The Alan Smithy Band

The band is on a mission.

深夜列車の生命活動

2016年02月13日 | ヒデ氏イラストブログ
まずはJRの車両の構造から説明せねばならない。

ひで氏です。

先日、電車の中で驚くべきことがあった。

JRのある車両というのは、入ると両サイドに壁があるタイプのものがある。
それはつまり、座席が二人一組のボックス席になっているため、端っこの席の背もたれ部分がそのままドア際の壁になっているというものだ。

その壁 -- つまり座席の裏側には、実は折りたたみ式の座席が収納されている。取っ手がついていて、それを手前に引くと座席になるのだ。ただしこのエリアには混雑時人がたくさん立つので、そういうときは取っ手を引いても席が出せないようになっている。車掌室でオンオフができるのだろう。

この日はもう終電に近かったので、電車は空いていた。私ひで氏は電車に入り席がちらほら空いているのを見たが、なんとなくこの「飛び出し席」が使えるときはその特別感から出して使ってみたくなってしまう。
他にもすでに使っている人がいる。飛び出し席は利用可能なのだ。

ちなみにこの飛び出し席は、引くときに結構な力がいる。お尻を乗せつつ引き出さないと、結構な抵抗力で戻ってくるのだ。
考えてみれば当たり前のことで、この機能のおかげで降りるときに立ち上がれば何もせずともまた席が自動的に壁に収納されるのだ。それもこのとき単純にバネの力でバン!と戻るわけではなくて、すーっとゆっくり、しかし力強く戻っていく。こういう細部の技術が日本は異常だ。

さてこの飛び出し席に座っていた私ひで氏の目の前には、同様にこちらを向くように対になった飛び出し席に座っている御仁が居た。

コートを着ては居るが、襟の部分はだらしなく空き、大きな口を開けて眠りこけている。

いわゆる酔っ払いである。

よっぽど楽しい飲み会だったのか、いやはたまたとんでもないストレスから解放されるために飲み過ぎたのか…そんなことを思いながら何の気なしにこの人を見ているうちに、電車はある駅に到着した。

私ひで氏は次の駅で降りるので座ったままだが、この人はその駅が下りるべき駅だったらしく、駅に着くと同時にうっすらと目をあけた。

「あ、あ。おりな。」

とつぶやきながら立ち上がろうとするが、一度失敗しまた座ってしまう。しかしまた立ち上がる。そのたびに飛び出し席はゆっくりと彼の尻に沿って元の壁に戻ろうとする。こちらがやきもきするぐらいゆっくりとした動作でやっと立ち上がった彼は、出口の方に向かって千鳥足で一歩を踏み出す。

普通の動きであればそのまま人は出口に向かい、飛び出し席はすっと壁にまた無言で収まるのだが、彼が酩酊状態であったこと、そして座席付近で異様なほど緩慢な動きになったこと、そしてそのだらしなくなっていたコートの状態が奇跡を起こした。

彼のコートの裾が席を離れるよりも、席が壁に戻る方が勝ってしまったのだ。

結果、コートの裾は壁に収まった席に挟まり、あたかもコートが彼を引っ張り返すような状態になった。

こんなとき、酔っ払いに何を言っても無駄である。
夢遊病者の様に出口に向かう彼は、たとえ声をかけたとしても無駄だったであろう。コートの袖が少し引っ張られたと言って止まるわけがない。

力のかかり方にも微妙なミラクルがあったのだろう、なんとコートはそのままスルーっと彼の体から脱げたのである。


すんでのところで彼は電車を降りることが出来た。しかし、コートはそこに残ったのである。

なぜ声をかけなかったのか。投げることもできただろう。
そんな感想をお持ちかもしれない。

しかし目撃者はある程度いたにも関わらず、私を含めそこに居た人たちは声を発することも、動くことさえできなかったのだ。

それは、一日の仕事を終えようとしている電車の中で起こった美しい自然現象の様にも見えた。
深夜近くにその活動を活発にするヨッパライという生き物が目の前で見せた脱皮。

私達は、普段は決して人間の目の前で見られることはない、何か世界で初めて目撃されるとても珍しい現象を目の当たりにしたのだ…

ついさっきまで見事な千鳥ステップをヨッパライと共に奏でていた、彼の体の一部であった布は、それが嘘のように無機質に床にだらしなく落ちていた。






やっぱり水木しげるフォーエバー

2015年12月01日 | ヒデ氏イラストブログ
いま思っても、幼い頃なぜあれほどまでに妖怪の本に執着していたのかわからない。

しかしそれこそが子供心に感じる「どうしようもなく惹きつけられる」魅力なのだから、きっとそこに理由は必要ないのだろうと思う。

ひで氏です。

買い物について行っては時折放たれる気前の良さをじっと息を潜めて待ち、何か買ってもらえるチャンスがあれば確実に水木しげるの妖怪本を買ってもらっていた。

力強い線で大胆に描かれたメインキャラに対して異常なまでにリアルな背景。
どこまでも想像力を掻き立てるシンプルかつ時に残酷な説明書き。
どこか普通と違う配色。いまにして思えばそういう要素すべてに心惹かれていたのだろうと思う。

