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写真を撮るとき「ピースサイン」するの、なんでなん?

2024-03-22 06:34:37 | ニュース
写真を撮るとき「ピースサイン」するの、なんでなん?
2024年3月20日 11時23分 大阪府
卒業式、お花見、入学式。何かと「写真」を撮る機会の多い時期ですが、

「はい、チーズ!」

と言われたら、皆さん、どんなポーズをとりますか?
ピースサイン、しちゃいませんか?
でも、それって、なんでなん?

(なんでなん取材班 大阪放送局 今村香織 藤島新也)
ピースサイン、しちゃいますよね
街の人たちに声をかけて、写真を撮らせて頂くと…

やっぱりピースサイン、しますよね。

声をかけた59人のうち、47人がピースサインをしました。

実に8割です。

そこで聞いてみました。
「なんでピースしたんですか?」


「え~!パッと思いつくのがピース」

「王道」「定番」

「写真と言えば、ピースかな」
みなさんも、確たる理由はわからないようです。

それでも思わずしてしまうピースサイン。

そもそも起源はどこにあるのか、調べてみることにしました。
ピースサイン、起源はどこに?
まず、訪ねたのは大阪市立中央図書館。

「写真年鑑」や「自治体の写真史」など、写真がたくさん掲載されている本を片っ端から見ていきます。
いつからピースサインをし始めたのか、その手がかりがないかと考えたのです。

が、手がかりがまったく見つかりません…

白黒写真の時代は家族やグループでの写真でも、特にピースサインはしていないのです。

直立不動、笑顔もないものも多い印象です。

う~ん、困った。
そこで、司書の方に相談してみると…
「ここにVサインがどういう使われ方してきたかってことが書かれていて」
持ってきてくれたのは1991年の『中央公論』。文化人類学者・野村雅一さんの「身体伝承ノート」という連載記事です。

それによれば、中指と人差し指を立てるサインは、もともと第二次世界大戦中に「Vサイン」としてヨーロッパで広がったとのこと。
ナチスドイツへの勝利=「Victory」(ビクトリー)を意味し、連合国側の連帯の印として広がったそうです。

当時のイギリスのチャーチル首相の写真にも、確かに、このVサインをしているものが数多く残されていました。
このVサイン、1960年代になると、ベトナム戦争に対する反戦運動の中で、平和を願う「ピースサイン」としても使われるようになります。

野村さんによると、「アメリカのヒッピーや反戦運動家たちが警察官に向かって示したのが始まりだという説が有力」とのことでした。
これは、既存の価値観に反発する若者たちが戦争への勝利を意味する「Vサイン」を、あえて平和を願う「ピースサイン」として使ったのではないか、と指摘する専門家もいました。

ピースサインの起源は見えてきましたが、なぜ日本でも広がったのか。
ヒントを求めて、大手カメラメーカー各社に聞いてみることに。

すると、ある社から「確たることはわかりませんが、俳優の井上順さんがきっかけではないか」という有力情報が!

こうなったら直接、確かめてみたい!
井上順さん、実際、どうなんですか?
 
そこで、NHKの「ラジオ深夜便」に出演する前の井上さんを直撃しました。

「日本で広めたのは順さんだという話を聞きました。実際のところどうなんですか?」
俳優 井上順さん
「話すとすごい長くて2年くらいかかるかもわからない(笑)。今から半世紀前くらいかな、1970年前後に、アメリカにカメラの広告のロケに出かけたんですよ。

その時、ちょうどアメリカはベトナム戦争中で、反戦運動のまっただ中だった訳ですね。それで、会うスタッフ、会うスタッフが『順、ピース!』『ピース、順!』って言うんですよ。『あれ、なんだろう?』と思って聞いたら、『反戦運動でアメリカ人はみんなピースって言うんだ』と。

僕はすぐになじむ方ですから(笑)、『あ、そうなんだ』となって、撮影が始まった時でアドリブでピースって入れたんですよ。アドリブなんで遊びの感覚ですね。ところが、撮影が終わって日本に戻って放送を見たら、ピースの写真が使われていて『えー!』と思って」

