あぽまに@らんだむ

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小さな翅への微笑(ニアス中心)

2020年05月16日 | 創聖のア◇工リ〇ン関係

 

 

これは、2007年11月7日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSの再掲です。

アポロニアス20お題の05.微笑で書いたSSを改訂したものです。

アトランディア時代の翅の生えた天翅犬の設定も俺設定です。ご注意下さい

腐的表現も有りますので、大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<小さな翅への微笑>


小さな翅音が氷のような寒々しい大理石の廊下に響いている。
否、大理石と似通ってはいるが、実際にはその滑らかさと荘厳さは人間界の物とは異なっている。
石自体が発光し、仄かな灯りがその通路を照らしているのだ。
此処はアトランディア。
極北に位置する天翅達の都である。
翅なしと呼ばれる人間の都とは規模が全く違う。
まるで巨人の都と言って良い程大きいのだ。
その廊下を進む小さな影。
その翅音は天翅のものとは違って若干心許ない。
まるで小鳥が発する程の小さい翅音だった。
しかし小鳥との大きな違いは、その生き物が四足で、
まるで人間界にいる仔犬のような容姿をしている事だ。
大きなアーモンド型の目の上に、大きな丸い眉毛の様な点々が有り、とても愛らしい姿をしている。
しかしその仔犬の背には一対の翅が生えているのだ。
その仔犬は天翅犬と呼ばれている。
その小さな翅音はその天翅犬が発するものだった。
しかし小さな翅を羽ばたかせているが、それは形ばかりで、異様な程大きな神話力を発している。
周りに天翅が誰もいない為だ。
大天翅並みの神話力を押さえながら飛行しているのだ。
それは天翅犬達の間では公然の秘密だった。


先程心の声でアーシエとポロンに呼ばれたキリアは、急いで二匹の許へ向かっていた。
二匹とは言え、天翅犬は仔犬と同じ様な容姿をしているが、
実は天翅以上に知性もあり神話力も並外れていた。
しかし、それは老賢翅ヨハネスさえ知らない事だった。
会話は天翅犬同士、心の声のみで行われ、他の天翅には仔犬と同じように振舞っている。
天翅が天翅犬に臨む事は癒し。
天翅犬がアトランディアに存在している理由は天翅達とただ共にいたいからだった。
その全てが今の状況を創り出しているのだ。
アーシエもポロンもキリアと同じ天翅犬である。
彼等の共通の友は、創天翅アポロニアス。
翅なしには殺戮の天翅と恐れられ、同じ天翅からさえ尊敬と畏怖を込めて、「太陽の翼」
と呼ばれる最強の天翅である。
しかし天翅犬三匹に取っては優しい心を持った寂しい天翅だった。
余りにも壮絶な力を持っている為に高天翅から抑圧され、
創天翅である為に孤独を強いられているアポロニアス。
他の天翅と接触する機会さえ与えて貰えない創天翅に、友と呼べるのは天翅犬しか居なかった。
そんなアポロニアスをアーシエもポロンも、そしてキリアも愛した。
彼の見た目は勿論だが、彼の心は透明な湧き水のように、澄み切った青空のように美しい。
アポロニアスと共に居られる事は、彼等に取って何よりの喜びだった。
そんな中、戦の合間にアポロニアスが三匹に逢いに来ていると知らせを聞いて、
キリアは先を急いでいるのである。
早くあの優しい緋色の天翅に逢いたかった。
温かい胸に頬を摺り寄せ、彼に耳の後ろを掻いて欲しかった。


アトランディアから少し離れた処に、皆のお気に入りの丘がある。
短い花の季節は終わりを告げ、所々雪が積もり始めているが、まだ僅かばかり緑が残っている。
花の季節、何度この丘で遊んだ事か数え切れない。
その丘を昇り切ると、深紅の長い髪を靡かせアポロニアスが振り返る。
そしてキリアを見付けると満面の笑顔で微笑んだ。
青年期も既に過ぎた天翅がまるで無邪気な子供の顔になる。
しかしこの笑顔は天翅犬三匹しか知らない笑顔だった。
キリアも嬉しくて千切れんばかりに尾を振りその胸に飛び付む。
その様に、アポロニアスは堪らなくなりキリアを抱き締めるとその頬に自分の頬を摺り寄せた。
キリアは余りもの嬉しさに、プラーナの花の薫りがするアポロニアスの頬を溶かさんばかりに舐め回す。
先に来ていたアーシエとポロンはキリアの甘えっぷりに呆れつつも、
彼の喜びを我が事のように喜び、共に尾を振って二人の周りを飛び回る。
1人の天翅と3匹の天翅犬は、久々の再会を気が済むまで楽しみ、
気が付いた頃には、だいぶ時間が経過してしまっていた。
別れの時間が迫っている。
残った時間は、皆で僅かな草の上に横になり寛ぐ事にした。

「今度、アリシア王国という南の国を攻めに行く」

また暫くの別れだなと寂しそうに笑うアポロニアスに天翅犬達は耳を垂らし「きゅぅ」と鼻を鳴らした。
三匹それぞれの頭を慈しんで撫でてやりながら、
アポロニアスは「私もお前達と別れるのは寂しいのだ」と哀しそうに微笑む。
アポロニアスは創天翅なのだ。
老賢翅ヨハネス自らの手で闘う為に創り出された。
翅なしを狩り、街を焼き払い、逆らう翅なしを殲滅する為の存在。
殺戮の天翅として、翅なしとは言え、数え切れない程の命を葬ってきた。
その事が、この優しい魂にどれだけ心の負担を掛けているのか、
天翅犬達は我が身を引き裂かれる思いだった。
その戦にまた行くというのだ。
行くなという意味でアーシエがアポロニアスの帯を咥え引っ張る。
自分も付いて行くとポロンはその肩に乗り尾を振る。
キリアはその優しい心が少しでも癒されるようにとアポロニアスの太腿に頬を摺り寄せた。

「有難う…お前達…」

アポロニアスは言葉を交わさずとも、天翅犬達の意図を理解し、
紅玉の瞳に青空のような涙を一杯溜めた。
そして天翅犬達はその未来に同じ思いでそれぞれの道を別つ。
しかしいずれの道もアポロニアスを思い、彼が再び微笑む事だけを望んだのだ。
疲れ切った天翅犬達は沈まぬ太陽を眺めながら、暫しの別れを惜しむ。
その傍らには、彼等の愛する緋色の天翅が安心し切った寝顔で束の間の夢を楽しんでいた。

 

<了>


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誰もまさかアポロの過去生がこの天翅犬なんて思わなかったですよね。
私もです。

 

 

 


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