お気に入り妖怪については以前このエントリで書いた。
とにかく水木しげるフォーエバー

後年、興味を持って水木しげるの他の作品を知ろうとしたが、悪魔くんも河童の三平も鬼太郎以上に影がありすぎてどうも馴染めなかった。ではせめて鬼太郎なら、ということで墓場鬼太郎まで遡ってみたがこれも怖すぎた。

つまり当時リアルタイムで水木しげるが描く妖怪や鬼太郎が「ちょうどよかった」のである。

当時は鬼太郎テレビシリーズも全盛期。「おばけにゃ学校も試験も何にもない」というフレーズに心底いいなぁと思ったものだ。

個人的にはテレビアニメの鬼太郎の成功の鍵は目玉の親父にあったと思っている。
アニメ化にあたって、原作からあの声を想像したこと自体が信じ難いし、あの声で行くと決めたのは相当なギャンブルだったと思う。

しかし結果、あの「誰でも頑張れば真似ができ」、「やっぱりお父さんだからピンチで頼りになり」、「それでいて愛らしい」、そして小学生なら誰でもやるあの勘違い「目玉の親父は鬼太郎の隠れているほうの目が出てきたやつ…あれ?じゃあなんで父さんと呼ぶ?それはね…」という絶妙なトリビア感。

語り部としても数々の妖怪のビジュアルのスタンダードを作ったし、時に西洋妖怪を描くときのやたらリアルな描写のギャップも強烈だった。
もし未見なら、私ひで氏一番のお気に入り、ぜひ見てほしい本が「妖怪道五十三次」だ。


ご存知、広重の「東海道五十三次」の浮世絵に妖怪をからめたものだが、もうこれは圧倒的だ。これを見ると水木しげるの凄さがよくわかる。


ニュースを聞いてなんとなくペンをとり、自分では五郎丸歩のルーティンばりに確立された順序で、幼いころから何度も何度も描いてきた鬼太郎とねずみ男を書いてみた。

気のせいか、ちょっと寂しそうな二人になった。





シンクロナイズド・トレイン・ダンス

2015年11月29日 | ヒデ氏イラストブログ
金曜日、電車に乗っていると年配の男性が3人でわいわいと盛りあがっていた。

見たところ同じ会社なのか、はたまた同級生か何かなのか、かなり仲が良さそうで、何より全員同じように顔を赤らめ酔っぱらっている。同じような事を繰り返し何度も話していてるが、メンバーも誰一人それをおかしいと思っている感じもない。何度も回ってくる全く同じオチのような部分でわっと盛り上がる。

もうこれは「ゾーン」に入っているのだな、と思いむしろ微笑ましくもあった。

また全員が立っており、つり革を持っている。
お酒を飲む人は皆経験があると思うが、酔っぱらっている時につり革を持つと自分の意に反してつり革を持つ手を中心に体を不安定にまわしてしまう。

この光景がなんとも笑えた。なんせ話だけでなく、この行為すらも全員シンクロしているのだ。
正確には全員つり革を持っているわけではなく(それだと3人横並びになってしまう)、2人がつり革で、そしてもう一人は入り口横の銀色のバーを握りながらポールダンサーのごとく体を揺らしているのだ。

基本、電車の揺れに合わせて慣性に身を委ねているので、ほぼみな動きが一致している。

その様が異常なのだ。


席はたくさん空いているので座れる状態なのだが、むしろ私ひで氏のようにこの光景を見た者からすると「よくぞこの状況で立っていてくれた、こんな上質なショウはなかなか見れない」というぐらいの気持ちである。

本人たちに全くその意識は無いが、本当に息がぴったりすぎて笑ってしまうほどである。

このときはいなかったが、もしちょっとモラルのない若者がいれば絶対に動画を撮って数分後にはYouTubeにアップされ、世界中で一躍有名になってもおかしくないぐらいのクオリティだった。もうあまりにぐるんぐるん回るので、酔っぱらっているだけに誰かが手を離しはしないかとドキドキするぐらいだ。

異変はこの直後に起きた。

三人のうちのつり革担当一人が何かのきっかけで軸足を変えたのだ。

その瞬間、彼だけが周る方向が反対向きになり、これもものすごい勢いでもう一人のつり革人間と完全に軌道がオーバーラップしてしまった。

ガツン!

