きいろをめでる

黄瀬、静雄、正臣の黄色い子達を愛でる同人二次創作短編小説中心。本館はAmebaです。

百人一首(2) (静正)

2010-09-17 18:40:40 | 小説―デュラララ
「風強いっすけど、来てよかったですね」
正臣がこちらを見て笑う。
「ああ、そうだな」
乱れる前髪を払いながら、静雄も応えた。


大分暖かくはなったが爽やかな風の吹き込む山のコテージに、二人は旅行へ来ていた。
周りに人影はなく、ただただ森が広がる。


真っ白に洗いあげられたバスタオルやシャツが手際よく干されていき、少し強めの風に吹かれ翻る。二人は洗濯途中だった。
その中心にいる正臣が、白の中の唯一の蜂蜜色と浮かび上がる。
さらにその後背には新緑。
それぞれの眩しいくらいの情景は、強烈な印象を与えた。

眩しい。
それはまるで、今自分達を照らしている初夏の太陽のように。


「・・・夏、」
「え、なんですか?」
「なんか今の紀田見てると、夏が来た、って感じがする」
そう言って微笑むと、眩んだように目を細めて、正臣の頭をくしゃりと撫でた。

その表情に、仕草に、正臣の頬が少し赤くなる。

そして、恥ずかしげにやや俯きながら、
「静雄さんも、きらきらして、爽やかで、夏っぽいっすよ」
と応えた。

きゅっと、半袖を着ている静雄の細くも逞しい腕にしがみつきながら。


きらきら、きらきら。
鮮やかな情景は、初夏の太陽と呼応して輝いた---





春すぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山

百人一首(1) (帝→正)

2010-09-17 11:19:44 | 小説―デュラララ
「帝人・・・・・・俺はこれから休日の街へ行くという用事が」
「どうせナンパでしょ。それよりも、ほんと頼むよ。正臣のがこういうの得意だし、身長も力もあるから」
「ま、いいけどよー」

それから、カンカン、と小気味のよい音が一定のリズムで打たれる。

帝人のアパートはやはり古く、とうとう昨日天井の板が寿命をむかえ、夜中雨漏りをするようになった。
秋雨に打たれ、寝ている間に服が濡れる。畳が濡れる。


「つか、雨漏りすんなら工事してもらえよ。プロに頼めプロに」
「見積もりしてもらったけど・・・到底出せる金額じゃなかった」
「あー・・・・・・でもまぁ、俺が帝人を安眠に導いてやるさ!」
正臣は得意げに、ビシッと帝人を指さした。
「ありがとう、正臣」
指さされた帝人が優しげに微笑むと、正臣も素の笑顔を見せる。
帝人はその瞬間が幸せだった。



「そういやさ、」
「うん?」
「なんで俺?俺よりもこういう作業うまいやついると思うんだけど」
正臣が手を休めずに問う。
帝人は少し逡巡してから答えた。

「正臣なら、やってくれると思って」
「なんだよ俺そういう扱い?」
「責任感があって信頼がおけるってことだよ」
「それならいいや。今度何か奢れよ!工事費よりは格安にしといてやる」
「えぇ!?・・・マックでもいい?」

二人で楽しく笑いながら、たわいのない会話。
それが楽しい。

でも。

(ああ、でも---)



(ただ君に会いたかっただけ、なんて言ったら、僕の気持ちは報われるのかなぁ)





秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露に濡れつつ