これは2005年8月20日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSです。
CPはマイナーな「トーマ×アポロニアス」です。※逆CPがメジャーでした。
然もアポロニアスは創られた天翅という俺設定で展開していきます。
腐的表現有りなので、大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。
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<たとえこの手が>
翅なしを収穫獣に追い込む。逆らう翅なしは全て手に掛け殺める。
女、子供、全て関係無く斬り捨てる。
何の感情も湧かない。
それが自分の産まれた意味だから。
自分のレーゾンデートル(存在理由)なのだから。
地に降り、一向に戻って来ないアポロニアスを案じ、部下の制止を振り切ってトーマ自らも地に舞い降りる。
この北の小国を壊滅させるよう、前線指揮官であるトーマ自身がアポロニアスに命じたのだ。
太陽の翼が放った光に、小さな街だった周辺は焦土と化していた。
しかし、アポロニアスの姿は無かった。
街外れの丘にアポロニアスは立っていた。
髪は乱れ翅の所々に切り傷が見える。
その相貌は見えない。
殆んどの翅なしを収穫獣に捕獲し終わった頃、この街を救おうと翅なし達は刃向かって来たのだ。
数々の部下達が人数に任せた翅なし達に倒されていく。
舞い散る翅に、ヨハネスにプログラムされた太陽の翼の能力を発動し始める。
殺戮の天翅と言われる所以。
優しげな風貌は阿修羅の様になり、美しく羽ばたいていた薄紅色の翅は紅く染まり空を斬る刃となる。
その手に握った柄の無い長剣、「天照~あまてらす~」は炎のような熱を放出し始める。
太陽の翼と化し、壊れていく自我にアポロニアスの本来の心が軋み出す。
苦しい。
有り得ない痛み。
しかし、闘いを否定する事は、自分を否定する事なのだ。
アポロニアスは自分を呑み込んでいく紅い奔流に悲鳴をあげながら心を差し出した。
闘いは太陽の翼の力により間も無く終焉を迎えた。
しかし、我に返ったアポロニアスは焼け焦げた大地に膝を付き呆然としていた。
トーマの計らいで制御の首輪、闇の戒めは外されていた。
それから何度目かの闘いからだろうか。
アポロニアスは時折、自分を失う事が多くなった。
自分の意志で太陽の翼としての能力を使ってはいる。
しかし、能力を発動させる際、激しい心の抵抗を感じるようになっていた。
昔はそんな事は無かったのだ。
それは、この殺戮の為の力を遣うのに、何の躊躇いも無かったからだ。
しかし、本来の優しい性格が面に出始めた此処最近は、翅なしを殺めるのに胸を痛めていた。
それは天では分からない、地に降りて闘う身だからこそ分かる事だった。
翅なしにも愛する家族や美しい気持ちがある。
アポロニアスは気付き始めていたのだ。
立ち上がり、血で真っ赤に染まった両手を見下ろす。
創天翅として抱いてはいけない心だった。
翅なしに同情するなど、天翅として有り得ない事だった。
じっとその手を見詰めていると背後に天翅の羽音を感じた。
トーマは血に染まった愛しい男の後姿に魅入っていた。
羽音で自分が来た事は相手に伝わっているだろう。
しかし、アポロニアスは振り向かない。
血で真っ赤になった片手を見詰め力強く拳を握る。
緋色の髪に紅い大きな翼。
夕日の中に逞しい背中が浮かび上がる。
「美しいな、翼」
背中から抱き締めてやると、僅かに肩を揺らしアポロニアスが背中越しに振り向いた。
「私が…か…?」
「翅なしの血に染まった君、翅なしの創りしものを破壊する君、どれも美しいよ」
トーマはアポロニアスの背に顔を埋め、優しく翅にキスをする。
敏感な翅を愛撫され、アポロニアスは「くん」と背を反らす。
しかし、火照り出す身体とは逆に、心は冷めていく気がした。
トーマは「太陽の翼」としての自分を愛しているのかという不安がアポロニアスを支配し始める。
いや、それは分かっていたのだ。
搾取される立場の創天翅の思いなど、聖天翅であるトーマは思いもよらないだろう。
アポロニアスは目を閉じる。
「あぁ…。帰ろう、トーマ。アトランディアへ」
天翅の誰にもこの痛みは理解出来ないし、話す事は出来ない。
しかし、太陽の翼としての力は自分が制御出来るのだ。
プログラムに逆らってでも。
背中から抱き締めてくる白い聖天翅の恋人。
いつか、この血に染まった手が、剣が、君に向くかもしれない。
でも、今はこの思いを封じよう。
切り裂くような胸の痛みにも目を閉じよう。
たとえこの手が君を貫いても今のこの愛は真実なのだから。
アポロニアスは朱色が薄まっていく翅を広げた。
<了>
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主人公のアポロが好きだったのですが、
回を追う毎にアポロニアスの方が好きになってました。
まさか不動司令が転生した姿だとは思っても居ませんでしたが。
アポロニアス、ああいう性格だったのね(笑)