あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

希望たる藤色の夜明け(SQ)

2007年11月22日 | 世界樹の迷宮関連


25階のネタバレありのSSです。ずっと前から書いているメンバーの話。
ギルドメンバーは以下です。



アシュトレイ
<主要メンバー>
アディール♂(ソードマン赤髪・薄蒼眼)/LV60(2回休養)
シャス♀(メディック橙髪おかっぱ・灰緑眼)/LV69(1回休養)
シェラザード♂(レンジャー蒼髪・灰眼)/LV62(1回休養)
リュサイア♂(アルケミスト白金髪・薄青眼)/LV66(1回休養)
リュシロイ♂(パラディン金髪・濃蒼眼)/LV69(1回休養)

<待機メンバー>
ユイノ♀(ブシドー茶髪おかっぱ・金眼)/LV21
ヴェスティン♀(ダークハンター金髪・碧眼)/LV48
アシュリー♂(バード銀髪・緑眼)/LV54
キャスヴァル♂(カースメーカー灰金の髪・紅い目)/LV29
イヴァンチェ♀(ダークハンターピンク髪・紫眼)LV不明
ラザフォード♂(ダークハンター白髪・金眼)LV不明
エドヴァルド♂(メディック チョコレート色の髪・紫眼)シェリーとCP/LV26

<作成予定メンバー>
アリステア♂(ソードマン 薄紫の髪・橙眼)ケフト施薬院のキタザキ先生(ヒゲ眼鏡のナイスミドル)にチョッカイを出している。どうやら一目惚れらしい(笑)
ミルフィリア♀(アルケミスト 黒髪・灰眼・両性具有なんて/ぁ)リュシィが氷と雷が得意なので、炎と毒専用になって貰いたい。誰かとくっ付くかも。


大丈夫な方は下へスクロールして御覧下さい。↓↓↓↓
















<希望たる藤色の夜明け>



色とりどりの花の舞う、朽ち果てる寸前のような大広間にそれは居た。大樹に埋め込まれた時を越えた死者。

「来る…。最初は手筈通りだ。行くぞ!皆!」

パーティリーダー、リュシロイの呼び掛けにメンバー4人は大声で応えた。
襲い掛かる世界樹の王に一同は狙い撃ちされないように離散した。
素早さの行動順にメンバーが技を掛けていく。
先ずは素早さが敵より早いレンジャーのシェラザードがシャスにアザーステップを掛ける。
行動順が強制的に1番になったシャスは医療防御を全員に掛けた。
次にバードのアシュリーが猛き戦いの舞曲を弾き、皆に攻撃力強化の補助をする。
其処で世界樹の王は速攻でサイクロンルーツと呼ぶ全体魔法を放ってきた。
切り裂くかのような空気の渦に、HPの少ないアシュリーは壁に跳ね飛ばされ動かなくなった。
シャスの悲痛な叫び声に、ソードマンのアディールは怒りの一撃、レイジングエッジを唱え、大きく斬り掛かった。
リュシロイは残った全員に防御陣形を張り、最初のターンが終了する。
しかしまだ一撃しかダメージを与えていない。
リュシロイは自分の身長と同じ位大きい盾を抱え直すと、シールドスマイトを繰り出す為、二の腕に力を込めた。
再度シェラザードがシャスにアザーステップを掛ける。
シャスは弾き飛ばされたまま動かないアシュリーを気にしながらも、皆にエリアキュア2で全体回復を唱える。
それで全員のダメージは全回復される。
大声で気合を入れるアディールが再度レイジングエッジを撃ち込む為、身を低くして構える。
しかし世界樹の王は千樹の守りを唱え、絶対防御を始めてしまう。しかし踏み込んだアディールとリュシロイには遅かった。
金属が跳ね返される鈍い音が響き渡り、アタッカーの2人はギリリと歯を鳴らした。
シャスがアシュリーに駆け寄り、急いで蘇生の魔法、リザレクションを唱える。
しかし、世界樹の王は無情にも再度サイクロンルーツを唱えたのだ。
生き返ったばかりのアシュリー毎、シャスは壁に撃ち付けられ、息を詰まらせる。アシュリーはまた即死していた。
倒れ込んだシャスの胸元から、灰緑色の石が零れ落ちる。
それは此処にいない大切な人からの贈り物だった。サイクロンルーツをもう一度放たれれば、皆死んでしまう。
シャスは再度エリアキュア2を唱える準備に掛かった。
脚や肘から血が滲む。皆、突風に切り刻まれ血だらけだった。恐怖に涙が溢れて来る。