人と人のぶつかる音というのは結構ショッキングなものである。鈍い音を立てたその瞬間、つり革マン同士の顔面がクラッシュしたのである。

ぶつかられた片方のつり革おじさんは急にシリアスな声で「痛ッ!」と叫んだ。
いわば反逆の動きをしてぶつかってしまった方のおじさんは、自分でも状況が飲みこめていないのか、無言のままだった。

周りで見ていた私ひで氏を含む数名の敏感なギャラリーも、「ああ~…」となった。この和気あいあいの3人の友情が崩れる瞬間を見てしまうことになるのか。。。と。

数秒の沈黙のあとに起きたのは、


彼らを見始めて以来、一番のボルテージの笑いだった。


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そんな濃い人間模様が見れたのはやはりこのディープタウン、京橋!
その京橋で今週土曜日、私ひで氏とSSW田中賢氏がTHE WAREHOUSEにて帰ってきます。ソムリエ25周年を祝う!
ピアノと歌だけの洋楽カバーライブ。シンプルイズベストを体現したかのような研ぎ澄まされたカバー群を最高のお酒と共にお楽しみください。

2015.12.05 Sat
京橋ソムリエ "THE WAREHOUSE"  ひで氏&SSW田中賢氏
※アランスミシーバンドのライブではありません。

20時すぎごろ開始予定
ライブカバーチャージ:500円









ラウンドタートルうどんの神対応よ

2015年07月01日 | ヒデ氏イラストブログ
ひで氏です。

先日、とあるフードコートに行ったときのこと。

モールのフードコートということで向かっている途中からいくつか候補を頭に描きながら歩みを進めていた。
あまり決め打ちすると「その口」になってしまい他が考えられなくなるので、薄く広くそれぞれの食べ物を想像するという熟年の技を駆使してフードコートに近づく。

しかしフードコートとはよく言ったものだ。
奇しくも今ウィンブルドン真っ最中だが、まるでウィンブルドンのセンターコートを彷彿とさせるような響き、フードコート。

まず席を確保して、その頃には心に決めた店に向かうべく、財布を取り出すために鞄を開く。

そこで時が止まった。

財布を忘れたのだ。

しかし私ひで氏は忘れ物王選手権というのがTVチャンピオンであるとすれば確実に少なくとも西日本では相当の上位に食い込む自信があるほどの病的な忘れ物癖があるので、こういう時も全く驚かない。はい、やりました、という程度だ。

しかし今回はこの後に人と会う予定があった。ご飯は済ませてから会う予定になっており、ここで済ませておかないと面会中に空腹で意識がもうろうとすることになるだろう。

諦めかけたその時、各店舗のレジに注目するとICカードで決済できる機械が目に止まった。

「そうか、電車に乗るために使っているICカードなら。。。」

使えるかもしれない。

そう思ってある店のレジに立ち寄った。この記事を最後まで読んだならあなたも必ず好きになるであろうこの店、店名を明かすと感動した人が殺到してパニックになるかもしれない、だから敢えて伏せて、うどん屋さんと言おう。いや、それだと余りにもぼかし過ぎているのでここは仮に

ラウンドタートルうどん

と呼ばせてもらおう。

このラウンドタートルうどん店のレジのお姉さんに、このカードで払えますかと私ひで氏は聞いた。

すると快くお姉さんは「交通系ICカード、いけますよー!」と言ってくれた。


このときの安堵感。これで食いっぱぐれずに済んだ。と思い、おろし醤油うどんとおにぎりを注文し、お盆に乗ったうどんとおにぎりとともにレジに進んだ。
そしてICカードで、言われるまま機械にタッチしたところ。。。

「ピピー。このカードは、お取扱いできません」

レジのお姉さんも、私ひで氏もフリーズした。「あ。。。」と。

先ほど注文した時に あいよ!といって愛想良くうどんを調理してくれた店長らしき男性も、どした?どした?という感じでレジまできた。
事情を説明してオロオロしてしまっているレジのお姉さんを見かねた私ひで氏は、

「すみません。ちょっと財布を忘れて、このカードしかなくて。これで払えるかなと思ったんですけどダメやったんですね。
せっかく作ってもらったのに本当に申し訳ないです。。。もったいないことしてすみません」

