今回の映画レビューは黒沢清監督、菅田将暉主演の「Cloud クラウド」です。
菅田将暉を主演に迎え、初っ端から転売屋吉井として叩いて買った商品を高額で売り飛ばす悪い菅田が登場。表向きは工場で働く無欲な青年を演じながら、転売屋として己の欲望を昇華していく青年の本当の姿がむき出しになっていきます。
そして、彼を成敗しようとする男たちは、かつての被害者たち。人生を狂わされた市井の良い人。銃やライフルで吉井を狙います。そして吉井と共に男たちに立ち向かうのは吉井がクビにしたスタッフの青年佐野。佐野を演じるのは、長澤まさみ主演の映画マザーでデビューを果たした奥平大兼で謎めいた過去を持つクールな青年の裏の顔が出ることで物語はノンストップバイオレンスへと進みます。
端正な顔立ちの菅田と奥平は、どこか共通の雰囲気を醸し出していて二人の演技に惹かれます。また、彼を狙う人物たちも、岡山天音、荒川良々、窪田正孝など、およそ悪人とはかけ離れていて、そこも魅力的でした。よくよく考えてみると裏稼業で成立する構成で、裏の世界に足を踏み入れた人々の転落が描かれているようです。
黒沢清監督と言えばサスペンスホラー作品のイメージが強いのか、今回の作品も予告編から、かなり期待値が高くなったと思います。そのことで評価を低くしてしまった感を否めません。個人的は個性豊かな旬の俳優陣を起用したノンストップバイオレンスの実験的な作品ではなかったかと思います。果たして黒沢監督の真意の程は。