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勤務先の協力が得られず申請手続きが難航

2024-01-13 07:13:51 | ニュース
 職場で新型コロナウイルスに感染し労災を申請した3人が本紙の取材に、勤務先の協力が得られず申請手続きが難航する実態を明かした。

医師らの後押しで認定にたどり着いた当事者は申請までが大変だとして「1人では途中で心が折れていた」と話す。5類移行後も申請すればほとんどが認定されている実態が知られておらず、支援者は「申請を断念する人は多い」とみる。(畑間香織)

 労働災害(労災) 仕事が原因でけがや病気になったり、死亡したりすること。労働基準監督署長が認定すれば、治療費の全額と、休業した4日目から賃金の8割を国が支給する。申請の際、労基署に提出する請求書には、事業主に署名してもらうのが原則。拒否された場合は空欄での提出もできるが、労基署の判断に時間を要することがある。コロナ感染は、医療・介護従事者の場合、仕事以外での感染が明らかな場合を除いて原則認められる。感染が労災と認められれば、後遺症も補償対象になる。

◆勤務先で感染した看護師は「市中感染だ」と怒鳴られた
 東京都の看護師の女性(45)は、2022年10月に勤務先の医療機関でコロナに感染した。療養後に倦怠(けんたい)感や息切れ、頭にもやがかかったような「ブレインフォグ」から休職。コロナ後遺症と診断された。医師に感染状況を話すと「労災だよ」と言われ、労働基準監督署に相談すると「労災の可能性が高い。院内感染だ」と告げられた。

 労災申請の書類には事業主が記入する項目があるため、女性が勤務先に伝えると「労災じゃない。市中感染だ」と怒鳴られた。1人で申請を試みたが、後遺症から書類を理解し考えをまとめるのが難しく、「自殺を考えるほど追い詰められた」。労災に詳しいNPO法人東京労働安全衛生センター(江東区)や東京都労働相談情報センターに相談し、やっと勤務先に書類を郵送できたが、返送された書類には「院内感染とは認めない」と記されていた。

 勤務先の協力が得られぬまま申請すると、労基署は23年3月にコロナ感染と後遺症を労災と認めた。女性は「『労災じゃない』と会社に言われても決めるのは労基署だと周知してほしい」と話し、「企業のトップや労災申請に関わる担当者は、コロナ後遺症の知識や理解を深めてほしい。無知や無理解は後遺症患者を苦しめている」と訴える。

◆「労基署の調査を会社側は嫌がる」
 過労死弁護団全国連絡会議幹事長の玉木一成弁護士は「労災を申請すると労基署が調査に入り、(何らかの)法律違反が見つかる可能性があるため、事業主側は嫌がる。症状が重くないと、申請をあきらめる人は多いと思う」と説明。特定社会保険労務士の藤浦隆英氏は「感染対策の不備の指摘や対外的なイメージ悪化を懸念するのではないか」との見方を示す。

職場でコロナ感染「労災認定は難関」の大うそ 勤務先に協力渋られ「泣き寝入り」も…実際の認定率は?© 東京新聞 提供

 コロナ感染による労災の申請数と認定数を折れ線グラフにすると、時間差はあるもののほぼ重なり、申請さえすれば認定される傾向は鮮明だ。だが同NPOには、勤務先が申請に協力的ではない相談が相次いだ。

勤務先の福祉施設で新型コロナウイルスに感染したとして、労災が認められた男性=東京都内で© 東京新聞 提供

 老人ホームで事務職だった都内の女性(56)は「労災申請した人はいない」「労災認定は難関」と勤務先に言われ、暗にあきらめさせる対応と受け取った。都内の福祉施設職員だった男性(33)は「施設で感染した根拠はないのに労災になるかな」「全てご自身で進めて」などと告げられ非協力的だと感じた。

 男性は、医師2人が労災を勧めたのを機に申請して認定された。ブレインフォグから申請書類を書ける状態になるまで3カ月を要した。事業主の署名をもらわずに申請したが、認定されるまで3カ月かかった。後遺症から休職しており、認定までの約半年は無給だった。「ぼくは助けを求められるまで回復していたが、症状が重いと1人で申請するのは難しいと思う」と振り返る。
職場で新型コロナウイルスに感染したとして労災認定を受けた元事務職の女性。後遺症から酸素吸入をして生活する=東京都内で(畑間香織撮影)© 東京新聞 提供

 元事務職の女性は通院先のメディカルソーシャルワーカーからの助言がきっかけで申請、認定に至った。後遺症から酸素吸入が必要だといい「労災が認められなかったら生活は大変だった。応援してくれる人がいなければたどり着けなかった」と話した。
  ◇
◆経緯を書面でまとめて申請すれば労基署が調査
 仕事中の新型コロナウイルスの感染を巡っては、労働災害に当たるかを全国の労働基準監督署長が判断した件数のうち認めた割合を示す「認定率」が2022年度では99%に上った。申請を支援してきたNPO法人東京労働安全衛生センター事務局長の飯田勝泰氏は「コロナ感染による労災を労基署は積極的に認定している。認定されるのも早い」と説明する。

職場でコロナ感染「労災認定は難関」の大うそ 勤務先に協力渋られ「泣き寝入り」も…実際の認定率は?© 東京新聞 提供

 認定率をほかの疾病と比較すると、過重労働による脳・心臓疾患の38.1%(22年度)や精神障害の35.8%(同)と比べても格段に高い。月別にみても、23年5月に5類に移行した後も毎月99%が続く。

 飯田氏は会社が申請の書類に記入してくれない場合の対抗策として「経緯を書面にまとめるなどして申請すれば、労基署が調査をして労災に当たるかを判断する」と助言し、「労災が認められれば安心して治療や休業ができる。相談をしてほしい」と呼びかける。

  ◇ 

 労災申請の相談は、東京労働安全衛生センター=電03(3683)9765、都ろうどう110番=電0570(00)6110=へ。センターは土日、都は日曜休み。
職場でコロナ感染「労災認定は難関」の大うそ 勤務先に協力渋られ「泣き寝入り」も…実際の認定率は?© 東京新聞 提供

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