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あみの3ブログ

小堤城山城@滋賀県野洲市大篠原 令和三年(2021)5月29日

お城検索は→こちら


旧中山道と東海道への間道が城の麓を通り、湖東・湖南そして甲賀地方ともつながっていた要衝の地であり、城主は、戦国期の野洲郡一帯に勢力を保有した国人領主である永原氏と考えられる。
 当時の守護は六角氏で、守護代で野洲郡の郡代でもある馬淵氏の家臣であった永原氏は、やがて六角氏の直臣となり野洲郡での勢力を馬淵氏から継承したようである。しかし、織田信長の近江侵攻からは一族の大半が織田方につき、その後信長家臣の佐久間信盛の与力となったとされる。

城域は、城の最高所から派生する尾根上、そして北西側の中腹部まで展開している。メインの登城路は北西側山麓からのルートである。
縄張りの特徴として、六角氏の本拠である観音寺城と同様に、近江の天台宗寺院境内構造に酷似している点。
次に、石垣が多用される点である。使用されている石材は城域周辺で豊富に産出される花崗岩で、基本的には自然石による野面積の石垣である。安土城以前の近江の城郭で、石垣を多用する事例は「観音寺城」「三雲城」など数例に限定される。以上の特徴からは、観音寺城の縄張り構造に一定の共通項を認めることができる。
六角氏は近江の寺院勢力下の石工集団を再編して観音寺城の石垣を構築したとされており、おそらく小堤城山城の石垣も六角氏から何らかの協力を受けているのであろう。

六角氏は甲賀郡の山間地を有事の退去先としている。織田信長の近江侵攻の時もこの方策をとっており、甲賀郡の土豪の支援を受けながら、平野部の奪回に向けて抵抗を続けていた。小堤城山城と三雲城の築城の背景には、六角氏がこうした戦いでの臨時拠点として使用する構想も存在したのであろう。、、、近江の山城を歩く(サンライズ出版)より「小堤城山城」福永清治氏執筆




場所は滋賀県野洲市大篠原、名神高速竜王ICと栗東ICからはほぼ中間に位置し
「国道8号線」と「県道324」が立体交差する陸橋から近江八幡市側に200mほど進むと、右手に「平田機工関西工場」がある。信号のない交差点をこの工場に向かって右折し、工場の正門を右手に見ながら、正面の山に向かって直進する。



住宅地を抜けると農道は林道へと繋がっているので、山中を更に直進する。




やがて右手にゲートがみえるが、構わず突当りまで直進すると林道のゲートに行き当たる。ゲート左手には太陽光発電のソーラーパネルが設置してある。退避スペースに駐車可能。
ゲートは車両進入禁止と害獣対策で施錠してありますが、城址見学の場合は容易に跨げます。
この先森林組合管理地なので、マナーを守って楽しみましょう。




林道を歩き始めると先ず左手からの林道の合流があり、更に進むと右手には「至吉祥寺」方向の標識が見えてきますが分岐まで直進します。
◆第1分岐
森林組合の小屋右折
大きな保全治山案内看板が目印です。
ちなみに歩いてきた林道を直進すると「大篠原」、今来た道は「小堤」方向の標識があります。


第1、第2分岐の中間点にある東屋
柵で囲った小屋を左手に見ながら直進。ここから先、道は細くなります。




◆第2分岐点
広い林道が交差する5差路に出ますが、「城山登山口」の看板がある細い脇道を進みます。
ちなみに左は「森楽校」、右は「国道8号1.6K」、今来た道は「小堤」方向の標識があります。




◆第3分岐点
いよいよ城域に到着です。
説明看板と縄張り図の看板が目印です。
ここから先、直進「尾根ルート」と、左折「曲輪ルート」に別れますが、城跡山頂の曲輪付近で合流します。



自分はもちろん「曲輪コース」を選びました。
ここから先は現地説明版の縄張り図を基に、行程を説明したいと思います。

主郭から北西方向に伸びる谷筋のルートで、左右に大小の曲輪群が連なり、まるで背骨のような形をしています。
案内図には登城口から順番に識別番号が割り振られています。ルートの右手には「R」、左手には「L」を冠して「主郭」までそれぞれ「1」から「12」まで都合「24」の曲輪が連なっていることがわかります。



道の両側に小規模な平坦地が階段状に連なっている。


下草で覆われたなかに大小の岩石が露出しており、登っていくにつれその数が増え、やがて石垣の形状を確認することができる。
写真は「L-9」付近


「L-10]曲輪では自然岩盤を利用した石塁も見受けられる。


「L-11」曲輪の石垣


「R-11」曲輪の巨石
実際は帰路で足を踏み入れた場所ですが、曲輪ルートでまとめて報告することにします。
往路では左側の石垣群に目を奪われ、右手の曲輪群には露出する石垣が見当たらなかったこともあり見落としていました。