と言って、うどんを置いて去りかけた。


すると店長がこう言った。

「いえ、こちらの不勉強でカードがご利用できると言いましたんで、どうぞ召し上がってください」


なんということでしょう。

いやいや、それはいいです、いやいやいやどうぞ、というやり取りを数回した後、私ひで氏は店長の申し出に甘えることにした。

そして涙目でうどんを完食した。世の中捨てたものではないな…と。


そして食べたあとの食器を返却するにあたって、またレジに近寄り、店長に

「本当に助かりました。また近々来るんで、今日の分、お支払します。全部でいくらでしたか?」と聞いた。


そのあと店長が言った言葉は、自分が女なら120%恋に落ちるであろう言葉だった。
彼は笑顔でこういったのだ。


「もう忘れました」



来週、私はまたラウンドタートルうどんに行くだろう。
このときの支払いの小銭を持っていくなどという野暮なことはしない。


ちょっとしたリフレッシュメントになるスイーツでも差し入れようと思う。












Hot Risotto

2014年12月01日 | ヒデ氏イラストブログ
先日のGalette Nightのエピローグ。

ひで氏です。

思いもよらぬ事件によってルームサービスでスイーツとワインを食すというご褒美に預かった翌日。
この日は食事もとらず帰ってきたので、夜は適当に済まそう、と決めた。

アメリカで「一人で夜を適当に済ます」というともう選択肢はおのずと決められている。
比較的近くにあるのは、恐怖のピエロの店Mか、地下鉄という名のサンドイッチ、もしくはイタリアのお好み焼きだ。
それにしてもそれぞれ車で10分ぐらいはかかる。率直に言ってめんどくさい。

そんなこともあろうかと、実は今回生まれて初めての試みをした。日本から、カップめんを持ってきていたのだ。
海外での短期滞在で、私ひで氏は食に不満を持つことは無い。そもそも1週間やそこらで日本食がどうしようもなく恋しいなどという状態にならないし、積極的にその土地のものを食べることを心がけているからだ。

ちなみにかつて数年間アメリカに住んでいたころは、一年ほどしてさすがに食生活に問題を感じ、母にお願いして日本のインスタント系の食料品を送ってもらったものだ。あの時もっともお世話になって今もリスペクトしてやまない二大商品がヒガシマルの「ちょっとどんぶり」と永谷園の「広東風かに玉」だ。特に後者は自分の中で「おふくろの味」だと思い込んでいた味で、昔から「おかあさんはかにたまを作るのもはやいしおいしいしすごいなあ」と思っていたのに、アメリカで5分で自ら全く同じ味を再現できたときは衝撃だった。

話を戻すと、そんな「短期のローカル食に不満のない」私ひで氏がなぜ日本のインスタント食を持ってきたのか。それは一度ミッションで一緒になった別の日本人の方に言われたことを実験してみたのだ。ひとつやふたつ持って行っておくと、一人で済まさなければいけない、でも外に行くのは面倒というときに重宝するぞ、と。そんなもんかなぁと思い実験的に持ってきたが、早速そんな夜が到来したのだ。

カップめん系の食品にいまいち疎い私ひで氏が日本でつかんできたのが「一平ちゃん夜店の焼きそば」と、


「日清カップヌードルリゾット」という商品だ。


一平ちゃんの方はたまに食べるのだが、もうひとつの方はカップラーメンを買ったものだとばかり思っていたらリゾットであって驚いた。「リゾットとかいてあるではないか」と言われればそれまでだが、「ヌードル」とも書いてある。よくわからずスーパーでつかんできたのだ。こんなもんである。

気分的には一平ちゃんだったので、お湯を沸かそうとしたら部屋にポットがないことに気付いた。
電子レンジしかない。そういうものなのか。。。

カップヌードルを目の前にお湯を沸かす術がないというのがこんなに辛いとは。。。
ということは。。。と思いもうひとつのリゾットを見ると、これは逆に電子レンジを使え、とある。


期せずして両方のパターンに対応できる品を選んでいたことになる。命拾いした。

名前の矛盾のことはすっかり忘れて「これを開発した御仁は天才だな」と思いながら指示通りレンジであっためる。
ほくほくと湯気を上げるリゾットを前に今度はスプーンが無いことに気付いた。

即座に周りを見渡す。意味もなくバスルームに行ってみる。やはりスプーンはない。
そんな時、昨日のルームサービスを思い出した。少なくとも、フォークとナイフは昨日までこの部屋にあったのだ。せめてフォークさえあれば。。。
しかしトレイにすべてを載せて置いておいたので、回収されているか。。。と思ったその時、

机の上にこんな光景があった。目を疑った。



ナイフだった。

実際には飛びついたので、この写真は後からとったやらせである。
しかし実際の状況を再現した写真だ。なぜあんな状況でナイフが置かれていたのかもわからないが、とにかくああなっていたのである。

