自決するまでの三島由紀夫 『楯の会』 のメンバーたち
と金正恩率いる北朝鮮軍とが、ダブって見えてこないか」
「えぇっ 三島由紀夫と金正恩とでは違いすぎて比較の
対象にはならないでしょう 」
「そうでもないさ。 どっちもナルシスト的な傾向が強いし、
コンプレックスの払拭に躍起な点も似ているよ」
「だいたい、三島は女性が優越する家庭で育った所為か、
男らしさや男性的な美に対する憧れが強いんだ。 金正恩が
父親の金正日や祖父の金日成に抱く憧れやコンプレックス
にも共通する要素があると思うよ」
「それに … 『神々に愛された者は若くして死ぬ』 といった
盲目的志向と 「男子の本懐」 としての武士道精神に重きを
おいていたわけで、まだ若く絶頂期のうちに死んでいくのが
理想だと考えていたのさ」
それからも、なんだかんだと云々かんぬんがあって …
「 … 夭折し、老醜を晒すことなく自己の抱く美学に陶酔して
自らそれに殉ずる」
「まあ、オレには到底、マネのできない芸当だけどね … 」
北朝鮮の情勢が緊迫するなかでの唐突なる1号 さんの
問いかけにボクが疑問符で応じると、三島由紀夫について
たたみ掛けるように語り始めたのは 2号 さんでしたが …
「まあ、2号 の意見は巷(ちまた)に流布する三島譚の域
を出ない気がするけど、『あの三島事件の経緯と北朝鮮軍
の動きがオーバーラップしてくる』 とはこういうことなんだ」
そう切り出した1号 さんのひとり舞台は 2号 さんどころ
ではなく、それからも延々と続き、果ては 「ヒトラーの予言」
や 「イルミナティ」 にまで話が及びましたが、かいつまんで
紹介すると次のようなものでした。
「本当のところは当事者にしか分らないけど … 」 と一応の
前置きを示してから …
うろ覚えだけど、確か 「人間とは抗えば抗うほど、もっとも
そうなって欲しくないと思う方向へと陥ってゆく」 というような
意味のことを三島が言っていたように記憶している。
その結果、三島自身が危惧していたとおりの展開となり、
彼にとって、もっとも回避したかった結末へと追いやられて
しまったというのが、1号 さんの見解です。
三島事件の核心にあるのは、
巷間に言われるような右翼思想や美意識の究極的な発露
ではなく内実はまったく逆であって、否応なく自刃(割腹)に
追い込まれたというのが事実に近いのだろうと言うのです。
ボクには何のことやら皆目、見当もつきませんが、ライブ
とまではいかなくても、事件当時19歳の大学生だったという
1号 さんには、何か感じるものがあったそうなのです
つまり、それは、文学青年ではなく、三島由紀夫の作品に
限らず小説というものをまったく読まない指向の … しかも
ノンポリで軟派なだけの学生だったという1号 さんだから
こそインスピレーションする何かが あったのでしょうか
そのひとつが、新聞に掲載された凄惨な現場写真だったと
いうのです。
胴体から切り離された三島由紀夫と森田必勝のふたりの
生首をまるで見せしめるかのようにわざわざ並べて置いて
ある その異様な光景と底知れない違和感に1号 さんは
ただならぬものを感じていたそうなのです。
形式上はバルコニーから自衛隊員への決起の呼び掛け
に失敗して、クーデターが未遂や未完どころかその端緒さえ
開けない現実に失望したうえの覚悟の自決、即(すなわ)ち
それが三島の行動美学であり、「三島美学の完成」 などと
世間では論じられていますが、そうでしょうか
事象面や結論的に言えば、
少なくとも三島美学の完成形としては、クーデターに成功
して初めてその責任を取るかたちでの自決とならなくては
ならぬはずのものだったのではないでしょうか
あくまでも悲願であるクーデター成就との引き換えとして
捧げるはずの命だったのです。
いくら訴えても響かない自衛官たちに見切りをつけた彼は
天皇陛下万歳を三唱した後に、バルコニーから踵(きびす)
をかえして総監室に戻るやいなや、直ちに割腹したことに
