あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

その絆だけを頼りに(セリニアス)

2020年05月15日 | 創聖のア◇工リ〇ン関係

 

 

これは、2005年7月28日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSの再掲です。

皇国などの設定は全て俺設定ですが、人間の同盟はあったと思います。

人間VSアトランディアだったので、こういう事が遭ったのではとの妄想です。

蒼い髪の剣士も俺設定ですので、ピエールがその転生だと妄想して下さい。

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。

↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

<その絆だけを頼りに>


医療部隊の隊長でもあるナイトシェードの医療技術のお陰で生命の危機は脱したものの、
セリアンの状態はまだ油断は出来ない状態にあった。
アポロニアスは泣き疲れて眠ってしまったシリウスを乳母達に預け、
ナイトシェードに付きっ切りでセリアンの治療に当たるように指示する。
セリアン以上に顔色の悪いアポロニアスを心配し、剣士は薬湯を手渡した。
部屋を出た途端、兵士が伝令を持ってくる。
現在の指揮官は自分なのだ。
アポロニアスは書状を受け取り、そのまま倒れてしまいそうな程驚く。
それは強国シュタイゲンの同盟国参加を拒否する内容だったのだ。
大陸の西を代表するアリシア王国と並んで、皇国シュタイゲンは東を代表する都市国家である。
アリシア王家と同規模の軍事力を誇り、劣勢な人間国家の中であっても、
堕天翅族の襲撃から、何とか独自で国を護りきっていた。
しかし、国の殆んどを焦土とされ、飢えた国民を制しきれず、同盟が手を差し伸べたのだ。
同盟国から何度か食料が送られ、同盟参加を提案した結果だったのだ。
しかし、書状はもう一通あった。
自分宛なのだ。
アポロニアスは不審に思いつつも、部屋に戻ってから、開いた。
そこにはある条件を呑むならば、同盟に参加するとあった。
皇国シュタイゲンが同盟に参加してくれれば、
あの国にしかない貴重な鉱石でアクエリオンは更に有効な闘いが出来るようになる。
技術者も沢山いるに違いない。
しかし、この書状は内密であることも条件にあったのだ。
アポロニアスは一人、部屋に佇むしかなかった。


ナイトシェードは次々と医療兵士に指示し、セリアンを安定した状態にまで漕ぎ着けた。
既にあれから1日近い時間が経っていた。
夜明けが近い。
医療部隊副隊長に促され、ナイトシェードは自室に戻って来た。
アポロニアスはどうしているのか気になったが、時間が時間だ。
堕天翅は眠ることがないとは言え、休んでいるかと思い扉を叩くのを止めた。
しかし、剣士も慣れたもの、暫くすると部屋に人の気配が無い事に気付く。
重い扉を開くと、予想通りアポロニアスは居なかった。
陽も登っていない今、自室に居ないとは問題である。
セリアン王妃が居ない今、アリシア王家の君主、人間の同盟国代表はアポロニアスなのだ。
ナイトシェードは疲労し切った身体に鞭打ち、城門に向かった。


アリシア王国から皇国シュタイゲンまでは機械天翅アクエリオンであれば数分だが、
アポロニアスは自分の神話力で天を駆けていた。
かなり消耗してしまうが、馬や脚では埒が明かないので、仕方が無かった。
いつ堕天翅が襲撃してくるか分からない今、一刻でも早く国に戻らなければならない。
皇国シュタイゲンの条件は公にはされず、アポロニアス本人に提示されたのだ。

「太陽の翼を差し出すこと」

その意図は掴めない。
しかし、自惚れではないが、今自分を殺してしまうことは人間達に取って得策ではないと理解はしている筈だ。
人類の脅威であったアトランディアの殺戮の天翅は今や人類の救世主なのだ。
それには皮肉の意味もあったが、アポロニアスは無心で闘い続けている。
それがセリアン、ナイトシェード、行く行くはわが子シリウスの為だと信じていた。
その自分をどうするつもりなのか、アポロニアスには分からない。
ただでは済まないかもしれない。
でも、今同盟国にはこの強国の力が必要なのだ。
翅があった昔と比べて、すっかり落ちてしまった速度を上げアポロニアスは先を急いだ。


アポロニアスの愛馬は厩に居たので、近くに遠乗りに出掛けたなどという簡単な状況でないことは明らかだった。
恐らく神話力を使っている。
ナイトシェードは急いで司令室を訪れると、アポロニアスの探索をさせる。
しかし、神話力で防御を張っているのかレーダーで見付からない。
ナイトシェードは軽く舌打ちすると、エレメント2人を呼び出し、
ベクターマシンに乗るように依頼した。嫌な予感がする。
しかし、その頃アポロニアスは皇国シュタイゲンの城門の前に降り立っていた。

 

アポロニアスは衛兵に案内されるまま、シュタイゲン城の廊下を進んでいた。
大陸の東を制するシュタイゲン皇国の城は、今で言う中国など東洋の城に似ていた。
城は平地にあり、広大で崖の高台にある西洋的なアリシア城とは全く造りが異なっていた。
しかし、今のアポロニアスに景色を楽しむ余裕などない。
シュタイゲン皇国は、女皇帝ファイラが治めている。
ファイラの一人息子は既に堕天翅族との闘いで命を落としていた。
そして、その時この国を襲撃していたのは、殺戮の天翅であった自分なのだ。
目的は復讐なのだろうか。アポロニアスは考える。
しかし、これはシュタイゲン皇国の存亡の危機でもあるのだ。
このまま独自で堕天翅族と闘い続けるのは不可能に等しい。
同盟に加入しなければ、滅亡の一途を辿るしかない。
今、此処で自分への復讐心だけで国の命運を賭ける愚かな君主ではないと信じたい。

