「風強いっすけど、来てよかったですね」
正臣がこちらを見て笑う。
「ああ、そうだな」
乱れる前髪を払いながら、静雄も応えた。
大分暖かくはなったが爽やかな風の吹き込む山のコテージに、二人は旅行へ来ていた。
周りに人影はなく、ただただ森が広がる。
真っ白に洗いあげられたバスタオルやシャツが手際よく干されていき、少し強めの風に吹かれ翻る。二人は洗濯途中だった。
その中心にいる正臣が、白の中の唯一の蜂蜜色と浮かび上がる。
さらにその後背には新緑。
それぞれの眩しいくらいの情景は、強烈な印象を与えた。
眩しい。
それはまるで、今自分達を照らしている初夏の太陽のように。
「・・・夏、」
「え、なんですか?」
「なんか今の紀田見てると、夏が来た、って感じがする」
そう言って微笑むと、眩んだように目を細めて、正臣の頭をくしゃりと撫でた。
その表情に、仕草に、正臣の頬が少し赤くなる。
そして、恥ずかしげにやや俯きながら、
「静雄さんも、きらきらして、爽やかで、夏っぽいっすよ」
と応えた。
きゅっと、半袖を着ている静雄の細くも逞しい腕にしがみつきながら。
きらきら、きらきら。
鮮やかな情景は、初夏の太陽と呼応して輝いた---
春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山
正臣がこちらを見て笑う。
「ああ、そうだな」
乱れる前髪を払いながら、静雄も応えた。
大分暖かくはなったが爽やかな風の吹き込む山のコテージに、二人は旅行へ来ていた。
周りに人影はなく、ただただ森が広がる。
真っ白に洗いあげられたバスタオルやシャツが手際よく干されていき、少し強めの風に吹かれ翻る。二人は洗濯途中だった。
その中心にいる正臣が、白の中の唯一の蜂蜜色と浮かび上がる。
さらにその後背には新緑。
それぞれの眩しいくらいの情景は、強烈な印象を与えた。
眩しい。
それはまるで、今自分達を照らしている初夏の太陽のように。
「・・・夏、」
「え、なんですか?」
「なんか今の紀田見てると、夏が来た、って感じがする」
そう言って微笑むと、眩んだように目を細めて、正臣の頭をくしゃりと撫でた。
その表情に、仕草に、正臣の頬が少し赤くなる。
そして、恥ずかしげにやや俯きながら、
「静雄さんも、きらきらして、爽やかで、夏っぽいっすよ」
と応えた。
きゅっと、半袖を着ている静雄の細くも逞しい腕にしがみつきながら。
きらきら、きらきら。
鮮やかな情景は、初夏の太陽と呼応して輝いた---
春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山