R-11曲輪は主郭の直下、虎口の手前位に位置し、曲輪群の中でも有数の広さを誇ります。入り口にロープが張ってあるので気になり足を踏み入れると、奥の山側に大きな岩が見えました。


近づくと人工的に積み上げたとしか思えないような配列です。


これなんかほとんど角石ですよね。


R-11曲輪の山側斜面を覆うように天高く積み上げられているように見えてきます。


まるで切断面を重ね合わせたような巨石


自然岩盤と露出した巨石が連なる山の斜面



強固な岩盤と巨石を背後に持ち、主郭に近い広い郭の主は、きっと城主の重臣であったに違いないと妄想は膨らみ、この日の〆として鮮明に記憶に残りました。



それでは再び往路に戻り
「L-12」曲輪の石垣です。


L-12の上部は主郭なので、この石垣は主郭法面の石垣という事になります。
露出している石垣列は上下2段が残存しています。



「虎口」(平入虎口)
L-12曲輪から道に戻り上部曲輪へ登ると、道は直角に曲がり両脇に石積みがみられるなど、主郭虎口の特徴が現れています。


上段から見た虎口



「主郭」「曲輪13」
主郭北側削平地(L-12曲輪の方向)麓に面し開けている、案内板が設置されています。



主郭南側削平地(山頂方向)背後に山の頂を抱え、天然の城壁とも見える。

ここには山頂に登る階段があり、尾根コースとの合流点も近い。



主郭から山頂側(「曲輪14」)に登るもう一つのルート上に「堀切」がある。
写真左手「曲輪14」
右手方向が山頂


写真は堀切から主郭方向を見る



「曲輪14」
いよいよ本格的な石垣との遭遇です。
この曲輪は主郭の上段に位置し、山頂部曲輪群との接続を堀切で分断し、主郭東側の城壁土塁の役割を果たしているように見えます。



曲輪先端部の「曲輪14石垣」


同角石
自然石による野面積み


同南面
算木積みでしょうか? 高い石工技術が伺えます。


曲輪14は堀切で先端部と断絶されている。
先端部から見た堀切と石垣全体図


先端部の堀切面にも石積みの痕跡が見受けられます。




山頂へ向かう途中の「曲輪16」削平地


「曲輪16石垣」
角石の下部が崩落を免れ、残存しています。


「曲輪17石垣」


「曲輪18石垣」


「尾根コースとの合流点」
曲輪18付近で合流します。復路はこの尾根コースを予定していたのですが、山頂迂回コースを選択したため、ここへ戻ることができませんでした。


矢穴跡が残る石
山頂て前の道に露出した石ですが、石垣から崩落したものでしょうか?


祠手前の巨石
まるで城戸口のような「見せる石」にも思えました。


山頂手前「曲輪20の祠」




山頂「曲輪24」
標高286m城山山頂、360度のパノラマが楽しめます。


琵琶湖の眺望

南方向眺望

北方向眺望

大津方向



休憩の後、古城山方向の尾根に展開する曲輪群を見に行きました。
東方向にある、この巨石の脇から降りていきます。


この東側斜面は巨石が露出しており、まるで観音寺城の高石垣へ降りていく辺りの「女郎岩」周辺と、地形的に酷似していると感じました。
観音寺城の記事は→こちら



山頂から直下の曲輪25へはロープを伝って降りていきます。


「曲輪25」


「山頂迂回ルート」
「曲輪25」から山頂の裾野を通って、元来た「曲輪16」へ戻るコース。
先ほどのロープを伝って降りた崖を登って戻る危険や恐怖を回避できます(;^ω^)
但し、曲輪18の尾根ルート分岐点も迂回してしまいます。どうしても尾根ルートを行きたい場合、戻ってきた曲輪16からもう一度山頂を目指し曲輪18まで登ることになります。


迂回ルートから見える山頂(曲輪24)斜面の石垣
自然岩盤や露出した自然石を利用した石垣です。



こうしてみてみると、確かに「観音寺城」と似たところがあると感じました。
石垣の使い方、巨石が露出した岩山を巧みに利用ているところ。山頂部ではなく中腹に主郭を置き、直線的な大手道の突当りという、寺院の参道と本殿のような配置感覚。
まさに《六角氏の有事における退去先》と言えるのではないでしょうか。

こうなったら同じ系統の「三雲城」も是非訪ねてみたいものです。


【小堤城山城】
《》

名称(別名);
所在地;滋賀県野洲市大篠原
城地種類;山城
標高/比高;286m/120m
築城年代;15世紀末から16世紀前期
廃城年代;
築城者;永原氏
主な改修者;
主な城主;永原氏
文化財区分;
主な遺構;石垣、曲輪、堀切、虎口
近年の主な復元等;


※出典、、、
地図;
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