恐る恐るナイフで試してみたが、アツアツのリゾットをナイフですくい安全に食べるというのは想像以上に難しい。
プルプル震えながら口に持っていくと案の定高熱の鋭利なナイフが唇に当たり「ギャアッ!」と叫んだ。


スプーン。なんと偉大な発明なのか。
たったあれだけの「先がくぼんだ平坦な鉄」がもたらす力、そしてそれを奪われた時の無力感を痛感した。

最悪フロントに電話して持ってきてもらうということもできるのかもしれないが、スプーン一本のためにフロントを呼びつけるというのはさすがに良心が痛む。いや、むしろここまできたら「フロントの力を借りずに自分だけで解決したい」という意地のようなものが働いていたのかもしれない。

あそこに行けば。。。!

できれば部屋を出ずなんとかしたかったが、こうなれば仕方ない。私ひで氏が向かったのは1Fのロビーだ。
ロビー横には朝のモーニング用の小さなカフェとキッチンがある。あそこに行けば。。。

行ってみるとキッチンにまだ人がいた。
屈強な黒人青年に話しかけると「もちろん」と快く応じてくれた。

素晴らしい青年だ。

。。。でも、少しおしゃべりだったよね。
明日の天気の事とか本当はどうでもよかったんだよね。。。


スプーンを手に部屋に戻ったときには、リゾットは外の雪のように冷たくなっていた。







朝のモスキート革命

2014年01月26日 | ヒデ氏イラストブログ
朝の電車内。電車というのは人を運ぶだけではない。時には珍客を迎え入れることもある。

ひで氏です。

招かれざる客、ともいうべき闖入者。
それは虫である。蛾や蜂が入ってきて車両内がプチパニックになるというケースもなくはないが、電車の中で見かける虫ランキング一位は「蚊」で決まりだろう。

そんな蚊が朝の電車の中、目の前に現れた。


つまり冬場に現れる季節外れの蚊である。
ただでさえ私ひで氏は自他ともに認めるアンチモスキート派なのだが、冬に飛ぶ蚊というのは言い換えれば「悪条件にも関わらずどこか湿気の多いところで偶然条件が整い湧き育った」イレギュラーな蚊と言ってもいいはずであり、その図太さと生命力の強さを想像するだけで鳥肌が立つ。もしこのような輩に刺されたら普通より痒いはずだと勝手に想像してしまう。

かといって蚊に刺されそうなぐらいで電車の中で派手なパフォーマンスを繰り広げるわけにもいかず、もうホントやめてほしい、と思いながら目の前の蚊の一挙手一投足を見守る。ちょっとでも不穏な動きを見せれば最小限のアクションで振り払うためだ。

その蚊は驚くほど静かにドアに停まっている。

ドアを一枚隔てた向こうには景色が後方にどんどん吸い込まれていくほどにすごいスピードで動いているというのに、そんなことは全く意に介せぬ感じで落ち着き払っているのが余計に不気味だ。

目の前、と言っても私はいつものドア際ポジションをキープしていたため、どちらかというと蚊に対して左サイドに立っている。
本当の正面に立っている男性は、じっと本を読みふけっている。蚊がそこにいることには気づいていないようだ。

次の駅で開く扉は今まさに蚊が停まっているこちら側のドアである。
いくら冷静な蚊でも、ドアが開いたら間違いなく飛ぶであろう。つまり何か手を打つとしてもタイムリミットは次の駅に到着するまでの1分ぐらいの間である。

駅に到着するまでに蚊が飛びったった場合。当然私はその行先を目で追うだろう。
以前、酷似した状況で、前に座っていたスキンヘッドの男性の頭頂部に蚊がゆっくりと停まり、気付かれることなく針を突き立てた瞬間を目撃してしまったことがある。仮に自分に向かって来なかったからと言っても、そのように不愉快な気持ちになることもあるのだから蚊は本当に恐ろしい。

あっという間に電車は減速し駅に到着しようとしている。どうやら動く気はないようだ。

ここまで来ると、ドアが開いたその衝撃をきっかけに飛び立つ可能性が高い。しかし今までの行動からして相当に図太い蚊と思われるため、開いた瞬間ではなく、少しドアがスライドした後、つまり私ひで氏の方に近づきつつこちら向きに飛び立ってくるのではないか。。。とそう推理したころに電車は動きを停めた。

こちらに向かって飛ばせるのは避けたい。そして目の前の男性は未だに全く気付いていない。

その瞬間、頭にある記憶がよみがえった。
この目の前の読書中の男性、少し前にはそこに居なかったはずだ。
つまり前の駅を発車した直後に今のポジションに躍り出てきたのだ。

つまり、彼は今停まったこの駅で降りるための準備として前に出てきていたに違いない。。。!
その降りる彼の動きを利用すれば。。。!

