透明人間たちのひとりごと

自前と自立

 各地で猛暑日が続いた7月中に熱中症とみられる症状で
病院に救急搬送された人が2万1000人を超え、統計のある
過去5年間で最多だったことが消防庁より発表されました。

 夏だから暑いのは仕方ないとしても、毎日のように猛暑日
と熱帯夜が続くとついつい愚痴もこぼしたくなるものです。

 私が子供の頃もこんなふうだったかと思い起こしてみると
どうも違うような気がします。

 確かに35℃を超えるような暑い日はあったし熱のこもった
布団の暑苦しさに眠れぬ夜も過ごした記憶も残っているけど
暑さの質と言うか、濃さと言うのか、そうした重量感がまるで
違うようです。

 当時、外に出る時には、「日射病に注意しろ」 と言われ、
必ず帽子をかぶらされたものです。

 首に手ぬぐい(タオルはまだ一般的ではなかった)を巻いて
麦藁帽子にランニングシャツ姿が定番だったと思います。

 「日射病」 は、「熱中症」 の症状のひとつですが
戸外でのことであって、室内での 「熱中症」 の発症など
ほとんど聞いたことがありませんでした。

 ところが、近頃は自宅にいながら熱中症で死亡する人の
割合がかなり多いと聞きます。

 日中の太陽光の照射で建物内に熱がこもり、日が落ちて
もなかなか熱が外に放出されません。

 ましてや熱帯夜だと熱がこもったままの状態で屋外からの
涼も望めないまま室内で睡眠をとることになります。

 当然、部屋は暑く、締め切った室内の場合では気温35℃、
湿度70%以上になることもあります。

 そうなると、睡眠中に脱水状態におちいり、体温も上昇して
そのまま熱中症になる恐れがあります。

 たとえ扇風機をまわしていても湿度が高くなると発汗による
気化熱放射が減って、体温の維持が困難になるのです。

 人間の体温は 「熱生産」「熱放射」 の二つで
維持されています。

 「熱生産」とは、食事によって得たカロリーを消化吸収して
生命活動や運動などで燃焼させることで発熱する働きです。

 「熱放射」は、主に汗をかくことによって熱を体外に逃がす
働きをいいます。

 人間の熱生産能力には限界があるものの、極論をすれば
食事の量と運動の量でコントロールが可能です。

 ところが、熱放射能力の方は発汗量だけではなく、外気の
温度や湿度など外界の影響により左右されます。

 外気温で体温を冷やす度合いが決定されて発汗が促され
ますが、湿度によって蒸発する割合が決まってしまうのです。

 ですから、いくら汗をかいたとしても、湿度が100%なら
汗は蒸発しませんので気化熱は一切奪われないのです。

 つまり、半分は能動的で、半分は受動的なのです

 このコントロール不能の半分を調整してくれているのが
エアコンです。

 外界の温度と湿度を、ちょうど良い状態に調節することで
熱放射の残り半分の受動部分を制御できるエアコンにより
はじめて熱放射もコントロール出来るようになったのです。

 従って、室内での 「熱中症」 の発症に関して言えば、
エアコンで冷房すれば十二分に防げる事例なのですが …

 昨今の情勢から睡眠時にはなるべく冷房を控えようとする
風潮節電の意識も関係しているのかもしれません。

 もっとも、そのエアコンの普及と性能の向上によって逆に
冷房に頼りすぎることで、発汗を促す自律神経などが正常
に機能しなかったり、汗腺の数が減少するといった現代病
が体温調節機能を著しく低下させているという皮肉な結果を
もたらせています。

 このことはエアコンの室外機から放出される熱による気温
の上昇やCO2の排出による地球温暖化にみられるジレンマ
とも相通じますが、人類が自然にある 自前 のエネルギー
では飽き足らずに 自立 した人為的なエネルギーに傾倒
する意識と無関係ではありません。

 自然に頼らず、影響されずに自然を克服して、自ら快適な
暮らしを創出しようとする自主自立の精神です。

 これは、よく言えば確かに 「自立」 ではあるのですが、
一時的なものでしかなく、結果的には単に地球環境を破壊
しているだけのことなのです。

 さて、

 「自前」 とは、他者や他の物を利用する借り物ではない
自分持ちの独力による自主解決を意味します。

 「自立」 は、経済面と生活面と精神面に加えてそれが
手段なのか目的なのか、といった現実的な要素や先の自立
したエネルギーに代弁されるように自然に対する人間の営み
との関係性もあり複雑ですが、一般的には他からの支配や
助力を受けずに他の従属から離れて独り立ちすることです。

