あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

世界中の誰からも(ニアス中心)

2020年05月16日 | 創聖のア◇工リ〇ン関係

 

 

これは、2007年3月15日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSの再掲です。

俺設定でピエールの過去生を「ナイトシェード」と言う仮の名の蒼い髪の剣士にしてます。

アポロニアスにアリシア城の人がベタ甘な設定になってます。

大丈夫な方は下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

<世界中の誰からも>


「アポロニアス様。このタオルで汗をお拭き下さい」
「お水をお持ちしました。どうぞ」
「アポロニアス様。お腹空きませんか?桃を剥いてきました」

新米騎士の訓練に顔を出すように依頼されたアポロニアスは、訓練が終わった後、
新米女騎士達に囲まれてしまっていた。
翅が無いとは言え、自分は人間達にとって堕天翅なのだ。
城に上がったばかりの新米騎士達には、怖がられているだろうと危惧していたアポロニアスは、
すっかり面食らってしまい、まともに受け答えが出来ていない。
タオルやグラスや器を差し出され、どう対応していいのか分からず、おろおろと狼狽している。
殺戮の天翅と呼ばれ、翅なし、詰まり人間達に恐れられていた堕天翅アポロニアスは、
アリシア城の人間達に今ではすっかり受け入れられていた。
美しい容姿が一番だが寧ろ、その優しさと不器用さに惹かれ、老若男女問わず愛されている。
それが若い乙女達となれば、熱烈にもなるだろう。
一歩引いた状態で傍観していた騎士ナイトシェードは、横に控えていた近衛隊長に責められる。

「いい加減助けてお遣りなさい。それじゃなくても人間の女性は苦手と聞いています。
可哀相でしょう」

ナイトシェードは意地悪そうに笑うと肩を竦ませる。
最近、アポロニアスは外交ばかりで気疲れさせてしまっていた。
今回の新米騎士の訓練参観も最初は断るつもりだった。
しかしいい気分転換になるかもしれないとスケジュールを空けて連れて来たのだった。
外国の外交官の年寄りや政治家ばかりの中、気を遣わせ、嫌な思いも沢山させてしまった。
アリシア城の人間はアポロニアスを受け入れ、今では誰もが彼を愛している。
しかし他の国の人間達はアポロニアスを良く思っていない者も少なくない。
今でも彼が人間を裏切り、堕天翅族に戻るつもりかもしれないと疑っている者もいる。
それ処か、元々彼が堕天翅のスパイなのではないかと疑う者までいるのだ。
それは哀しい事実だが、アポロニアスは一度は裏切った身だからと真正面からその批難を受け止めていた。
信じて貰うには闘うしかないとアポロニアスは思っている。
ナイトシェードはそう感じていた。

「アポロニアス様、午後からは会議です。その前に昼食をお採り下さい」

大きな声で声を掛けると、賢明な新米女騎士達は身分をわきまえ、一礼すると彼を解放した。
対応には困ったものの新米女騎士達の全面的な好意にアポロニアスは随分元気を貰ったかのようだった。
揉みくちゃにされ、少し足許は覚束無い様子だが、真っ直ぐナイトシェードの許に戻って来た。

「意地悪だな。君は。もっと早く助けてくれてもいいだろう」

無理矢理押し付けられたのだろう、桃が入った器などを抱え持ってナイトシェードを恨めしげに睨み上げて来る。
その顔はすっかり紅潮していて充分艶っぽかった。
ナイトシェードはその子供のような言い分に噴出す。

「いい大人なのですから、ご自分で対応して下さい。其処まで面倒見切れません」

ついとそっぽを向いてしまうと、図星を言い当てられた子供のように、
真っ赤になるアポロニアスにナイトシェードは「苛め過ぎた」と内心焦る。
横で近衛隊長が天を仰ぎ見て額に手を遣った。
そしてナイトシェードは周囲からの突き刺すような視線に気付き声を呑む。

「あぁ!シェード様がアポロニアス様を泣かせてる!」
「酷い!アポロニアス様…お可哀相…!」
「シェード様!アポロニアス様に意地悪言わないで下さい!」

案の定、涙ぐむアポロニアスを見てしまった新米女騎士達は批難を始める。
ナイトシェードは「一体誰のせいでこうなっていると思っているんだ…」
と愚痴を言いたかったが、ぐっと堪える。
涙ぐんでしまったアポロニアスは恥ずかしさから口許に手を当て更に真っ赤になっている。
後少しで神話力さえ遣って逃げ去ってしまうだろう。
ナイトシェードは新米女騎士達に適当に詫びを入れ、アポロニアスの手を引っ掴むと、
苦笑いしている近衛隊長に簡単に挨拶を述べ、訓練場から逃げ出した。


「機嫌を直してくれ。俺が悪かった」

自室に戻ってくると、アポロニアスはベッドに潜り込み、頭から布団を被ってしまった。
顔を見せてもくれない主人にナイトシェードは頭を抱える。
しかし、此処までアポロニアスが感情を表に出すのは初めてだったので、ナイトシェードは少し嬉しかった。
甘え下手でいつも我慢してしまうアポロニアス。
外交の間でも時折辛そうな顔をしていたのを知っている。
しかし交渉相手と会談する際には億尾にも出さず淡々と激務をこなしていた。
根が真面目なだけに加減というのも出来ない性分なのだろう。
その為、発散や気分転換の場を作って遣らないといけないとナイトシェードは前々から思っていたのだ。

「午後から会議というのは嘘だ」

ベッドの横に腰掛け、耳元で囁いてやると布団で隠れた肩が僅かに揺れたのが分かった。

「最近、遠乗りしてなかっただろう?夕刻まで弁当を持って遠乗りしないか?」

アポロニアスは少し考えてから、呟くように答えた。

「……君と二人でか?」

ナイトシェードは甘やかすように低く「あぁ」と答える。
布団が盛り上がり、眠り姫が顔を出した。
ナイトシェードからまだ視線を外し、恥ずかしそうに頬を染めている姿は堕天翅などには絶対に見えなかった。

「ならば…許そう」

ナイトシェードは噴出したいのを必死に堪え、先程貰った桃をデザートに調理して貰ったと付け加えた。
愛らしい主人は嬉しそうに微笑んで、更に騎士を喜ばせた。
世界中の人間が彼を信じなくても、世界中の人間が彼を憎もうとも、
自分だけはこの寂しい魂を裏切るまい。
優しい天翅を護り尽くそう。
ナイトシェードは思いを新たにする。
しかし、アポロニアスが来た当初とは違って今はアリシア城の人間、皆がアポロニアスを愛している。
それだけが救いだとナイトシェードは思うのだった。


<了>


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大きい人が可愛らしいのが好きです。

 

 

 

 


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