東京アート旅のテーマは奇想。このテーマにふさわしい二つの美術展が期せずして同時期に開催されたからです。
先日は、イタリアの奇想画家・アルチンボルドを紹介しましたが、今回は奇想の画家が目白押しのベルギーに焦点をあてた「ベルギー奇想の系譜」展を鑑賞に渋谷東急百貨店併設のBunkamuraザ・ミュージアムに。
今回の展覧会、ボスやブリューゲルに代表される16世紀フランドル絵画から19世紀の象徴派、表現主義、20世紀のデルヴォー、マグリットなどシュルレアリスムの画家など、個性あふれる奇想の作品が歴史と共に網羅された展覧会です。
今回の目玉は、ポスターやパンフにも取り上げられたボスの「トゥヌグダルスの幻視」でしょう。10号サイズ程の板に描かれた細密の油彩画は七つの大罪の地獄図を幻想的な夢の世界として描かれていて、地獄図の懲罰の様子がどこか滑稽で返って優しくを感じる不思議な情景でした。
また、宗教改革により画家たちのキリスト教への解釈が異なり、その表現方法も多彩で、奇想の系譜の形成が大きく影響してたかが手にとってわかり、時代と共に画家たちの内面の想像力につながっているかが理解できる有意義な展覧会でした。ともすれば、イタリアやフランスの絵画に目が向けがちになるヨーロッパ絵画、今回のベルギーの画家たちの個性的で多彩な表現力を観ると改めてベルギー地方の美術の偉大さがわかりました。
兵庫県立美術館の巡回から今回の東京での展覧会も、9月24日でラスト、ベルギーの至宝と奇想を十二分に楽しんでみてください。