プシューとドアが開く瞬間、私ひで氏は誰にもわからぬよう、自ら蚊にフッと息を吹きかけた。
驚いた蚊は飛び立ったが、そう、蚊は私ひで氏の予想通り、電車を降りる男性の胸に押し出されながら外に持って行かれたのだ。。。!


無血革命。。。!


誰も傷つけることなく俺は無血革命に成功したのだ。。。!


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その数時間後、私は自分の手の甲に軽い痺れを認めた。

見ると甲の一部分が赤く丸く腫れていた。



蚊、そもそも発見する前に咬まれてたみたい。






シーツを交換せよ

2014年01月09日 | ヒデ氏イラストブログ
正月休みの間に、何度か実家を訪れた。

ひで氏です。

普段からたまに立ち寄るが、やはり正月に行くというのはちょっとしたスペシャル感がある。

母はワイルドだ。明けましておめでとうもなく、会った瞬間「あんた、ちょっとパン買ってきてくれへん」
とこんな感じだ。

父が亡くなって一人になってからというもの、そのワイルドさは増し、
私ひで氏がちょっとこぼれたお茶を拭こうとボックスティッシュのありかを聞いたところ、机の上にあるというので行くと、
なんとも画期的な状態になっていた。



5個一組でビニール包装されているティッシュの一番上だけをむしり取り使っているのだ。
これはこれでちょっと目からウロコ的な新鮮さがあったが、讃えはしなかった。

それはさておき今回正月休みのこの日を使ってやろうとしていたこと、それは母の寝具の手配である。
突拍子もなく聞こえるかもしれないが、肌の弱い母はちょうどシーツやふとんがあたる手首のあたりを相当荒らしてしまっており、
痛々しい感じで流血することもあるため寝具にもちらほら血がついているのだ。

これもワイルドすぎる。

もちろん洗濯はしているはずだが血液というのはなかなか取れないもので、見た目にもホラーすぎるし、正月ということでいっそ一式を買い替えてはどうか、と兄と勝手に判断したのだ。

当の本人は別にどっちでも、という感じだったので早速母を家に置いて兄と近くのショッピングモールへ。
寝具のコーナーに行ってみるとあまりのラインアップの多さに二人とも圧倒される。

選ぶのも大変だと思いつつ、やれこれはこれとあまり値段が変わらないのに触り心地がいい、どうせなら枕カバーもいっとこう、などと売り場で議論が始まったのだが、しばらくすると周りの目が気になってきた。明らかにチラチラ見られているような気がする。

そこで二人ともハッとなった。

議論が進むにつれて見られてもおかしくないようなセリフを男二人で連発していたのだ。


「白っぽいのもいいかもしれんけど、血まみれになること想定してるか」

「(母は背が小さいので)これなら全身すっぽり入りそうやな」

「とにかくはよ戻ってやってしまおう」


正月早々、二人の男がモールの寝具売り場で交わすこんな会話を漏れ聞いた主婦たちの心情をお察しする。


結局寝具一式を購入し実家に戻り母の心機一転を図ったわけだが本人は至って冷静に「ええね」とポソリと言っただけであったが、
早速昼間から横になっていた。


それにしても、寝具売り場でやけに冷静にこちらを見ている子供がいたが、
やけにインパクトのある髪型をしていたなあ。











頬をつたう雨

2013年06月27日 | ヒデ氏イラストブログ
最近、正直言って雨の再来を待っていた。
傘を買ったからだ。

ひで氏です。

モノを買う時には、消耗品を買い替えていくスタイルとある程度の値段のものを買って長く使い続ける二つのパターンがある。傘というのは私ひで氏にとっては消耗品である。

なぜか。

答えはシンプル。絶対に無くすからである。
それも驚くほど短期間の間に。

脳のどこかの一部分が欠落している私ひで氏は、ただでさえ病的な物忘れ癖があるのに、
傘などとんでもない。一歩出たところが雨でない限り、100%の確率で傘を置き忘れる。

例えば電車に乗って脇に傘を置くとしよう。
降りる瞬間、まず確実に傘の存在は忘れている。電車から出る瞬間に雨が降っているのが視覚的に確認できて初めて思い出す。視認できなければ、忘れる。つまり地下鉄ならアウトだ。