「…怖いよ…、リュシィ…。こんなの勝てないよ…」

シャスは震える膝で必死に立ち上がりながら、シェラザードのアザーステップを待った。





決戦前日、ギルド『アシュトレイ』の面々は、ギルドマスターのエドヴァルドの常駐している酒屋の一室に集まっていた。
集まったのはリュシロイのパーティとエドヴァルドのパーティ、後はパーティに参加はしていないが、臨時として入るメンバーだった。
すっかり自室と言っていい程室内を改造してしまっている為、酒場の部屋と思えない程になっている。
実質、此処はギルド『アシュトレイ』の執務室だった。黒く光る机に座りエドヴァルドは室内のメンバーを見渡した。
皆、緊張しているのがひしひしと伝わってくる。
その割りには、場は騒然としていた。皆何か話していないと場が保たないのだろう。
机の横に側近のように立つ妖艶な美女ヴェスティンが、小さく嘆息すると凛とした声で静粛にと伝える。

「明日、25階のあの部屋へ向かって貰う。そのパーティメンバーを発表する」

エドヴァルドの心地良いテナーの声に皆は息を呑んだ。エドヴァルドは菫色の瞳をすっと細める。

「まず、パーティリーダーには、パラディンのリュシロイ。リーダー補佐はレンジャーのシェラザード。アタッカーはソードマンのアディール。回復役はメディックのシャス…」

選ばれたメンバーは、殆んどがリュシロイのパーティメンバーだった。一度に行けるメンバーは5人が限界とされている。
狭い世界樹の迷宮では戦闘で身動き出来る人数が限られてしまっているのだ。
パーティ全員が残る5人目はアルケミストのリュサイアと思っていたし、リュサイア自体もそう思っていた。しかし…。

「最後にパーティ補助にバードのアシュリー。以上だ」

その場にいる全員が息を呑んでリュサイアを観た。リュサイアは大きく目を見開いたまま硬直している。
そして、皆の視線は自然と銀髪のバード、アシュリーに移る。
アシュリー自身も自分の名が呼ばれるとは思っていなかった為、暫くぽかんとしていた。
それが皆の視線を浴び、吃驚して大声で叫んだ。

「オレですか!?そっ…そんな…心の準備が…!」
「今夜中に心の準備もしておいてくれ。リュシロイのパーティとは何度も潜っているだろう?以上、解散」

エドヴァルドの解散は、もう話は無いという合図だ。皆、緊張の糸が切れたかのように脱力し、思い思いに話しながら退室していく。
しかしその背にエドヴァルドは声を掛けた。

「呼ばれたメンバーは残るように。そしてリュシィ。君もだ」

唇を噛み締めたまま黙り込んでいるシャスとリュサイアにエドヴァルドは微苦笑した。





ギルドメンバー全員が退室し、部屋には最終パーティメンバーと、エドヴァルドとヴェスティン、そしてアルケミストのリュサイアだけが残った。
最初に声を発したのは、バードのアシュリーだった。

