きいろをめでる

黄瀬、静雄、正臣の黄色い子達を愛でる同人二次創作短編小説中心。本館はAmebaです。

純愛(臨正/正臣若干病んでます)

2010-07-26 21:15:36 | 小説―デュラララ
人間、あんまりにも悲しいと無意識に涙が出てくる。
それは自分の周りのほとんどの人に当て嵌まることだったし、勿論自分にも当て嵌まっていた。


そんな些細なことを、今日、強く否定したいと、オレの心は欲していた。




「君個人が好きなんじゃない。俺は人間が好きなんだ」

意地悪そうに微笑みながら、目の前の男はそう吐き捨てた。

アンタはオレが好きなんですか、とふと口走ってしまった質問への答えだった。

彼のそういった考えは知っていたし、十分に理解していた。
でも、心のどこかで、自分だけは特別なんじゃないかと、甘えていた。
折原臨也の答えは、確実に「拒否」だった。

・・・ただの甘えにすぎなかったのだ。


「そう、ですか」


別になんとも思わなかった。正直憎くて憎くてたまらない相手だったし、こうスッパリと切り捨ててくれたほうがありがたい。

「まぁ、オレもなんとも思ってないですし・・・」

そんな筈だった。


「なんとも思ってないのに、どうして泣いてるわけ?」
「・・・え」


自分の感情が零れ落ちていることに気づかされ、激しい嫌悪感が自分自身に対して生まれる。


(これじゃあ、悲しいみたいじゃないかよッ・・・!!!!)


悲しいと思う部分がどこにあるのか解らず、涙は止まることを知らず流れていった。



「陰気くさいから、泣くのやめてくれない?」
冷徹な声が届いた。

「す、みませ・・・」
「あとちゃんと仕事していってよね。そのために君はここにいるんだから」

どこまでも冷えた声。

正臣は涙を一生懸命堪えつつも、言われた仕事を消化し始める。

しかし手は思うように動かない。


ふと考え始める。

悲しいときに流れる涙。
臨也さんに拒絶されたことで流れた涙。
嬉しかったわけでも感極まったわけでもないから、さっきの自分は悲しくて泣いた。

拒否されて、悲しかった。

なら、自分の気持ちは。

(す、き、だ)

好きだよ臨也さん。

でも臨也は自分のことはただの手駒。

それなら、もう、・・・いいや。


なんだか何もかもどうでもよくなった。
今気づいたばかりだけど、こんなにも好きな相手にこんなにもはっきりと拒絶されたんだ。
ああ、もう、どうでもいい。



仕事の手を止めて、近くの窓までいき、カラカラと開けると、無防備にテーブルの上にあった30枚ほどの札束を、新宿の夜空に思いっ切りばらまいた。

はらはら、ひらひら、同じ印刷の施された紙切れ達は、夜空に映えて散っていく。


その様子を微笑みながら眺めていた正臣に、臨也が声をかける。

「ちょっと・・・俺の身分ばれるようなことはしないでよ?」

「・・・・・・その程度、ですか」
「・・・・・?うん」
「そう、ですか・・・・・・」


試してみようなんて考えた自分が馬鹿だった。
既にこんなに拒絶されてるのに。
心配されようなんて、馬鹿だった。



フッと、自分を嘲った。
もう、いいや。
自分の想いとか、もう。
オレがこの人を好きでいて、幸せになる人は、この世界に一人といない。
勿論、自分でさえも。


部屋の方向に向いて、窓枠に腰掛けた。

そして、綺麗に笑った。


「さよなら、いざやさん」



そのまま、窓枠から手を離して、背中のほうへ体重をかけた。


落ちる落ちる。


ああ、星が綺麗だ。

星に手を伸ばした。


いざやさん、さようなら。


目を閉じた。







●○●○●○●○●○●○●○●○●○







投身自殺って、本当に死ぬ前に、落ちてる間に意識がなくなるらしい。

だから、きっとこれは、死ぬ前の夢なんだと思った。


オレが、臨也さんに抱きしめられてるなんて。



「いざ、や・・・さん・・・・・・?」

掠れた声が出た。

その声に呼応して、抱きしめる力が強くなる。

あたたかい。

あれ。
抱きしめられて、あったかくて。
感覚がある。
死んで・・・ない。


「臨也、さん・・・?」

「ごめん、ごめんごめんごめん、ごめん正臣くん」

ぎゅう、とこもった力が強くなった。

「君を、死なせるようなつもりはなかったのに・・・・・・俺は・・・俺は・・・・・・」

そして小さく呟いた。

「正臣くんのことが好きなのに」

「・・・え、」

驚いて、臨也の顔を見た。

とても、泣きそうな顔。


やってしまった。
こんな悲しそうな顔、させるつもりなかったのに。


「ごめ、ん、なさ・・・」
「謝らないでよ・・・俺が追い込んじゃったんだから」


正臣の両肩に両手を置き、胸に頭をうずめ、甘えるように囁いた。

「死なないでよ正臣くん、俺を置いていかないで」


強く。


「好きだよ、愛してるよ、正臣くん

誰よりも、世界一、君を愛してる。

どんな他の人間より、君のことが、

好きだ。

試しちゃったりして、ごめんね」


「いざやさんっ・・・・・・!!!!」
また、子供のように泣いてしまった。
でも今度は、嬉しかったから。


「泣かないでよ、陰気くさくなるから」

目尻にキスして、涙を拭った。


「正臣くんは、こんなことした俺のこと・・・・・・好き?」

ずるい。
判りきってるくせに、そんなこと聞くなんて。

でもね、

「大好きに、決まってるっすよ」








その直後、正臣は後頭部を打った。

押し倒されて、キスされたから。


そんな間に、どちらからともなく、言う。



『大好き』