そんな人間に高級傘を持ち歩かせるのは金をドブに捨てるようなものなので、私ひで氏はもっぱらビニール傘か折り畳み傘だ。ただし傘のランクを下げると、不思議とあまり忘れないから不思議だ。忘れてはいけないものほど忘れる、それがもう一つの大きな特徴のような気がする。

そんなわけで最近傘を新調した。折り畳み傘だ。
これまではユニクロの千円の折り畳み傘を使っていたのだが、ユニクロの傘は実は1世代目と2世代目でも大きくなったりして改良がなされており、持ち手も太く、袋も取っ手についた小さなフックで離れることがなく実は気に入っていた。ただ一年もすると全く撥水しなくなる。しかしそれも千円で一年持つならなんとリーズナブルか、と納得していた。

しかし先日ユニクロに傘を買いに行き知った衝撃の事実。

ユニクロから傘が消えたのだ。聞くと傘事業は撤退したという。
あのユニクロが撤退せざるを得なかった傘ビジネスの闇を見たような気がした。。。ゴクリ。

そもそも傘というのは「空から降ってくる水に濡れたくないからぴんとはった布で頭上を覆う」というだけの非常に原始的なものだ。iPadやらなんやら、今や何でもできるとかよく言うが今だに人類は雨を凌ぐのに傘かカッパしかないのかと思うとなんだか笑ってしまう。

欠点も実は満載だ。

片手は塞がるし、足元はノーマーク。傘のヘリのところは常に雨水がぽとぽと垂れその真下にあるものは集中的に濡れる(リュックなど)。風に煽られれば簡単にひっくり返るし、いくら撥水性が高いという傘でもいずれは水を弾かなくなり、そうなった傘は生乾きの状態になるととても臭い。雨が上がった時のお荷物感は尋常ではない。捨てる時も可燃なのか不燃なのかわからずとても困る。唯一ロマンがあるとしたら相合傘くらいではないだろうか。これとて結局は傘の欠点を利用した密着技なわけだが。

将来的には分子の電極のプラスマイナスを反転、とか何とかそういう感じの、何もしなくても全く濡れない技術が出てくるのに違いない。しかしまだ先っぽいのでしばらく普通の傘と付き合うことは間違いなさそうである。

そして先日、ついに雨が降ったので買ったばかりの折り畳みの実戦初日だ、と思ったのもつかの間、あまりに風雨が激しいのでこの日は見送った。その代わり、家に転がっていたもっとも丈夫そうな傘を持って行った。

しかしこの傘、最も雨風が強くなってきた頃に突然バン!と音を立てて閉じてくるのだ。
しかも閉じ方が唐突で、再度開くとしばらくは持つのだが突然何の前触れもなくバン!と閉じる。どうも最後の引っ掛かりのところがバカになっているのだ。なぜこの傘が家の片隅に転がっていたのか理由がわかった。

片手は傘、もう片方はギターを持っているので避けようがなく、もれなく傘小僧のようなビジュアルになる。
しかもそうなる度に傘から一斉に垂れる雨水で肘から下がびしょ濡れだ。

これはいかん。。。特にギターを持っているので濡れるわけにはいかない。。。ということで幾度か同じことを繰り返した後に、もう開くのをあきらめて傘小僧スタイルで目的地まで行くことにした。
ただし、ギターのヘッドも傘に収納した体で、だ。

もちろん前方は全く見えないのだが幸いよく知っている道であったのと、川沿いの信号もない一歩道だったのでなんとかこのチョイスが通用した。それにしても風に吹かれて氾濫した川にインしようものなら、ただの捨てられた傘のように誰も気に留めずそのまま流されるなどという悲劇も起こりえたかもしれない。

途中 登校中の子供たちの一団とすれ違ったらしく、一瞬の沈黙の後の大歓声の喧噪が聞こえてきたが周りが何も見えないのが幸いであった。



それにしても、笑われることはあってもこのスタイルは肘までは完ッ璧に防護されるよね、あと結構あったかいよね、あれ・・・なんで濡れてるんだろう・・・

雨がもれてるのかなと思った水が頬を伝う涙だったことは、誰にも見られなかった自分だけの秘密だ。






二人合わせて3万匹

2013年06月22日 | ヒデ氏イラストブログ
ある人にとって恐ろしく気になることが、自分にはどうでもいい。

よくある話である。特に「何を不愉快に感じ、何を何とも思わないか」ということに関しては、個人の価値観が大きく左右するところだ。おそらく生まれ育った環境や周りの人の考え方なども影響していると思う。

