一江の母など、神戸に住む人々の営みを交えながら、年に一度開かれる夜会が作品のコンセプトとなって、静かなしなやかに進む時間は、観ていてとても心地よくなる内容です。
その人に寄り添うように作られた祖母の洋服は、時代を超えて変わらない美しさを感じます。それは、一江の繕い断つ行為により普遍的な美を作り出しています。そんな一江に、心の奥底にあったものが再び芽生え、その結実には誰もが感動すると思います。
今回の映画は、中谷美紀なしなくしては成立せず、彼女の憂いを帯びた優しい表情の中にある凛とした姿に、原作の主人公が投影されたかに感じ、原作を読んでみたいと思いました。