「情熱の国スペイン(←もう飽きたw)」にも冬はある。
日本全国が南国九州・沖縄の気候でないのと同じ。
南の一部を除くほぼ全国において、はっきり「冬」と呼べる季節は存在する。
イベリア半島北部、山間地区においては、道路が遮断される程の積雪量を見る地域が多い。
中部のメセタと呼ばれる広大な高原地区においては、積雪量は少ないものの、
乾いた冷たい風が吹き付ける厳しい冬が毎年繰り返される。
スペイン全国で年がら年中、こんな状態↓↓ではない(キッパリ)!
ここサラマンカのあるカスティージャ地方の冬は厳しい。
頬を切るような冷たい風に毎日さらされてると、なんでこんなに傘地蔵みたいに
耐えなきゃいけんのだ!?とさすがに当り散らしたくなる。
なおかつ冬から春への移行時期、「三寒四温」の日々が長すぎ…
“なんかもう春じゃ~ん!”と半袖で1日歩き回った翌日吹雪、とかあまりにもなフェイント
が多すぎの日々が続く。5月に雪振りました~とかもう笑えないサプライズも、何度も経験した。
だからこそゆえなのか。
冬という季節が、時々垣間見せる美しさに敏感に反応するようになる。
キリキリと締め付けるような寒気の中で見上げる空の青さ、
冷たい廊下の窓の下にできた、蜜色の陽だまり、
早朝、聖堂の塔をまったり包む、乳白色の霧…なんてのにうっとりしてたりする。
そしてのーんびりやってくる春の訪れ。
これを示す“小さな報せ”に、ふと心を緩ませたりする。
例えばスイセン。
ちょっと前までは、少し寒さが緩んだかな…と感じる頃、市場やスーパーの前に
小さなスイセンの花束を売る人を見かけたものだった。
(可愛らしい女の子のお花屋さん…と思うだろうが、大抵村から今来ました、見たいな風情のジャンパー男だった)
薄暗い天気の中に、あの花の黄色が目が覚めるように鮮やか。
ああ、ちょっと春の匂いがしてきたな~としみじみ感じる。
(今では花やで↑こんな感じの小さな花束を売ってる。)
また、いつも横を通る八百屋の店先が、随分彩り賑やかになっているのに気がつく。
いちごの木箱が並び始めるのもこの頃。但し最近はハウス栽培が
ほとんどなので、やたら早くから並び、季節感もないけど…それでもこの赤を見ると嬉しくなる。
そしてその横になんだか普段はみない、カイワレ大根の親戚みたいなのが…↓
この緑の小さなハーブが、食卓に春の兆しを呼ぶ「マルーハ」だ。
● カスティージャの春の兆し
その名をマルーハ、パンプリーナ、ボルーハ、レガホと、地方によって変える。
ここサラマンカからエクストレマドゥーラ地方北部、アビラ、サモーラあたり、
またアンダルシア地方一部でポピュラー。日本でいえばハコベの親戚らしい。
2月の末頃から3月、清流の流れる小川のほとりにポコポコと群れて生える。
これの先っぽだけを丁寧に摘み取り、よ-く洗い、
塩、オリーブオイル、お酢、ちょいニンニクとタマネギみじん切りでさっと合える。それだけ。
今回は私の料理の師匠Mさんのアドバイスに従って、お酢のかわりに
みかんを絞り入れてみた。
お味の方は~うん!優しい緑の香りと茎のシャワ感が素敵!
みかんのおつゆがお酢のように尖ってないので、うまい具合にまとまってる~
これに生ハムだの茹で海老だの入れたレシピは一杯出てくる…
気持ちはわかる!あんまり素直すぎる素材だからなんかいじりたくなっちゃうのよね!
でもそこは最初やっぱ我慢してみて~と思う。
それだけふんわり、デリケートなハーブ。
「同じ清流に育つ、あくの強いクレソンの、気の弱い友達」というか…(←説明微妙w)
●それでも人は色を希求する
…まあそれでもこんな小さい菜っ葉を食べて何が面白いんだ?
それも微妙に安くないし。
最近では衛生面に関する憂慮もあり、すべて栽培管理がされており、望めは真冬でも手に入る。
(ちょっと前までは八百屋さんの休日バイトだった。弁当と鎌をもってマルーハ狩り?に近郊へ出かけたもんだったらしい)
なのに、店先にマルーハの木箱がだされるとおっ!となり、
レストランで「マルーハあります」といわれると、いそいそと頼む人がいる。
スイセンの黄色。
イチゴの赤。
マルーハの緑。
もうこれは人間の本能なんだろうな。
色の無い、白茶けた高原の長い冬を何ヶ月も越して、最初に目に付く
原色に飛びつくようにできてるんだろうか。昔から。
今年の冬も厳しかった。
ヨーロッパ全域を襲った歴史的な寒波は、ここスペインでも甚大な被害。
野菜の価格、大高騰。
…はやく!はやく!と春の訪れを心待ちにする声が日に日に大きくなっているようで。
★参考資料 "Ven a La Vera"Turismo rural en la comarca de la Vera de Cáceres
★Special Thanks a Masami de Restaurante Japonés SAKANA