「太陽の翼殿、此処が謁見の間でございます。ファイラ皇帝がお逢いになります。お進みくださいませ」

衛兵は扉を護る兵士に命じ、ドアを開けさせる。
アポロニアスは一度深呼吸すると脚を踏み出した。
鉄の女皇帝ファイラは齢60を越え、髪は既に銀色になっていた。
長い髪を何重にも編み上げ、綺麗に王冠に収めている。
マゼンダ色を基本とした朱色の服を身に付け、金の台座からアポロニアスを見下ろしていた。
柔和そうな顔は威厳に満ちて居て、かなりのプレッシャーが謁見の間を支配していた。
アポロニアスは紅い絨毯が敷き詰められた広間の中央で立ち止まり、その場に跪いた。
間もなくファイラが口を開いた。

「遠方から遥々よくぞ参られた、堕天翅、太陽の翼よ」

アポロニアスはゆっくりと頭を下げた。
ファイラは続ける。
この場には皇帝を護る直属の剣士2名以外は誰も居なかった。
アポロニアスは緊張しつつ頭を下げたまま動かない。
ファイラの厳しい視線が矢のように突き刺さってくるのを感じていたからだ。

「面を上げなさい。堕天翅、太陽の翼よ。
内密にそなたを此処に呼んだのは、聞きたい事があったからです」

アポロニアスはゆっくりと頭を上げ、ファイラを見た。
その視線を真っ向から受け止める。

「堕天翅、太陽の翼よ。そなたは何の為に同族である堕天翅と闘う」

ファイラは目を細め、アポロニアスを睨み付けた。


蒼い髪の剣士、ナイトシェード達は東方のエレメントの少女の感知能力でアポロニアスの軌跡を追った。
アクエリオンに合体し、感知能力を上げると目的地が東の皇国シュタイゲンであることが判明した。
合体を解除し、機動性に富むベクターマシンに変形すると、3人は大気圏にまで上昇し、
シュタイゲン皇国を目指す。

「無茶するなよ…アポロニアス…」

ナイトシェードは逸る気持ちを必死に押さえ、ベクターマーズを急降下させた。


アポロニアスは暫く無言で過去へ思いを馳せていたが、口を開き語り始めた。

「あなた方は忘れはしないだろう。十数年前この地を壊滅的なまでに破壊したのは、この私だ。
あの頃の私は…命じられるまま、何も考えず翅なし、人間達を捕獲し、都市を破壊するのが使命だった。
それが私の存在理由だった」

ファイラは何も言わない。アポロニアスは続ける。

「アトランディアには愛する者も居て、私は何かが満たされないと感じても、それを追求する事は無かった。
そんな時だった。彼女、セリアンに出会ったのは…」
「アリシア王国の王妃、セリアン姫ですね」

アポロニアスは頷き、先を促され話し続ける。

「彼女は私が望む答えをくれた」

ファイラは何も言わない。
アポロニアスはまた暫く沈黙したのち、また話し始めた。

「私には一人息子が居る。支えてくれる友、共に闘ってくれるエレメントもいる」
「彼等の未来の為、私は闘いたい」

ファイラは苦笑した。

「堕天翅、太陽の翼よ。
そなたは全ての人間の為に闘うと言うのではなく、
自分の周囲の十数人の為だけに世界を救うというのか?」

アポロニアスは微笑む。

「そうだ」
「それに、罪は私だけのものだ。アリシア王国の者や同盟国の者達は関係ない。
償いなら幾らでもしよう。その権利は充分にあなた方はある。だから…」

ファイラは噴出すと高らかに笑い出した。
数分笑い気が済んだのか、笑い過ぎて滲んだ涙を拭う。
そしてファイラ女皇帝は毅然とした口調で謝罪した。

「まずは数々の非礼をお詫びしたい。
翼殿、わらわはただ、知りたかった。
愛する皇子を手に掻けた憎むべき堕天翅の本心をな。
もし、人間の為などたいそうなことを申したら信用しなかったじゃろう。
そなたを辱め、恨みを果たしてから同盟国の参加調印をするつもりじゃった」

ベクターマシンが着陸する大きな爆裂音がシュタイゲン城を揺るがす。
ファイラはまた笑い出す。
そして剣士の1人に書状を持って来させるとアポロニアスを手招きした。

「お出迎えのようじゃな。
翼よ、お前は確かに皇子と国民の敵(かたき)じゃ。
でもその思い、信じてみよう。わらわも国民を護る義務がある」

差し出された書状は同盟参加の承諾書だった。
アポロニアスはほっと胸を撫で下ろす。
これでアクエリオンを強化し、戦いが有利になるだろう。

「いい顔じゃ。さぁ、行くがよい」

謁見の間から出ると中庭にベクターマーズが着陸していた。
その搭乗口から最も信頼する友が顔を出していた。
不機嫌そうに睨み付けている。

「帰ったら仕置きだ」

アポロニアスは微笑んだ。
セリアンと出会えた運命。その絆。
それだけを頼りにアトランディアを裏切り、人間を護ると決めた。
しかし、今は護るべき存在が増えている。
ファイラ皇帝はその絆を信じてくれたのだろうか。
幾らアクエリオンで闘い、堕天翅族を倒しても、自分の罪は無くなる訳ではない。

「アポロニアス、帰るぞ」

ナイトシェードが手を差し伸べてくる。
ずっと満たされなかったもの。でも、今はそれに満ち溢れている。
アポロニアスは手を載せて、神話力で浮き上がると剣士の腕の中にふわりと舞い降りた。


<了>


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周囲の者=家族と従者と言う意味です。
その為、セリニアスと表記してます。

 

 

 


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