あぽまに@らんだむ

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若き英雄の悩み(セリニアス)

2020年05月13日 | 創聖のア◇工リ〇ン関係

 

 

これは2005年7月27日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSの再掲です。

CPはマイナーな「セリアン×アポロニアス」です。※NCPなので、普通逆ですよね。

然もアポロニアスはセリアンと子供を儲けている俺設定で展開してます。

尚、SS内の男とはピエールの転生前のオリジナルキャラです。これも俺設定です。

腐的表現有りなので、大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。ちと長めです。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

<若き英雄の悩み>


アリシア城、アポロニアスの部屋。
男はアポロニアスに会議に使う書類を持って来たが、声を掛けそびれていた。
正面の扉を驚かせないように、ゆっくりと閉める。
天井まで続く大きな扉はそれでも、重厚な音を立てて閉まった。
アポロニアスはベッドに腰掛けたまま俯いている。
太腿に腕を置いて身体を折り畳むような格好だ。
表情は見えないが、朝から元気が無かったことは知っていた。
近くまで来るといい加減気配を察し、炎のように美しい瞳を向けてくる。
男は苦笑した。

「何を悩んでいる。お前がそうだと仕事が捗らない」

二人きりの時にだけ許された崩した言い方に、アポロニアスは哀しそうに微笑んだ。
彼なりの謝罪なのだろう。
男は先を促す。まるでさっさと悩みを白状しろと言わんばかりだった。
アポロニアスは何故か恥ずかしそうに男をちろっと見ると話し始めた。
今朝の事である。
翅なし、つまり人間の食事は受付ないアポロニアスはセリアンと食事を取ることは無かった。
が、今朝は珍しくセリアンに付き合って欲しいと呼び出されたのだ。
セリアンが食事をし、次にシリウスの授乳をする。
その様子を見ていたアポロニアスにセリアンが切り出した。

「そろそろシリウスを離乳食に切り替えようと思うの」
「り…にゅう…しょく?」
「当分はミルクと併用することになると思うんだけど…その…」
「……??」
「この子は、あなたの血も引いてるでしょう?プラーナも…要るのかしら?」

アポロニアスは固まった。
そうなのだ。
シリウスは背にある小さな翅が示すように、半分は堕天翅族であるアポロニアスの血が流れている。
産まれてから今迄、ヒトと同じようにミルクで育って来たが、
これからヒトと同じく食物を食べ生きるのか、
プラーナを搾取しなければいけなくなってしまうのか、前例が無いだけに分からない。
これは重要な問題だった。

「プラーナしか受付なくなった場合…、あなたは私からあげられるけど…この子は…」

セリアンは一瞬辛そうな表情をするが、すぐに持ち前の明るさで力強く微笑む。
眉を寄せるアポロニアスの頬に手の平を当てると、首をちょこんと傾げた。

「大丈夫。何があっても私が、絶対にあなた達を護るわ」


シリウスがもしプラーナを搾取するしか出来なくなった場合、その背にある薄紅色の翅から搾取する事になる。
しかし、その方法は本来、自分が教え、導いてやるべきなのだ。

「だが…私にはもう…その翅がない」

男は数日も治療に徹したアポロニアスの背を見遣った。
切り裂かれた傷は肉が抉れたまま鍵爪のような痕になっていた。
見ているだけで痛々しい。
昔、戦場で観たこの堕天翅は黄金とも、炎とも見える美しい翅を持っていた。
優に自分の身長よりも大きい翅を羽ばたかせ、矢のように空を駆け巡る姿は、
まだその目に焼き付いている。

「若君がまだ、そうと決まった訳ではないだろう。今迄授乳で育ったのだ。これからも人間と同じく離乳食でいいかもしれないではないか」

戦場ではあんなに勇猛果敢なこの英雄は、何故か家族の事になると途端心配性になる。
優しすぎる故に、色々と考え過ぎてしまうのだろう。
男は書類をサイドテーブルに下ろすとアポロニアスの目の前に跪く。
アポロニアスはそれでも不安そうにルビーのように輝く目を揺らしている。

「実際に、試してみるか?」
「え…?」

現在、シリウスの小さな翅は危険があるといけないので、アポロニアス以外は触れていない。
入浴も全部アポロニアスがして、乾かすのも翅だけはアポロニアスが乾かすのだ。
しかし、今迄何の反応もしなかったのだ。
感覚も堕天翅族と同じ程度に敏感なのか寝る時以外でも余り翅を広げようとしない。
堕天翅族は常に翅を出している訳ではない。
搾取する場合や神話力を遣うときにだけ広げる天翅が殆んどだ。
創天翅である為、アポロニアスは常に翅を出しているように教育されていたが、
自分の意志で出したままにしている天翅も少なくない。
シリウスはプラーナを搾取するのか。
アポロニアスは居ても立っても居られなくなる。
男は苦笑して会議の時間を遅らせるしかないかと算段する。
数十分後、2人は乳母達に預けられているシリウスの元に向かうことにした。