ひで氏です。

例えばタバコ。
飲みの席でも、自然と喫煙組と禁煙組にグループがそれとはなしに分かれる、というのはよくある光景だ。私ひで氏は煙草を吸わないのだが、煙草の煙というのは別に気にならない。まあ確かにその喫煙組の中に放り込まれ四方八方からプカプカやられるとさすがに閉口するかもしれないが、喫煙者でもそれはイヤだ、という人もいるだろう。

煙草などは吸う吸わないでかなり対応がはっきりしてくるのでわかりやすいほうだと思う。

わかりにくいものがある。たとえば「鞄を地面に直接置くのは許せない」と言う友人がいる。

私ひで氏としては、全く気にならない話だ。

そして気にならないと言ったが最後、友人からはあたかも脳の感覚が異常だというような奇異な目で見られる。このあたり、どちらかの認識が変わらない限り決して理解しあえることは無いだろうと思う。


気になる人に対しての対症療法的な商品はある。たとえば有名なこの「上履き鞄」。鞄の底が靴底になっているのだからどうぞ気にせず地面に置いてください、という商品だ。しかしこれを採用すると逆にキレイなところ、例えば家の床に置けないことになるので友人にはおすすめできない。なんせ友人は「家の床はオッケー」なのだ。そう思うとこの商品、綺麗なところに決して鞄を置けなくなるという拷問のようなスパイラルを生む恐怖をはらんでいるように思う。

電車のつり革はトイレより汚い

などもよく聞く表現だ。あと最近テレビで見かけたのは

人の顔には1万5千匹超の微生物がうごめいている

というものだ。これもいかにも友人は反応しそうな気がする。

んなこと言い出したら。。。と私ひで氏などはすぐに思ってしまう方だがそこはまぁ人それぞれ。

例えば、電車内で鞄を直置きし、つり革を握りながら頬を寄せ合うカップルなどを見たらこの友人は卒倒するに違いない。


以前この友人に音楽を聞かせようとして、イヤホンを渡したら「ちょっと待って」と静止され友人持参のウェットティッシュでイヤホンを拭かれたときに、私ひで氏は「いつか必ずあの電車の状況に放り込んでやろう」と無言の笑顔で誓ったのであった。



健康診断はスポーツだ

2013年05月30日 | ヒデ氏イラストブログ
春の健康診断。
私ひで氏にとってはもはや風物詩である。

もう何をやるかは十分に分かっているし何度も経験しているのに、いつも毎回新しい発見がある。すべての項目において私はそれを「こなしていくべき競技」のように捉えているので、取り組み姿勢は真剣だ。いや、逆にそう捉えないと全く面白味がなくてやってられないというのもある。

身長と体重は毎回ピリピリする。
身長は変わるはずはないのだが、やはり一縷の望みをかけて普段姿勢の悪い私ひで氏もヨウジ氏並みに背筋を伸ばし、頭にはシリコンを入れているイメージでぴんと前を向く。近年は自動で棒が下りてきて頭頂部をヒットするタイプの身長計なので、インパクトの瞬間ぐっと首を首長族のように伸ばすイメージをする。そして結果は毎回同じ、もしくは縮んでいたりするから不思議だ。

体重に関しては服を着ているから家で計るより重く出るはず、と思ったのだが意外と少なめに出た。幽体離脱をイメージしたのが良かったのだろうか。

視力検査。
これはやはり無関係と分かっていても大きさである程度イメージされるような気がするので張り切ってしまう。ただここは簡易の診断に近いので、覗いた先の一番下の段のランドルト環がすでに自分にとってはまだ大きすぎる。いつも両目1.5で強制終了し、本当の視力が知りたければ眼科へ、と言われる。目指すは和製オスマンだ。

そのほか、いろんな検査を一通りやるわけだが私ひで氏にとってとにかく存在感が大きいのがバリウムによる胃の検査だ。

まあ胃カメラを飲むよりはマシと思えばそれまでだが、あんな原始的な検査ってあるだろうか。発泡剤で胃を膨らまし、ゲップを我慢しながら胃に液体を流し込み、台に寝かされ指示されるままぐるぐる回って写真を撮る。もちろんパンいちで、だ。


機械はものすごく大がかりなのにやることはものすごくシンプルだ。
小窓の外からは医師が細かく指示を出してくるのだが、特にうつ伏せで頭を下に下げられると、ともすれば海老ぞりになって台から転げ落ちるんではないか。。。そんなことになったら

「ああーーー!ちょ、ちょっとストップ――ッ!」
「先生、落ちました、あの人、海老みたいに!!」

などと大騒ぎになるのでは。。。と想像して笑いとゲップをこらえる。

と今回もフィナーレにド派手なこのバリウム検査があって無事検診終了。


なにはともあれ、健康が一番どす!