マカフィー」という名称を知っている人は多いだろう。米インターネットセキュリティソフト大手の企業名だが、実は、その創業者のジョン・マカフィー氏(67)は中米ベリーズで昨年11月で起きた殺人事件の「容疑者」だ。現在、米国にいるマカフィー氏は最近、米紙のインタビューに応じ「自分はやっていない。気はふれていない」と答えた。ただ、事件当時、自宅で多数の犬を飼い、銃を持った警備員を配して住民とトラブルを起こしたり、事件後には恋人と逃亡し、その様子をブログで中継したり…。奇人変人ぶりは随所に見受けられる。疑惑から見えるものとは?
「三流のバナナ共和国」での疑惑
事件の経緯を簡単に振り返る。
米CNNなどによると、昨年11月11日朝、北東部アンパーグリスキー島サンペドロで、米国人のグレゴリー・フォール氏(52)が銃で撃たれて死亡しているのが見つかった。マカフィー氏はフォール氏の隣人だったが、事件後、自宅から姿を消した。その後、ベリーズ国内を数週間、恋人と逃げ回った挙げ句、中米グアテマラに不法入国。その様子をブログに随時アップしていた。
ただ、同行していた記者が写真をネット上にアップ。地図情報で居場所が特定され、グアテマラ当局が逮捕された。国外退去処分となり、米国へ。ベリーズの捜査当局は事情聴取を求めているが、実現していない。
その疑惑の人が、5月13日付の「USA Today」の取材に答えた。
「私は気のふれた人間ではありません」
「ベリーズは世界中で最も美しい国です。ただ三流のバナナ共和国です。殺人事件発生率も高い」
インタビューでは、事件前にベリーズ当局者に要求された賄賂200万ドル(約2億円)の支払いを拒否したため、殺人の嫌疑をかけられたと主張。約500万ドルの資産はいまもベリーズに残っているとも述べている。
「名声」を汚す達人
マカフィー氏は米航空宇宙局(NASA)の研究所でプログラマーとして勤めた後、ロッキード社へ。その際、自身がコンピューターウイルスの感染被害に遭ったのを契機に、1989年に同社を辞め、ウイルス対策ソフト開発を専門とする会社を設立した。自身の名前を冠した会社「マカフィー」は、ウイルス対策ソフト業界を代表する会社となった。
ただ、その仕事ぶりに反し、マカフィー氏が「変わった人間」であることは間違いない。
例えば、グアテマラでの逮捕後、米国に戻った後で行われた米誌ワイアードとのインタビューでは、賄賂要求を断ったことから、当局側に命を狙われていたと主張。さらに、死亡したフォール氏は自身と間違えて殺害されたと自説を展開している。
また自宅には犬6匹を飼い、ショットガンを装備した警備員を配していたが、これをめぐっては、フォール氏ら近隣住民とトラブルになっていた。
飼い犬について、マカフィー氏は「事件2日前の9日夜に、(当局側に)すべて毒殺された」と主張しているが、当然、当局側は否定。当局側は「彼の主張にはいつも驚かされる。我々はただ話を聞きたいだけだ」としている。
グアテマラ当局者に身柄を拘束された際には仮病を装っている。心臓発作を起こし病院へ搬送されたが、これは真っ赤なウソ。国外退去処分となり米フロリダに舞い戻った際、記者団に「時間かせぎのための仮病だった」と告白している。
インタビューの中で、マカフィー氏は「私は自身の名声を汚す達人です」と述べ、さらに、皮肉を込めつつ、こう語っている。
「殺人者、麻薬常習者、小児性愛者、妄想型統合失調症の狂人に、みなさんは何を期待していますか?」
粋でない生き方
かつて戦国時代末期から江戸時代にかけ、乱暴狼藉を働いたり、常軌を逸した行動に走る人たちを「かぶきもの(傾奇者)」と呼んだ。のちの歌舞伎にもつながる人たちで、反権力の象徴ともされ、江戸だけでなく、京都でも流行し、庶民の耳目を集めた。マカフィー氏の行動や経歴はまさに「かぶきもの」にふさわしい気もする。