「エド、皆思っていると思う。何でリュシィじゃなくてオレなのか。ちゃんと説明してくれ」

本来、公式の場以外ではエドヴァルドは友好的に話すのを望んだ。
その為、皆非公式な場では、エドヴァルドを友として接した。戦闘の場では尚更である。

「裏情報では既に2桁以上のパーティが挑み、帰って来たのは命からがら戻って来た数人という話だ」
「そんな!あの扉は私達が見付けたんですよ?扉を開く鍵もない筈!」

パーティリーダーであるパラディンのリュシロイが憤慨する。
確かに最初に25階に辿り着いたのは、リュシロイ達、彼等のパーティなのだ。エドヴァルドは続ける。

「噂では呼び寄せるかのように、開いたそうだ。まぁ、噂だから宛にはならないが。本題に戻ろう」

その場にいる皆がエドヴァルドを見詰める。シャスだけがじっと睨み付けるかのように床を凝視していた。

「最後の敵は一回の攻撃でかなりのダメージがあるそうだ。それに自ら回復する技さえあるという」
「それを…オレの曲で打ち消すって事か…」

エドヴァルドは深刻な顔のまま頷く。隣のヴェスティンは眉を潜めたままシャスを労るように見詰めている。

「お前のHPでは敵の攻撃に耐えられないだろうが、今のシャスなら何度でも蘇生出来る」

そして皆の視線がエドヴァルドからシャスに移る。そこで皆はシャスが唇を噛み切って血を滲ませているのに気付いた。
レンジャーのシェラザードが心配して傍らから覗き込む。

「…んで、」

呻くような声だった。明るく、皆の気持ちが和むようないつものシャスの声と違う異質な声。皆は目を見張る。

「何で…!…何でリュシィじゃないの!?ずっと一緒だった!私達5人で、ずっと頑張って来た!それなのに…!何で…!?何でリュシィじゃ駄目なの!?」

温和な普段のシャスと同一人物とは思えない程の激情だった。ぶつけられたエドヴァルドさえ、絶句しシャスを凝視するしかない。
しかし、皆、分かっているのだ。叫んでいるシャスでさえ。「何で」と連呼し泣き叫ぶシャスが痛々しくて皆、目を背けた。

「いい。シャス。…もう、いいんだ」

それまで黙り込んでいたアルケミストのリュサイアがシャスの前に進み出て、顔を覗き込む。
涙で顔をぐしゃぐしゃにしたままのシャスは恥ずかしくて真っ赤になった。
そんな様を見て、普段無表情なリュサイアが柔らかく微笑んだ。
そんな顔を見たのは双子の兄であるパラディンのリュシロイさえ、数える程しかないのだ。
シェラザードが驚いて「お」とひやかす。シャスの怒りが次第に沈まっていくのが分かる。

「リュシィ…?」

シャスが涙を拭いながら名を呼ぶ。リュサイアは大きく頷くとエドヴァルドに向き直った。

「僕でも敵の攻撃に耐えられないのは分かっている。それに…アッシュの沈静なる奇想曲が必要なのも分かった。だから、決戦メンバーに異議を唱える気はない」

リュサイアは呟くような声でエドヴァルドに申告する。エドヴァルドは顔を引き締め頷いた。

「うむ。それでは皆、頼んだぞ。そして必ず帰って来てくれ」

一同は解散となった。退室する際、アシュリーがリュサイアの肩に手を置き、そっと囁く。

「お前の分まで闘ってくる。任せておけ」

アシュリーの真摯な瞳にリュサイアはそっと頷く。その2人を抱き込めるかのようにシェラザードが飛び付いてくる。
3人でよろめくが残りの2人も飛び付いて来たので、男達は揉みくちゃになる。

「シャスには俺達4人が付いてるんだ。お前は昼寝でもして待ってろ!」
「シェリーさん…。皆……」

シャスが零れる涙を何度も拭いながら傍らのヴェスティンに凭れ掛かる。
酒場の廊下を騒ぎながら去っていく一同をドアから見送りながら、エドヴァルドが囁く。
しかしそれは小さくて声にはならなかった。





銀の月ワレイオが輝く丘の上に、シャスとリュサイアが座っている。2人はずっと黙ったままだった。
月が真上から傾き掛けた頃、やっとリュサイアが身動ぎした。
その手にはシャスの灰緑瞳と同じ色の小さな石のペンダントが光っていた。シャスはリュサイアを見上げる。

