あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

地の底に吹く春の風(SQ)

2007年02月22日 | 世界樹の迷宮関連






















<地の底に吹く春の風>



第二階層まで進むと敵は急に強くなった。f.o.eは全体攻撃までしてくるものまで出て来た。
然もうっかり遭遇してしまうと逃げられないf.o.eまで居るのだ。
レベルを上げ少しはスキルを上げていた為に、寸での処で全滅は間逃れたが、第二階層初めの階である地下七階から地下八階に降りるまでは、当分レベルを上げ、スキルを取得しないと無理だと皆、痛感していた。
小さな小部屋になっている地下七階のダンジョンの中、小さな焚き火を囲んで皆で遅い昼食を採る。
今迄スキルポイントを溜め、やっとスキル技を取得し始めたアディールはボス戦やf.o.e相手に大活躍していた。
新しく出た剣は一番攻撃力のある彼に渡され、ソードマンの名に相応しい働きをした。
それまで地道にスキルポイントが溜まるまで我慢して来た甲斐があったと嬉しそうに「はにかむ」顔はまだ少年のようだ。
しかし斬り込み役として後衛の三人を庇うリュシロイを背後に回し、敵に飛び込んでいく姿は同性である3人の目にも頼もしく見えた。
これが少女であるシャスからすれば憧れの対象になるだろう。
しかし、まるで小学生のような間柄の二人は掌ほどのカブトムシを見付けた話で盛り上がっている。
リュシロイは大きな溜息を吐いた。

「もうすぐレベルが上がる頃だが、皆は何のスキルを取得目標にしているんだい?」

一人ずつこれから必要であるスキル技名を上げて、後どれ位で取得出来るかを皆に報告していく。
また次回レベル上げで取得出来るだろうスキル技を教え、これからの戦闘で取れる戦法を話し合った。

「次回、私は挑発を覚えようと思う」

リュシロイの言葉に皆が彼を凝視する。挑発は敵の攻撃を一身に受けるスキル技である。
防御スキルメインであるパラディンのリュシロイは、アディールのような攻撃スキル技が無い。
攻撃は通常攻撃しか出来ず、皆の防御を主に担当して全体的に怪我の無いよう、死者の出ないよう考える役目だ。
挑発のスキル技は敵の攻撃が集中する。だから覚えるなら自己防御のスキル技が確定してからの話だ。
パーティのお目付け役でもあるシェラザードが仕方無いと言わんばかりに大きな溜息を吐いた。

「まずは防御のスキル技を網羅して、HPもバカスカ上げて完璧になったら覚えろ。今はその時期じゃない」
「フロントガードで俺と分担すれば、今のトコ問題ないだろ?」

アディールも口の周りを肉の汁だらけにしながら、心配してくる。リュサイアもいつもらしからぬ兄の発言に無言で警戒を示している。
シャスは何故か頬を膨らましていた。リュシロイが驚いて彼女を見る。

「リュシロイさんは、そうやって自分だけ攻撃を受けて傷付いて死んじゃった後の事、考えてます?」

小柄な身体でも下から上目遣いで睨み付けてくるシャスにリュシロイは戸惑いを隠せない。

「君は次のレベル上げでリザレクションを覚えられそうなんだろう?君が居れば生き返らせて貰える」

シャスはリュシロイの言葉に最初は真っ青になり、その後、火のように真っ赤になる。明らかに怒っていた。
シェラザードは呆れたように顔を手で覆い目を隠してしまう。アディールも「鈍感…」と囁く。
リュサイアに至っては、目が点になっている。双子の兄の暴言にショックを受けたのだろう。気の毒な話である。

「私達を庇ってリュシロイさんが死んじゃうなんて…!それがもし他のパーティメンバーならあなたはどう思うんですか?罪悪感…湧かないんですか!?私…私、皆が死んでもいいようにリザレクションを覚えようと必死になって来た訳じゃありません!私は…皆を…」

そこでシャスは感極まって泣き出してしまう。
大きな金色の瞳に大粒の涙を浮かべ、唇を噛み締めるが堪え切れず桃色の頬を濡らしていく。そ
こでリュシロイはやっと皆が何故腹を立てているのか気付く。
自分は以前のシャスのように自分がパーティメンバーに対して役に立っていないのではと自信喪失し、周りが見えなくなっていたのだ。
挑発をする事によって皆を敵の攻撃から護る。
実力のまだ無いリュシロイには、それはただの自己満足でしかない事に、今更ながら気付く。

「私が悪かった。許して欲しいシャス。そして皆。シェリーの言う通り、まずは自分を防御出来るようスキル技を充実させる。そこで自信がついたらまた相談して決めるよ。それに…」

涙に頬を濡らすシャスに綺麗な花の刺繍のついたハンカチを差し出すとリュシロイは微笑んだ。

「君がリザレクションを覚えようと必死になってくれてたのは…皆を護りたい。私と同じ気持ちからなんだろう。有難う。シャス」

シェラザードが軽くゲンコツをリュシロイにお見舞いすると、アディールが焼けた肉の残りを差し出して来る。
双子の弟であるリュサイアは目を閉じ僅かに吐息を漏らす。
そして先程まで泣いていたシャスが春の風のように微笑むとパーティはいつもの和やかな雰囲気に戻るのだった。
地下八階はもうすぐである。




<了>















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