ただ、本当の奇人・変人の類いと、それを“装う”人とは全く異なる。ましてや殺人事件の容疑者ともなれば、奇人・変人で片付けられる話でもない。マカフィー氏の場合、IT長者とは所詮この程度という“実態”をあらわしているようにもみえる
「三流のバナナ共和国」での疑惑
事件の経緯を簡単に振り返る。
米CNNなどによると、昨年11月11日朝、北東部アンパーグリスキー島サンペドロで、米国人のグレゴリー・フォール氏(52)が銃で撃たれて死亡しているのが見つかった。マカフィー氏はフォール氏の隣人だったが、事件後、自宅から姿を消した。その後、ベリーズ国内を数週間、恋人と逃げ回った挙げ句、中米グアテマラに不法入国。その様子をブログに随時アップしていた。
ただ、同行していた記者が写真をネット上にアップ。地図情報で居場所が特定され、グアテマラ当局が逮捕された。国外退去処分となり、米国へ。ベリーズの捜査当局は事情聴取を求めているが、実現していない。
その疑惑の人が、5月13日付の「USA Today」の取材に答えた。
「私は気のふれた人間ではありません」
「ベリーズは世界中で最も美しい国です。ただ三流のバナナ共和国です。殺人事件発生率も高い」
インタビューでは、事件前にベリーズ当局者に要求された賄賂200万ドル(約2億円)の支払いを拒否したため、殺人の嫌疑をかけられたと主張。約500万ドルの資産はいまもベリーズに残っているとも述べている。
「名声」を汚す達人
マカフィー氏は米航空宇宙局(NASA)の研究所でプログラマーとして勤めた後、ロッキード社へ。その際、自身がコンピューターウイルスの感染被害に遭ったのを契機に、1989年に同社を辞め、ウイルス対策ソフト開発を専門とする会社を設立した。自身の名前を冠した会社「マカフィー」は、ウイルス対策ソフト業界を代表する会社となった。
ただ、その仕事ぶりに反し、マカフィー氏が「変わった人間」であることは間違いない。
例えば、グアテマラでの逮捕後、米国に戻った後で行われた米誌ワイアードとのインタビューでは、賄賂要求を断ったことから、当局側に命を狙われていたと主張。さらに、死亡したフォール氏は自身と間違えて殺害されたと自説を展開している。
また自宅には犬6匹を飼い、ショットガンを装備した警備員を配していたが、これをめぐっては、フォール氏ら近隣住民とトラブルになっていた。
飼い犬について、マカフィー氏は「事件2日前の9日夜に、(当局側に)すべて毒殺された」と主張しているが、当然、当局側は否定。当局側は「彼の主張にはいつも驚かされる。我々はただ話を聞きたいだけだ」としている。
グアテマラ当局者に身柄を拘束された際には仮病を装っている。心臓発作を起こし病院へ搬送されたが、これは真っ赤なウソ。国外退去処分となり米フロリダに舞い戻った際、記者団に「時間かせぎのための仮病だった」と告白している。
インタビューの中で、マカフィー氏は「私は自身の名声を汚す達人です」と述べ、さらに、皮肉を込めつつ、こう語っている。
「殺人者、麻薬常習者、小児性愛者、妄想型統合失調症の狂人に、みなさんは何を期待していますか?」
粋でない生き方
かつて戦国時代末期から江戸時代にかけ、乱暴狼藉を働いたり、常軌を逸した行動に走る人たちを「かぶきもの(傾奇者)」と呼んだ。のちの歌舞伎にもつながる人たちで、反権力の象徴ともされ、江戸だけでなく、京都でも流行し、庶民の耳目を集めた。マカフィー氏の行動や経歴はまさに「かぶきもの」にふさわしい気もする。
ただ、本当の奇人・変人の類いと、それを“装う”人とは全く異なる。ましてや殺人事件の容疑者ともなれば、奇人・変人で片付けられる話でもない。マカフィー氏の場合、IT長者とは所詮この程度という“実態”をあらわしているようにもみえる