この本は雪のひとひらが地上に舞い降り、そして海で死んでいく物語である。
地上に舞い降りる時の生への喜び、美しさ、生きることの哀しさ、そして静謐な死。世界が、生きることが、とても素晴らしく美しく見えてくる本だった。
私は、原則として、本末尾の訳者あとがきや解説を読まないことにしている。以前、かもめのジョナサンを読んだ時に、訳者である五木寛之がその物語をめちゃくちゃに批判をしていたのを読んで以来だ。
この本の訳者あとがきも読まないつもりでいたのだが、誤ってページをめくってしまった。最初の数行に、この本は女の一生云々、だとか女の一生についてはこれまでも云々、などどという言葉が見えた。そして私はすぐに本を閉じた。
この本を女の一生などとあるいは前例があるなどと決めつけてほしくない。私はこの本の持つ、生と世界の美しさをただただ感じ、静かな感動を覚えた。そして歳をとるにつれ忘れかけていた、現実の世界も美しいものなのだということを本を閉じた後に、ただただ感じた。