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札幌・円山生活日記

「アート×コミュニケーション=キース・ヘリング展」@「札幌芸術の森美術館」

“日常のアート、みんなのアート、ストリートから世界へ。キース・ヘリングの精神宿る作品展”とサブタイトルする「アート×コミュニケーション=キース・ヘリング展」が「札幌芸術の森美術館」で開催中です。人気絶頂の1990年に31歳の若さで亡くなったキース・ヘリング氏の死後30年余を経過する今も新しさを感じるアート作品が集結しています。

「札幌芸術の森美術館」で本年6月に「THE ドラえもん展 SAPPORO 2021」を観賞した際に「アート×コミュニケーション=キース・ヘリング展」の前売券を購入しました。会期は2021年7月17日(土)~9月26日(日)の予定だったのですがチケット購入時に係の人から「ご時世ですので実際の会期はホームページで確認してくださいね」と言われました。悪い予想的中で8月2日からの「まん延防止等重点措置」の適用に伴いどうなるかと思ったのですが、幸い「札幌芸術の森美術館のウェブサイト」を見ていると一部施設は休館となったものの美術館は「感染拡大防止の対策を行った上で引き続き営業いたします」とのこと。そこで「混雑カレンダー」から人出が少なそうな日を選び鑑賞してまいりました。アクセスは本日も地下鉄東西線「大通駅」で南北線に乗り換え終着の「真駒内駅」から中央バス(空沼線・滝野線)に乗り「芸術の森入口」で下車です。 

展覧会のチラシ。
"単純な線で即興的に生み出された人や動物。地下鉄の広告板へのラクガキから始まったキース・ヘリングのアートは、1980年代のニューヨークから一気に世界へ広まっていきました。ストリートから名声を博したアーティストといえば最近ではバンクシーが挙げられますが、キース・ヘリングはその先駆者と言えます。(中略)1990年の早すぎる死から30年が過ぎた今でも、彼の作品は人々を魅了し、ファッションブランドなどとのコラボレーションも後を絶ちません。
 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の影響で、人々が物理的にも精神的にも疎遠になりがちな昨今、「アートを通じてコミュニケーションをしたい」と語ったヘリングの作品は、人々を分断する溝を埋め、より一層の輝きを放つことでしょう。本展は、山梨県小淵沢にある中村キース・ヘリング美術館が所有する貴重なコレクション約160点により構成されるものです。"

「芸術の森」の入口付近。中央は伊藤隆道氏作「空と地の軌跡」 。

「札幌芸術の森美術館」の入口。

エントランスで前売券と緊急時連絡先を提示し展覧会場へ。

展覧会場の入口。会場内は原則「写真撮影可」ですのでテーマ(#1~#9)の展示順に沿って印象的ないくつかの作品を紹介します。 

「無題(ポートレート)」1987。

【#1 サブウェイ・ドローイング】

「無題(サブウェイ・ドローイング)」白墨、紙、広告版、1981-83。
NY地下鉄の空いた広告版を街の「キャンバス」として発見したキース・ヘリング氏、ドローイング中の氏に話しかける人もいて「アート×コミュニケーション」(アートをきっかけとしたコミュニーケション)がはじまったとか。作品は人々にはやし立てられる「ヒーロー」も道化にすぎないということでしょうか。

【#2 子どもとの対話】
子どもの創造性と純粋さを大切に思ったヘリング氏は世界中でワークショップを重ねるとともに絵本の製作はじめ子どもに多くのアートプロジェクトを捧げたそうです。
「赤と青の物語第1番~第20番」リトグラフ、紙、1989。

【#3 記号と人間】

「ポップショップ」シルクスクリーン、紙、1989。
「ラディアント・ベイビー(光る赤ん坊)」を自らのトレードマーク、シンボルとして頻繁に描いた氏を代表する象徴的・記号的なアートです。「新しさ」を感じる作品群です。

「無題」リトグラフ、紙、1987。

「アンディ・マウス」シルクスクリーン、紙、1986。
氏の愛するキャラクターであるミッキー・マウスと尊敬するアンディ・ウォーホールを合体化させた消費社会を象徴する記号が「アンディ・マウス」。資本主義を風刺するかのようなストーリーが背景にあるようです。

