先日、三重県立美術館で開催中の「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」を観賞しました。
三重県立美術館は、中規模の美術館と提携して、個性的な巡回展を行っています。今回の展覧会は、フランスの商業芸術の第一人者であるレイモン・サヴィニャックの作品を展示。ワールドカップでフランスが優勝とのナイスタイミングの展覧会です。
20代の頃、アメリカ志向の若者にも、広く支持されていたのが、フランスのメーカー。炭酸ミネラルウォーターのペリエやタバコのジターヌ、ボールペンのビッグなど、アメリカンブランドとは一味違う、オシャレなラベルやデザインが人気でした。
さらに、それらの商品をキュートなデザインで伝えていたのが、サヴィニャックのポスター。パステル色にデフォルメされた人や動物が愛らしく、観る人を優しい気分にしてくれます。
時はバブルを迎えようとする時代、アールデコのデザインが流行し、カッサンドルの巨大なポスターが飲食店を彩り、ハイセンスな家具や照明に囲まれた空間に酔いしれていました。一方で、サヴィニャックのポスターは、小さなカフェや雑貨屋さんの壁を飾っていた記憶があります。
今回の展示は、そんな空気があふれる素敵な空間で、彼の代表的なポスターと原画が並列的に並べられた夢のような空間です。写真とグラフィックで構成された日本の商業ポスターとは違う温かみのある空間は、商品の主張を最小限にとどめており、原画の筆跡や描線までも残されたポスターで作り手と依頼主のコミュニケーションにより成立しているように感じます。
サヴィニャックのすばらしさは、商品の特徴を誰でも容易に理解できるデザインで、さらに、どの作品もウイットに富んだ表現で、商品に愛着を持つアイデアが組まれています。
今回の展覧会は、高校生以下は無料です。夏休みに家族で一緒に、また若い人たちにも、彼の魅力が十二分に伝わると思います。サヴィニャックのポスター芸術の魔法を楽しんでみてはどうでしょうか。