アポロニアスは蒼い髪の男を引き連れ、シリウスのいる子供部屋へやって来た。
普段はセリアンが公務、アポロニアスが剣の稽古や会議をしている間、
この子供部屋で終始乳母や女官が入れ替わりで面倒を見て居る。
セリアンは授乳の時間は何があっても駆け付けるので、
シリウスはストレスもなく健やかに育っていた。
余暇が出来るとすぐにこの部屋を訪れるアポロニアスに最初は警戒していたものの、女達は勘のいいもの。
すぐにアポロニアスの気質を理解し、挨拶をし歓迎するまでになっていた。
男は女達に囲まれ戸惑うアポロニアスに隠れて失笑した。

「女官たち、今日は内密に若君を検査をしたい。人払いを頼む」

いつまで経ってもアポロニアスに群がる女達を見兼ねて、男が助け舟を出す。
既に退室している乳母たちを追うように、女官たちも次々と礼をして部屋を出ていく。
アポロニアスはその場で肩を落としていた。

「ヒトの女性は…何というか…情熱的だな。いつまで経っても、な…慣れない…」

必死に笑いを堪えている男に気付き、アポロニアスは頬を染めて憤慨している。
更に男は笑う。暫く子供部屋に笑いが響いていた。


「そう言えば、アポロニアス。お前は翅が無いのに、どうやってプラーナを搾取しているんだ。堕天翅は翅から吸収するんだろう」

男はさらりと聞いてくる。
アポロニアスは暫く男を凝視していたが、途端顔が真っ赤になる。
男は何故そこで照れるのか分からず、黙ってアポロニアスを観た。

「わ…私には…セリアンがくれる…」

しどろもどろに説明し出すが、途中で止まってしまう。
どうやら言いかねているらしい。男は眉を寄せ続きを促してくる。
アポロニアスは恥ずかしいのか、目をぎゅっと瞑り、男を見ないようにしてから囁いた。

「ね…粘膜から…直接…吸収…する…のだ」

粘膜。男は理解した。粘膜とは口、そして性器、直腸のことだ。
つまり、性交で搾取しているということなのだ。
奥手なアポロニアスには言い出し難かっただろう。

「では、若君にディープキスをして試してみるしかないな」
「なっ!!」

アポロニアスは硬直したまま動かない。
口をぽかっと開けたまま、だらだらと汗を掻いているようだ。
きっとグルグル考えてしまっているに違いない。
男は溜息を吐くと胡乱下にアポロニアスを見遣る。
会議は間近だ。時間は節約したい。

「お前がするか?」
「わ…私は父親だぞ?」
「じゃぁ、俺がするか?」
「駄目だ!」

どうすればいいんだと男はアポロニアスを睨み付けてくる。
呆れているのは分かっている。でも、大事な一人息子の事なのだ。
早くプラーナを搾取してしまうか否かを把握し、その対策を決めねばならない。
セリアンにこれ以上負担を掛けさせられない。
他の人間のプラーナを搾取させる訳にもいかない。
これは自分とシリウスだけの問題なのだ。
自分が背負わなければならない、アポロニアスは一人考え込む。
しかし、男はすぐに分かってしまう。

「また、変な事考えているだろう?何のために俺が一緒に来たんだ。
一人で完結するな。俺にちゃんと言え」

腕を痛いくらいに捕まれ、叱咤される。
何度、この言葉に救われてきただろう。
アポロニアスは泣きそうな顔になる。
男の肩に額を付け縋るように身を寄せる。

「…もし…そうだった場合、…プラーナは私が与える。
…翅から吸収させる方法は…私が何とか教える」


子供部屋のドアが突如開いた。
人払いをしてあるのに、此処に出入りできる人物は1人しかいない。
王妃、セリアンは身を寄せ合う2人を見て悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「あら。タイミング悪かったかしら」

意味を理解したアポロニアスは真っ赤になる。
男は額に手を当て、王妃に批難めいた目を向けた。
セリアンは悪びれた様子もなくシリウスのベッドに向かった。

「アポロニアス。朝話した事だけど」

2人は緊張してわが主君を見詰める。
男は席を外すべきか迷っている内にセリアンは言葉を続けた。

「離乳食を始めてみて、それでプラーナを搾取し始めちゃったら、その時考えましょう」

ね?とにっこり微笑んでくるセリアンに男2人はぽかんと見返すしか無かった。

「城のもの、皆に理解させるのは難しいかもしれない。でも私、頑張るから」

毅然とした表情でセリアンは言い切る。
いつ、シリウスに搾取されるか分からないリスクを城の全員に理解して貰うのは並大抵の努力では無い。
それをやるというのだ。
自分はこの強さに惹かれたのだ。アポロニアスは微笑むしかなかった。
男も肩を竦め、呟く。

「誰が言ったのか…。女は強しってな」

程無くシリウスが目覚め、お腹が空いたとぐずり始める。
セリアンは用意してきた離乳食をサイドテーブルに広げ、男2人にキビキビと指示を出した。


<了>

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実はセリアンの尻に敷かれているアポロニアスが好きです。

奥さんに弱い大きな男の人が好きです。

 

 

 


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