室町時代、三代将軍・足利義満により創建された相国寺。金閣、銀閣の通称で観光名所としても知られる鹿苑寺、慈照寺を擁する臨済宗相国寺派の大本山と知られてますが、最近では若冲ブームにより相国寺承天閣美術館を訪れる人により広くその名を知られるようになりました。今回の展覧会は承天閣美術館開館40周年を記念した展覧会で、国宝、重要文化財45件を含む大規模な寺跡を辿る展覧会となっています。
残り一週間余りと会期終了近いレビューになりましたが、前期、後期と観覧して感じたのは、相国寺の成り立ちから考えれば、当然のことながら墨蹟の数が多いのは当然としてその歴史的な価値からも重要文化財に指定されているのも多いです。そこに対しては割愛しますが、相国寺高僧の肖像画や中国絵画の名品などを観るにつけ、中国の明時代に五山制度を始まりと大相国寺にならい相国寺が創建された点でもこの時代に南画などの中国絵画への影響が理解できます。
その中国絵画を学び、影響を受けたのが円山応挙であり、伊藤若冲で、なかんづく狩野派の絵師たちにも及んでいます。そうした影響を比較しながら鑑賞するのも面白いです。後期展示として個人的には、やはり円山応挙の「牡丹孔雀図」と長谷川等伯の「萩芒図屏風」で応挙の孔雀牡丹図は背景を描かず牡丹を余白に配し孔雀の絢爛さが際立つ優美な作品でした。また等伯の萩芒屏風は、風に揺らぐ生い茂るススキと控えめで清楚な萩の花々の対比が見事でその姿を墨のみで描く等伯らしい作品で、どちらも時代と共に重要文化財になるでしょう。
また、相国寺といえば若冲作品の数で群をぬきますが、今回は鹿苑寺大書院の襖絵が目玉でしょう。他にも掛軸が数点並びますが、撮影不可ですので関連として愛知県美術館の所蔵品として木村定一コレクションで伊藤若冲、与謝野蕪村などの写真撮影可能な作品が展示されています。
美術ファンにとっては、今のこの時期でも観覧した方が有意義な展覧となっていますので、お見逃しなく神社、仏閣に興味のある方も含め訪れてみてください。また、明年3月29日からは、東京藝術大学美術館での巡回展となっています。関東方面の方はぜひご鑑賞ください。