「何日かかるのか…」片付かぬ災害ごみ 仮置き場確保に難航、復興に支障も
2024/01/30 18:00
能登半島地震で発生した災害ごみの仮置き場で作業する人ら=28日午後、石川県穴水町(彦野公太朗撮影)
(産経新聞)
能登半島地震で壊れた家具や家電などの「災害廃棄物(災害ごみ)」の受け入れが石川県内の被災市町で始まっている。ただ被害が甚大な半島北部では仮置き場の確保などが難航し、受け入れは一部にとどまる。災害ごみは家屋からの搬出が滞ると片付けが進まず、復興の支障となる恐れもあり、県や国はノウハウを持つ職員を現地に派遣し、市町を支援している。
石川県穴水町は穴水港近くの仮置き場(約1万2千平方メートル)で、18日から災害ごみの受け入れを始めた。住民らは雪が降って冷え込む中でも、次々と割れたガラスや布団、タンスなどを車で運び込んでいった。
町内で花屋を営む男性(50)は、枯れた大量の生花や植木鉢などを持ち込み、「建物が倒壊し、店内にあった花が折れたり、花用の冷蔵庫が壊れたりした。まだ店内はめちゃくちゃな状態」と話した。母屋と納屋が損壊したという農家の男性(75)は「家電や布団が雨水につかってしまった。片付けに何日かかるのか…」とうんざりした表情を浮かべた。
町によると、現在の持ち込みは建物内の家具などにとどまるが、復旧作業が今後本格化して建物の解体が始まれば、搬入が飛躍的に増えることが予想されるという。担当者は「必要に応じて仮置き場を広げるなどの対応も検討したい」と話す。
県によると29日時点で穴水など9市町が災害ごみを受け入れている。一方で甚大な被害を受けた半島北部の珠洲(すず)や輪島、能登の3市町では適切な場所がなかったり、道路の陥没で大型車両が通れなかったりするため、仮置き場が開設できていない。3市町には環境省や県の職員が入り、助言にあたっている。
珠洲市三崎町の寺家下出地区では、散乱した木材や家電で道路がふさがり、家屋からの災害ごみの搬出自体が困難な状態が続く。区長の出村正広さん(76)は「片付けは全く進んでいない。地区は高齢者が多く、自分たちだけの力ではとても終わりそうにない」と嘆いた。市は仮置き場の準備を進めているが「具体的な場所を示せる段階にない」と明かす。
2月1日から災害ごみの回収を始める輪島市でも、交通渋滞が懸念されるため、当面は業者が地区を巡回して収集する予定だ。担当者は「仮置き場に向かう車が殺到し、支援物資の受け入れなどに支障が出る恐れがある。巡回を待ってほしい」と呼びかけた。
■「東日本」では処理完了に3年
被災建物の解体などに伴う災害ごみは、過去の地震や大雨でも処理完了までに長期間を要し、復興の障壁となってきた。
平成23年の東日本大震災では約2千万トンの災害ごみが発生。多くの自治体で仮置き場が決まらず、調整に時間を要した。東京都や大阪府などが処理を受け入れたものの、終えるまでに約3年かかった。28年の熊本地震でも約300万トンの災害ごみが発生。県外施設などの協力を得たが、処理には約2年を要した。
環境省によると、南海トラフ巨大地震では東日本大震災の11倍にあたる最大約2億2千万トンの災害ごみの発生が推計される。処理完了までに5年以上かかる見通しだ。
能登半島地震の災害ごみ発生量は不明だが、同省災害廃棄物対策室の担当者は「自治体と連携し、フォローアップしていきたい」と話した。(秋山紀浩)