 ただ、得てして 「自立」 は、その目的が手段化してしまい
自立」 のためには障害や邪魔なものはすべて排除すると
いった傾向に走りがちになります。

 「自立」 とは自分のことだけで他者は見えていないのです。

 その点 「自前」 は他者を侵害しないし比較もしない。

 エネルギーを自前することと人為的に自立したエネルギー
の供給を受けることでは、月とすっぽん、雲泥の差です。

 個々に限れば、後者は概して 「自立」 をしていないこと
にもなりますが、自然から自立したエネルギーの確保・供給
には莫大なイニシャルコスト(初期投資費用)とランニング
コスト
(継続運転費用)がかかります。

 エネルギーを供給されるままに任せてしまうと経済的論理
にしたがって、本来必要としない部分までも消費する方向へ
と誘導されてしまうのです。

 必要がなくてもより多く供給したほうが儲かるからです。

 現実の生活にどれだけ必要なのかを吟味する隙を与えず
に便利で快適な暮らしをエンジョイ(享受)しようと踊らされて
、不要であるにもかかわらず多くのエネルギーを消費させる
余計な物(機器)をこれでもかと買わされ続けているのです。

 その顚末がCO2を含めた多量の排出物による温暖化の
問題であり、使用可能でも廃棄処理される大量の廃棄物と
深刻な環境破壊の問題なのです。

 本質的な意味で 「自立」 するとは、生活に欠かせない
エネルギーを買わされるのではなく自らの手で必要な分だけ
作り出すシステムを得ることです。

 エネルギーを自前するとは本質的な意味での自立のため
の原点なのです。

 もちろん簡単なことではありませんが、現代の繁栄は未来
の子孫に対する責任を放棄したかたちで成立しています。

 ですからエネルギーを極力 「自前」 で賄うことは地球
に暮らす人間として 「自立」 するために必要な手段では
なく目的とすべき重大事なのです。

 『百年河清を待つ』 に等しいと諦めてしまっては
何も始まりません。

 上杉鷹山の至言 『為せば成る』 を持ち出すまでも
なく、断じて 『為さねばならない』 事柄なのです。

 「自前」 のエネルギーとは、自然エネルギーで持続可能
なものでなくてはなりませんが、単に太陽光(熱)発電や風力
、地熱などの発電施設や設備をより個人に近いコミュニティ
にボトムダウンさせるといった次元の話ではありません。

 人類の存続が懸かった未来への分水嶺でもあるのです。

 ところで、ロンドンオリンピックの熱気も重なり、熱くて暑い
毎日が続いていましたが、それでも、立秋を過ぎた辺りから
なんとなく吹く風も心持ち涼しく感じられるのだからなんとも
ゲンキン なものです。

 子供の頃にはエアコンも冷蔵庫もなく扇風機もまだ一般の
家庭には普及していなかったけど今ほど暑くは感じなかった
井戸で冷やしたスイカにマクワ瓜、そしてカキ氷の氷だけを
大きな鍋に山のように買い込んで食べていた日々が懐かしく
思い出されます。 

 あの頃は、よしずを立てたり、打ち水をしたり、自前で暑さ
に対抗するしかなかったのですが、時折すうーっと吹く風が
やけに心地よかった。

 そうですね  誰もが未来の地球を本気で考えて
くれるようになるといいのですが … kirakira2

 現代社会に蔓延(はびこ)る物質経済至上主義の価値観を
変化させるようなパラダイムシフトを渇望してやみません。 

 でも、きっと無理でしょうね nose3ase
 

 咽喉もと過ぎればなんとやらですから

コメント一覧

みつお
だって咽喉もと過ぎれば熱くないよ。

人間だもの…
皮肉のアッコちゃん
自然エネルギーはその日まかせの気まぐれですから、自前が
原則の大昔の暮らしに戻るのならともかく持続した自立する
エネルギーにはなり得ない。
要するに便利さや快適な暮らしを手放して自給自足的な昔に
戻ろうってことですよね。
「自然に帰れ」とジャン=ジャック・ルソーは言ったけど、
本当は「自然状態には帰れない」ことを逆説的に主張して
いるわけです。
やっぱり、喉もと過ぎればなんとやらでしょう。
透明人間1号
最終的な目標はハテナくんの指摘通りに脱原発依存です。
ココナンさんの言うようにコージェネはその過程における
ホップ、ステップの段階での核になるのかもしれません。
コージェネが進み各家庭や工場からの余剰電力が自由に
売買されるようになれば無駄な電力の垂れ流しは減って
必要な分を必要なだけ … という自前に近いエネルギーの
消費と確保の実現に近づくことになります。

バカボンのパパのパパさん(いや、上杉鷹山)の唱える
「成らぬは人の為さぬなりけり」なのです。
ココナン
自前のエネルギーの前段階として、コージェネレーションが
あるのでしょうね。
バカボンのパパのパパ
孫のバカボンやハジメのためにも、
為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 
成らぬは人の 為さぬなりけり なのだ。
ハテナくん
ひとことも触れてないけど、脱原発ってことですよね?
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