なっていますが、あまりにも淡白すぎると思いませんか
聞くところでは、せっせと遺書を書いたり遺言をしたためる
一方で、「限りある命なら永遠に生きたい」
という切実なるメモ書きを残しているそうです。
おそらくは、そこに陰謀の臭いを嗅ぎわけるような嗅覚の
持ち主は極めてマイノリティーに属する人たちでしょうし …
そもそもボクには金正恩と三島由紀夫とを同列に論じる
こと自体に無理があるような気がするけど …
三島事件と現在進行中の朝鮮半島情勢とは、どこか似て
いて空恐ろしい気持がしてならないと1号さんは言います。
北朝鮮は情報が遮断された社会であって、ボクたちとは
まったく違った価値観で武装している国だから、彼らが何を
もっとも恐れ、何に大きな自信を持っているのか、と言うこと
を見極めることが必要不可欠だと言うのです。
ひょっとしたら彼らは、つまり、金正恩は本気で自分たちが
有利な立場にあると思い込んでいるのかも、そして保有して
いるとしてもわずか数発の核や精度の定まらないミサイルで
アメリカに対抗し得ると信じ込んでいるのかもしれません。
違憲であるはずの正規軍としての自衛隊が、憲法改正の
名の下に立ち上がる日を信じて待ち続けたが、一向にその
気配が感じられない、ならば自らが導火線となる演説を行い
、起爆剤となるべく檄文を撒布するもヤジと怒号にまみれた
だけの顛末を知ったときに … 三島の脳裏には、いったい、
何が去来したのだろうか
蹶起(けっき)を信じ、三島的美学としての国粋の理想に
殉じようとする者 武士(もののふ)のごとき彼の思想は、
不覚にも大衆に浸透することはありませんでした。
いずれにしても面子や思い込みに殉ずる点において同一
であり、通底には 2号 が指摘したようなコンプレックスが
あるわけで、「抗日の英雄」 にして偉大なる創始者でもある
初代の祖父とラングーン爆破事件や大韓航空機爆破事件に
拉致などのテロ行為によって悪名と異彩を放ち、核の保有を
実現させた二代目の父親の対し、未だ確固たる実績を軍や
国民に示せないでいる三代目の焦りが …
三島由紀夫と同様に金正恩にとっても、もっとも避けたい
に違いない方向へと彼の気持ちとは裏腹に流れに掉さす
行動を何故かエスカレートさせてしまうわけなのです。
否応なく追い込まれれているという一点において、金正恩
と三島由紀夫のそれとが同質のものであるとすれば、同じ
方向や流れのなかで蹶起(けっき)という最悪の結末を想起
させるとともに違う意味での決起(クーデター)を誘発させる
ことになるのかもしれません。
本来的に、北朝鮮の戦術は変則的な情報鎖国にあって、
入って来る情報はもちろん、出て行く情報には特に注意して
コントロールしていました。
すべてを藪の中に置く ブラックホール のような国家を
志向していたのです。
ところが、
三代目の金正恩第一書記になってからは、やたらと内外に
情報を発信しては強い指導者であることをアピールしている
ようなのですが、その腐心の結果が何とも安普請で …
世界危機という大瀑布に捉まり押し流されるだけの破目に
陥って、奈落の滝壺へと吸い込まれる状況にあるわけです。
アメリカは虎視眈々と第2のパールハーバーを待っている
というような噂もありますが …
異なる価値観を有する彼の国とどう付き合っていくのか
彼らの面子をどう立てて国際社会の一員として受け入れて
いくのかが、知恵の絞りどころであり、ツボの押しどころなの
かもしれません。
壺は、(ツボ)でも
北朝鮮の思う壺に嵌るのと …
滝壺に落ちるのだけは御免ですからネ …
こうして、この後も暫(しばら)くの間、ひとり舞台は続き …
「ヒトラーの予言」 や 「フリーメイソン」、「イルミナティー」
などの陰謀論で満開 を迎えた1号さんの独演会は
春の嵐 に 花吹雪 が舞って、漸(ようや)くのことに
宴の終焉 をむかえたのでした
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