【#4 大地と生命Ⅰ】
「フラワーズ」シルクスクリーン、紙、1990。
氏が関心を持った「原始的な」アート。

【#5 ムーブメント】

「無題」アクアチント、紙、1986。
氏は「ムーブメント(動き)」に高い関心を示し自らの作品に取り入れていったとか

「アクロバット」アルミニウムにペイント、1986ほか。

【#6詩と絵画】
「アポカリプス(黙示録)」シルクスクリーン、紙。詩人のウィルアム・バロウズとの共同作品。「詩」と「絵画」の垣根を超えた交流を試みた作品。

【#7 大地と生命Ⅱ】

「無題(繁殖の図)」シルクスクリーン、紙、1983。
NYに移り住んだ氏が黒人やヒスパニックと交流し、彼らのルーツであるアフリカや中南米のアートと大地や生命を崇敬する世界観に憧れを抱き自らの作品に投影させていったという一つ。
「ピラミッド」シルクスクリーン、アルミ板、1989。「ドッグ」シルクスクリーン、板、1986。

【#8 終わりの始まり】

「ブループリント・ドローイング」シルクスクリーン、紙、1990。
ヘリング氏は若すぎる最晩年になり初期の作品を再制作したとかで氏の10年間を象徴するような作品群だそうです。間もなく訪れる死を連想させるような重い作品です。

【#9 アートは全ての人のために】   
氏はアートはすべての人のためにあるべきだと考え、富裕層以外の人々にもアートを身近なものにするためオリジナルデザイン・グッズを販売する「ポップショップ」を開店、1988年には東京・青山に東京店を開店しています。また、反戦反核、人種差別撤廃、エイズ流行終結のためのポスターを制作するなど社会的な活動を数多く手がけました。
「ヒロシマ平和がいいに決まっている‼」オフセット・リトグラフ、紙、1988。
「"ポップショップ東京”のために作られた扇子」1988。
以上で展示作品の鑑賞は終了です。

入口付近には「誰でもストリート・アーティスト」コーナーが設置されていました。
展示されていた東京五輪2020の女子マラソンが開催された8月7日に芸術の森で実施された展覧会の関連イベント「野外ペインティング“マラソン”」におけるアーティスト日比野克彦氏の作品。50ⅿものロール紙にマジックを動かし続け2時間13分15秒で仕上げたそうです。

若者がドローウィングしていました。
展示されていた1988年1月24日の日付のある写真。ヘリング氏が「ポップショップ東京」開店に合わせて来日し東京・表参道あたりで行ったパフォーマンス時の写真でしょうか。当時の若者のファションにも注目しました。

「美術館」を出て特設グッズショップが入る「工芸館」へ。
「グッズショップ」の店内。前回と違い特に写真撮影の制限はありません。
こんなものが売られていました。

「工芸館」(左奥)前の池ではカモの親子が数家族泳いでいました。

以上で「芸術の森入口」バス停から「真駒内駅」方向へ戻ります。そこそこの人出で特に若年層が多いのが印象的でした。今でも魅力が失われていない証左と感じました。

キース・ヘリング氏と同じく1980年代を20才台で過ごしました。氏の作品を見ながら当時に思いを巡らせてしまいました。冷戦に勝利し世界唯一の超大国となった米国、バブル経済の狂騒を迎える日本という無機質で混沌とした時代です。そんな背景も風刺を込めつつも純粋な温かさを感じる氏の作品に多くが惹かれたのかとも思いました。皆さんはどう感じておられたのでしょうか。今回も良い展覧会でした。ありがとうございました。

「アート×コミュニケーション=キース・ヘリング展」
会期;2021年7月17日(土)~9月26日(日)
時間;9:45~17:30(入場は閉館の30分前まで。9月は17:00閉館)
会場;札幌芸術の森美術館(札幌市南区芸術の森2丁目75番地)
観覧料;一般:1,500円(1,300円)、高校・大学生:800円(600円)、小・中学生:500円(300円) ※( )内は前売、または20名以上の団体料金 ※65歳以上の方は当日料金が1,300円(団体1,100円)になります。
休館日;会期中無休
主催;札幌芸術の森美術館(札幌市芸術文化財団)、HBC北海道放送
後援;在札幌米国総領事館、北海道、札幌市、札幌市教育委員会
協力;中村キース・ヘリング美術館、ヤマト運輸、日本理化学工業、大丸藤井セントラル 

「札幌芸術の森」
〒005-0864 札幌市南区芸術の森2丁目
TEL:011-592-5111(代表) FAX:011-592-4120
開園時間 9:45~17:00(6~8月は17:30まで)
※札幌芸術の森美術館の入園は閉園の30分前まで
休園日 4月29日~11月3日は無休、11月4日~4月28日は月曜日
※月曜日が祝日・振替休日の場合は翌平日
年末年始(12月29日~1月3日)
(2021.8.11訪問)

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