時には目食耳視も悪くない。

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機械との戦い→脂肪との戦い

2017年10月13日 | 漫画
 そう遠くない未来に、機械(人工知能)が人間の仕事を占め、人間は働かなくてもお金を手にすることができる(ベーシックインカム)なんてことが最近言われたりします。

 人間にしかできないことの領域にどうやって踏み込むかというのは、技術開発の一つの目標ではありますが、何でもかんでも機械化してしまうのは、便利である反面、それと引き換えに何かを失っているような気分になるのは私だけでしょうか。

 けれど、もし本当にそんな社会が実現するとすれば、今のように頑張っても就職ができず、努力しているにもかかわらず社会的に蔑まれるという事態に陥る人はいなくなると思われますし、「貧富」に対する人の価値観も変わっていくことでしょう。
 とはいえ、実際はすべての仕事を機械化しても、人手不足は解消されないらしいです。何事も計算通りにはいきませんよね。

 中学生の時に読んだ《火の鳥 未来編》手塚治虫著(1967-68、虫プロ商事)は、コンピューターがすべてを計算し、人間はその結果に従う未来都市のお話です。
 食べる物から付き合う人間関係まで、コンピューターの指示に逆らうことは許されません。
 そして、とうとう、コンピューターは暴走し、人類を滅亡へと導くのです。
 なんとも、空恐ろしい気持ちになりました。

 あくまでも、漫画のお話です。

 機械化された社会になっても、医療や介護といった現場では、どうしても人間が働かなければいけませんし、必ず人間が判断して行動しなければならない分野は必ずあります。
 それに、お隣の中国では機械を使うより、人件費の方が安いので、例えばバイオリンの量産品も機械彫りではなく、人が手で彫っているため仕上がりが良いという話を聞きます。

 もちろん、本場イタリアの職人さんが技術指導をしていることもあってのことだと思いますが。
 お国によっては、人工知能にする方が不都合だったりもするんですね。

 楽器といえば、演奏をするロボットの開発が進められています。
 人体のような細やかな動きをロボットで再現するための試みなので、演奏ロボットを作るのが本来の目的ではありません。

 最終的には、この技術を応用してより精巧な人工関節などを開発し、医療や福祉の現場へ役立てられるものですが、もし、音楽やその他の芸術の現場までも、ロボットにとって代わられたら、人間はいったい何をしたらよいのでしょうか。

 ロボットが作った料理を食べ、ロボットが配信するテレビ番組を見て、ロボットが運転する車で出かけて、ロボットアイドルのライブでデートロボットと盛り上がるなんて…(ちょっと極端ですが)

 いずれにしても、働かなくてもよくなったら、肥満大国まっしぐらのような気がします。

 機械化社会になったら、人間にとっての一番の課題は自分自身の健康管理になりそうですね。
 それもロボットが管理してくれそうですから、未来の人間はロボットを動かすのではなく、ロボットに動かされると言っても過言ではないのかもしれません。

 また、ほとんどの経済活動を人工知能が請け負う社会となれば、小説も漫画も人工知能が書くことになるかもしれません。
 ベーシックインカムが実現すれば、基本的に失業者はいなくなるわけですから、作家さんたちが仕事がなくて生活に困ることはなさそうですが、人間が作る作品の需要がなくなれば、作品を生み出す喜びも奪われてしまいそうです。

 今は、売れることを目指して作品作りをしている側面もあるわけですが、必ずしも売れなくてもいいという状況になった時、果たして今のような多彩な作品が生まれるでしょうか?
 創作分野に限らず、経済力(お金)を手にするということ、いわゆる「なんとかドリーム」を目標に沢山の人が頑張ってきて、結果として日本の文化を豊かにしてきたとも言えるわけですから、その努力の必要がなくなった末の社会がどうなるのか、あまり想像がつきません。

 まあ、そうはならないと思いますけどね…

 いずれにしても、どんなに技術が高度になって、機械化が進んでも、私はやっぱり人間が書き綴った言葉を読みたいです。


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