
L.M.モンゴメリ作「赤毛のアン」の出版から100年。
100年の間、版を重ねて売れ続け、世界中の人々にインスピレーションを与え続ける「赤毛のアン」は、すごい小説だとあらためて思います。
100年と言ってもその長さを生きてないとあまりピンと来ないのですが、100歳生きる人がいることを思えば、一人の人間の一生分の長さ。それでも人類の歴史の中ではあっという間とも言えるし、過去100年に起こった様々な出来事を思えば、世界が様変わりするのには充分な長さとも言えます。
100年前といえば日本は明治の時代で、カナダはヴィクトリアンの文化、価値観が根強かった頃。その後、2度の世界大戦があり、国境線が変化し、様々な発明があり、人々の生活文化は様変わり。でも相変わらず世界のどこかで今も争いは絶えず、生活様式は変わっても人間自体は大して変わってないのかもなどと思ったり...。
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モントリオールのダウンタウン周辺の住宅地は、ちょうど100年前頃が住宅の建築ラッシュだったようです。地震も本土決戦も経験していないため、街を歩けば100年位前の建物はゴロゴロ。
乗り物が馬車から車に変わったり、新しくコンドミニアムが続々と建設されたり、古い住宅の中身がモダンに改装されても、それでも街の外観は100年前とあまり変わっていません。
↓これはモントリオール独特の、外階段と切り妻のあるテラスハウス式住宅。
モントリオールの街中でアンの初版と同じ年に建てられた建物を探してみましたが、ちょっと惜しいものばかり。左は1909年、右は1905年と、外壁に年号が刻まれています。(ちなみに去年の初冬に撮った写真なので雪はまだありません)
この建物たちのように物質としての形があるものは、頑丈であってもいつか崩れてゆくけれど、優れた本の中に宿った精神は幾世代にも語り継がれて残る。
この辺りに文学の力を感じます。
Report by 藤本紀子