ベルギー出身の孤高のファンションデザイナーに取材したドキュメンタリー映画「ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男」を観賞
若い頃から、服が好きでファッションに興味があったのですが、自分が着る服とは別に、服作りのベースに流れる感性やライフスタイルに興味が向き、ドキュメンタリー作品をよく見ます。少なからずアートという仕事に携わっている以上、やはり自身の感性を磨くことは不可欠で、ドキュメンタリーを観ていると、とても共感や気づきがあります。
今回の作品は、ベルギーのアントワープ王立芸術院のファッションデザイン科出身のアントワープの6人の一人、ドリス・ヴァン・ノッテンのデザイナーとしての軌跡とライフスタイルに切り込んでいます。
25年間、メンズとレディースのコレクションを年4回欠かすことなく行うパワーの源は、恋人と共に花に囲まれた大庭園に過し、仕事とプライベートに両面に真摯に熱中する姿勢に育まれています。二人の関係に、かつてのイブ・サンローランとピエール・ベルジュの関係を思い浮かびましたが、共通する美意識とは別に、ドリスには、サンローランとは異なる陽のあたる幸福を感じます。彼の成功と幸福は、チームと位置づける現場と公私共に歩んでいるパートナーの存在が大きいと思いました。
また、広告をせず、大企業の傘下に入ることを嫌い、世間の評価に左右されることなく、自身の感性を頼りに今あるデザイナーとしての姿をデザインに反映する姿は、まさに孤高という言葉にふさわしい芸術家といえます。
特に印象的なのは、美しいものへの飽くなき探求心。花に囲まれたプライベートな日常や仕事現場でのテキスタルに対する理念には、究極的な美意識を感じました。