文化フォーラム春日井・ギャラリーで開催中の「アンリ・ルソーと素朴な画家たち展を観賞しました。
パリで、ピカソやローランサン、ブラックが活躍した時代に、様々な仕事で生計をたてながら、誰にも師事せず、好きな絵を描いた人々がいました。その人たちを指して、素朴(ナイーブ)派が生まれました。その中心的な存在がアンリ・ルソーで、彼もまた、パリ市の税関に勤務しながら絵を描いていました。
今回の展覧会は世田谷美術館コレクションによる素朴派の画家たちの展覧会です。
先ずは、画像のルソー作品「フリュマンス・ビッシュの肖像」にまつわる素敵なお話をしたいと思います。
この作品は、彼がルーブル美術館で出会い恋した女性の夫を描いた肖像画です。結婚後、まもなく夫であるブッシェは他界し、失意に暮れる彼女のためにルソーは肖像画を描きます。
片思いの女性の夫、言わば恋敵を、巡査官でありながら、最愛の妻の前で見せるであろう優しい表情で描いています。ルソーの優しさが伺える、素朴派にふさわしい作品です。
アンリ・ルソーの他に、アンドレ・ボージャン、セラフィーヌ・ルイ、カミーユ・ボンボワなどの、ルソーと同時代の画家たちの作品から、その後国外へと広がった素朴派の作品や日本の素朴派の作品に加え、素朴派に影響された近代、現代美術の作品など、素朴派の歴史をたどることができる展覧会です。
美術の世界には、技術の習得を基本にしてその後の自己表現にいたる画家たちと日常の生活を営みながら、絵の世界に純粋無垢に取り組み見るものに感動を与える二つの世界に分けれらます。
ただし、単に感性だけで表現する者を、素朴派のようなアーティストと認めるものではなく、そこにあるのは、やはり一心に絵を描きたいと言う純粋な気持ちがあって存在すると思います。
ピカソや画商ウーデが素朴派の画家たちを支えたのも、その才能が故だと思います。純粋に心で感じる美術展をぜひ観賞してみてください。
※この展覧会は春日井が最後の巡回展で3月18日まで開催中です。(月曜休館)
入場料500円とカップルで来場の方には、フリュマンス・ビッシュの顔を模した、まさに素朴な金太郎飴がプレゼントされます。ぜひ、恋人同士でご夫婦でのご来場をおすすめします。