井上順さんがピースサインをしたという広告。

調べてみると、確かに1972年のカメラの広告で使われていました。

片手でカメラを持ち、反対の手でピースサイン。

にっこり笑顔です。
俳優 井上順さん
「しばらくして街を歩いていたら、相手の方が『ピース』って言うんですよ、いきなり。それで、こっちも『ピース』なんてお返ししたりしていて、それが1人だけじゃなくて、どんどんどんどん日を増すごとにピースと言う方が多くなって。だんだんだんだん世間でも浸透していったという感じでしたね」
写真評論家の鳥原学さんは日本でピースサインが普及したのは井上さんのピースサインの影響が大きかったと指摘します。

写真評論家 鳥原学さん
「あのCMは相当インパクトが強くて、私もまねをしましたし、遠足とか修学旅行になると、カメラマンの前でピースをしたことを覚えています。ベトナム反戦運動という背景があって、そのときに(井上順さんの)ピース!という、かけ声があって、それまでVサインと言われてたものが『ピースサインなんだ』とみんなが思って、それがカメラの広告と結びついて圧倒的にはやったのだと思います」
NHKの過去の映像を確認してみても、確かに1970年代頃から日本でもピースサインをする人が増えている印象でした。

俳優 井上順さん
「笑顔ってすごい大事なものだし、笑顔に一役買っているっていうこのピース、どんどんやっていただきたいなと。ピース!!」
広がる、進化形ピース
今回、街中で声を掛けた人たちのピースサイン。

よく見ると、井上さんのピースとは、ちょっと違う感じがします。
ピースをした手を頭に乗せた猫耳ポーズ。
手をひっくり返して指先を下に向けたギャルピース。
さまざまなバリエーションが確認できました。

ギャル向けの雑誌「egg」の編集長に聞いてみると、ピースサインは進化しているといいます。
雑誌「egg」編集長 大熊芹奈さん
「普通のピース、そのまま顔に近づける(1)小顔ピース、それを裏返す(2)裏ピース、そのまま下に持って行く(3)あごピース、去年”爆はやり”した(4)ギャルピース。さまざまなメディアが出てきて憧れる対象が非常に増えたので、やっぱりそれだけ流行が生まれるスピードも早いし数も多い」
憧れの対象を反映するという写真のポーズだけに、ピースサイン以外の人もいました。
多かったのは「ハート」(「ハートの中に入ったよ!」という気持ちを表していて、もともと両方の手でしていたポーズが、最近は片手になっているそうです)。
アイドルやいわゆる「推し」のポーズをまねたという人も多くいました。
雑誌「egg」編集長 大熊芹奈さん
「一概に『このポーズはトレンドです』と、ひと言では表せなくて、みんながみんな、自分の魅力的だと思うポーズを、自分の一番盛れてるポーズをするっていうのが今の子の感覚だと思います」
ピースサインの進化やポーズの多様化について、再び井上順さんに聞いてみました。
俳優 井上順さん
「逆ピースですか?そんなことやったら手がつっちゃいますよ(笑)。逆でも何でもいいですけど、とにかくいい感じで使ってほしいなと言うのが僕の願いですね。最近は揉め事とか悲しい話が多いですが、だからこそ、相手の気持ちを思うような世界がどんどんどんどん広がってほしいし、それにはやっぱり、こういう『ピース』と言った時に口元がふっと明るくなって、笑顔が向こうに通じるというかな、そういう世界になってくれることを祈っています」
日本で独自の進化をしながら、私たちにしみこんでいるピースサイン。

今後、時代とともにどう変化していくのか、楽しみです。
【番外編】海外ではピースはしない?
今回、街で取材をする中で、外国からの観光客の方たちにも声をかけました。

「はい、チーズ!」といって写真を撮ったのですが、、、
ピースサインをする人は、ほとんどいませんでした。

ピースサインを裏返すと、相手を侮辱する意味がある地域もあるということで、外国の方は「肩を組む」、「笑顔を見せる」といった、比較的シンプルなポーズの人が多かったです。

国によって写真を撮るときのポーズに違いがあるという発見もありました。

(3月13日「ほっと関西」で放送)



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