(アルファロメオ156 2.5V6 Q2という車種です)
2週間近く乗ってみたインプレッションを書いてみます。
素人がインプレッションだなんて、生意気だと思われるかもしれませんが……
これでも若いころ国内A級ライセンスを取り、筑波サーキットで草レースを走ってたんです。
アメリカのレーススクールに通って、フォーミュラ・フォード(あのタイヤが4本むき出しになってるレーシングカーです)のライセンスも取りました。
ただ、おカネがかかり過ぎて続けるのが難しかったのと、本当の才能がないのがわかったのでやめました。
そのときは無駄なことしていたなと思ったんですが……
後年になって一時期モータースポーツを取材して、国外にも行って取材し記事を書く仕事をしばらくしていて。
F-1から国内のスーパーGTレースまで、レースの状況を取材したり…
レーシングドライバーにインタビューしたり、レーシングマシンやタイヤの開発技術者などに話を聞いたりすることになったので、自分でレースをしていた経験がずいぶん役に立ちました。
フェラーリの本拠地マラネッロに行ってあの「帝王」ミハエル・シューマッハにインタビューした経験もあるんですよ。
そういうわけで、自動車に関して全くずぶの素人ではないということで、どうかお許しください。
というわけで、うちのペッピーノ。
車歴15年を超えているということで、ボディや内装にヤレ感が出てきているのは、もう仕方がないです。
内側のドアハンドルを引っ張るとギシッときしんだり、ときどき、どこか後ろの方からカタカタ音が聞こえたり。
まあそういう音は、30年選手のメメに普段乗っているので、もうスルースキルがついているから全然気になりません。
でも、フレームをはじめとする車の構造自体が、弱ったりガタついたりしているということはないみたいです。
唯一気になるところがあるとすれば、フロントの足回り。
ここには確実にヘタれが感じられます。
とくに、スタビライザーのゴムブッシュあたりがヘタっていると思われ。
長年、フロントに重たいV6エンジンをぶら下げているので、その負担もあるでしょう。
タイヤの減り方などを見て推理したところでは、前のオーナーさん、けっこう飛ばす人だったみたいなので…
(峠道とか行ってブイブイ言わせてる人だったのかも)
急加速、急ブレーキ、急ハンドルを重ねてきたせいで、余計にサスペンションやスタビライザーに負荷がかかってきたのかなあと。
この車で最初に余計なお金がかかるとしたら、足回りの整備代でしょう、おそらく。
それか、まあエアコンあたりかな。
この間も書いた通り、私の愛車メメで一番最初に不具合が出たのはデンソー製のエアコンでしたからね。
日本製コンポーネンツとイタリア車の相性が悪い、なんてこともないでしょうけど。
一方ペッピーノに搭載されている日本のアイシン精機製トルコン式オートマに、異常は今のところなさそう。
ただこのオートマ、アクセルの踏み方によっては、1-2速の変速時にショックが少し感じられます
買ったのは安いお値段でしたが、もとがアルファ156の中でも、割と上級のバージョンなので、ちょっとがっかり。
同じアイシンのオートマを使っているトヨタのハイグレード車だったら、もっと洗練されているんじゃないかと思うんですが。
まあ、壊れなければいいんです。
でも、なんといってもこの車に一番期待するのは、自分の身体の延長であるかのように動いてくれるハンドリングと…
「ブッソV6」エンジンのフィーリングです。
これらは期待通りに、というか想像以上に素晴らしい!
ハンドリングは、オールアルミブロックの軽量な「アルファツインカム」エンジンを積んだ私の愛車メメと比べると…
前がやや重い感じはするものの、それでも切った分だけグイっと素直に回頭する心地よさは、アルファロメオとしての期待を裏切らないものです。
そして圧巻はやはりブッソV6エンジン。
アイドリング状態では、獣の息遣いを思わせる振動がハンドルに伝わってきて、ちょっと不穏な雰囲気があります。
このあたりは、基本設計の古いエンジンならではのものですが…
車好きにとっては、発動機の存在をリアルに感じさせてくれて逆に気分が上がります。
でも発進してみると、低回転域ではシルクのように滑らかな回り方で、トルクも十分にあるので、とても運転しやすい。
折り目正しく正確な仕事をしてくれる、執事みたい。妻の車としてはいいでしょう。
あるいは、身のこなしがしなやかで優雅な、シャムネコ…かな。
でも、たとえば2~3車線道路の一番左側を走っていて…
信号で止まって、前方に駐車車両を見つけたときなど、車線変更のため、隣の車の前に出たくなるでしょう?
そういうときにグッとアクセルを踏み込むと、隣の車が簡単にルームミラーの向こうに遠ざかって行ってくれます。
私のメメは、物理的に言えば決して速い車ではないので、その感覚でいると、思った以上に出足が良い。
これも妻の運転をより容易に、安全にしてくれるはずです。
さらに、変速機のモードを「スポーツ」に変えて、思い切りアクセルを開けて…
あるいはシフトレバーを左に倒してギアを固定し、高回転をキープできるようにして…
3千5百回転以上まで回すと、突然音が変わって「GARRRRR!」と咆哮を上げ始め、さらに回転を上げると…
金管楽器のような、勇ましくかん高い音を立てます。
シャムネコが一瞬にしてベンガルタイガーに変貌するのです。
この極端なまでの二面性は、ほんとに劇的で、興奮させてくれます。
これほど、いい意味で粗削りでエモーショナルでありながら、なおかつ普段使いもしやすいエンジン、ほかにちょっと思いつかないかも。
なるほどこれが、ブッソV6エンジンが「歴史的名機」と言われるゆえんかと、深く納得しています。
燃費はよくないですが。
ただこのエンジンに本気を出させるのは、日本の公道では危ないから…
高速道路の入り口や料金所を出たところで、たまーに鞭を入れるぐらいしかできないですが。
でも、これが「100諭吉」をはるかに下回るお値段で手に入るのなら、激安と言えるでしょう。
ジウジアーロの手が入ったエクステリアデザインは、もちろん美しいし。
やっぱりこの車、買って良かったです。