「これをやる」

相変わらず無骨な言い方だった。しかしシャスには分かっている。
一緒に行けないなら共に行ける物となり自分を護るとその蒼い瞳が物語っていたからだ。
そっと壊れ物を扱うかのように、シャスの首に掛けてやると、また先程と同じ微笑を浮かべてくれる。
シャスは今が夜で良かったと思った。そうじゃないとトマトのように真っ赤になった自分を見られてしまうからだ。
リュサイアはどぎまぎしているシャスにもう一度微笑んだ。

「また此処で逢おう」

シャスは小さく頷くと薄っすらと涙を浮かべた。決戦の時に彼が傍に居ないと考えるだけで心が震えた。
しかし一度自分で決めた事を覆すのは、決戦メンバーに選ばれなかった彼にも失礼だと思った。
世界樹の謎を解き明かす。
シャスの夢は、いつしか皆の目標になった。それを考えるとリュサイアの無念を痛感した。

「行って来ます」

シャスは力強く立ち上がると、優しい目をしたリュサイアの手を握り、いつもの明るい笑顔を見せた。





少しずつ少しずつパーティは世界樹の王にダメージを加えていった。
何度もサイクロンルーツやサウザンドネイルを喰らおうとも、シャスが瞬時に回復してくれた。
リュシロイは攻撃と防御陣形を繰り返し、シャスも隙有らば医療防御を張り、シェラザードのファストステップと合わせて、敵の「王の威厳」を誘発させた。

「後少し…。後少しだぞ。皆、踏ん張れ!」

リュシロイの激励に、皆、必死に立ち上がる。
しかし世界樹の王は身の危険を感じたのか、自己回復エタニティツリーを発動する。
1ターン毎にみるみる回復していく敵に皆慌てた。これが裏情報の回復技なのだと否応が無く思い知らされる。
折角蓄積してきたダメージが水の泡になってしまう。リュシロイが叫んだ。

「アシュリーを生き返らせろ!沈静なる奇想曲を!!シェリー!ネクタル3だ!シャスは変わらずエリアキュア2で全体回復をしてくれ!アディが危ない!」

シャスが呪文を唱え始める。しかし意識集中している傍らでアディールの悲鳴が響き渡る。
個人集中の連続攻撃を受け、保ち堪えられなかったのだ。シャスは震える手をそっと胸元に遣った。
リュサイアがくれたペンダント。それは石なのに、何故か温かかった。

「リュシィ……」

自分の体温より遥かに温かい石は更に温度を増し、熱いと思う程緑色に輝き始める。
シャスは其処からリュサイアの声が聞こえてくるような気がした。低いが人を安心させるテナーの声。
「大丈夫だ。君なら出来る」シャスはペンダントがそう言っている気がした。怖い。恐ろしい。でも自分は一人ではない。
シャスはエリアキュア2の全体回復魔法を唱え終わった。
アシュリーがシェラザードのネクタル3で全快で立ち上がると、沈静なる奇想曲を弾き始める。
それによって世界樹の王のエタニティツリーは無効化される。パーティ全員が歓声を上げた。
シャスもふら付きながら立ち上がる。そう、諦めない。自分は来れなかった人の分まで闘うのだ。





夜の蒼と朝日の赤が混じり合い、空は紫色に染まっていた。もうすぐ夜明けなのだ。
ボロボロになりながらパーティ全員はエトリアの街に戻って来た。
人っ子一人居ない筈の街にギルドマスターのエドヴァルド他、ギルドメンバー全員が出迎えてくれていた。
しかし、其処にシャスの探す人物は見当たらない。そっと労るようにシャスの肩に手が置かれる。
パーティメンバーの相談役である年長者のシェラザードだった。

「行っておいで」

華麗にウィンクをする兄代わりのレンジャーにシャスは大きく頷くと皆とは反対方向へ駆け出した。
エドヴァルドは駆け出すシャスに一瞬目を見張るが、妹を嫁に出すような心境に自嘲した。隣でヴェスティンが笑う。
弾む息は苦しくて1日掛かりの冒険の疲労ですぐにでも倒れそうなのに、シャスは走る。
藤色に染まるあの丘へ。愛しい人の待つ、あの丘へ。



<了>
















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