あぽまに@らんだむ

日記とか感想とか二次創作とか。

ずっと待っている(天翅犬)

2020年05月14日 | 創聖のア◇工リ〇ン関係

 

 

これは、2005年12月21日に書いた「創聖のアクエリオン」の二次創作SSの再掲です。

天翅犬とアポロニアスの二人の想いを書いて展開していきます。

当初、天翅犬がこんなに重要なポジションの存在だと知らず妄想して書いてました。

舞台は最終回頃のお話だとお思い下さい。アポロ達がアトランディアに来ている頃です。

大丈夫な方のみ下へスクロールしてご覧下さい。↓↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

<ずっと待っている>


生命の樹の崩壊の前に同族達の命の灯火が消えていくのを感じた。
遠くで爆撃の地鳴りがしている。
このアトランディアで残っているのは聖天翅トーマと自分だけだろう。
どぉぉんと近くの建物が爆風で吹き飛ばされる。
闘いが近いのだろう。
しかし自分は逃げる必要はないのだ。
眼下で忙しく動き回る太陽の翼、アクエリオン。
黄金色に光る機体は昔と変わらない姿だった。
(あぁ…)
喜びに身が震える。
やっと友が帰って来てくれたのだ。
1万2千年もの長い時を、ずっと待ち続けていた。
その彼が帰って来てくれたのだ。
頭上で、立って居られない程の大きな衝撃が起こる。
ベクターマシン程の火の塊がゆっくりと堕ちてくるのが見えた。
身を焦がすような熱波が小さな翅を火の粉で覆っていく。
しかし、身体を駆け巡る喜びに、熱さなど感じることは無かった。
二度と逢えないと思っていた友の魂を近くに感じ、小さな命は炎に包まれていった。


アトランディアの春は短い。
その間、僅かながら緑が芽吹き、氷の大地も茶色の地面を覗かせ白い小さな花を咲かせる。
アポロニアスはその光景を見るのが大好きだった。
殺戮の天翅と呼ばれ、一度戦場へ出向けば大地を焼き、あらゆる生き物達を灰にする破壊の象徴である自分。
このまるで幻のように短い春の光景を見ると、少しだけ自分の存在理由を忘れる事が出来た。
丘に座るアポロニアスの横に小さな影があった。
人間が見ればその生き物は仔犬と思わせる容姿をしていた。
しかし、明らかに仔犬と違う点はその背にアポロニアスと同じ小さな翅がある事だった。
アポロニアスにまるで付き添うかのようにちょこんと腰を下ろし、
ゆっくりと小さな翅を閉じたり開いたりしている。
春の日差しを取り込むかのような仕草だ。
「アーシエ。私はこの光景が好きなのだよ。あの白い花は何と言う名なのだろう。
シルハに聴けば分かるだろうか」
視線を丘から見える野原いっぱいに咲く小さな花々に向けたまま、アポロニアスが囁く。
天翅犬アーシエはまるでアポロニアスの問いに答えるかのように、小さく「きゅ~ん」と啼いた。
まるで眉毛のように目の上にちょんちょんと小さな点がある可愛い顔をしたアーシエの顔を見て、
アポロニアスは愛おしそうに目を細める。
その視線を受け止め、またアーシエは啼いた。
「お前を困らせるつもりは無かったのだよ」
アポロニアスは大きな手をアーシエの頬に添え、何度も撫でてやる。
耳の後ろを掻いて貰うのが、アーシエのお気に入りだった。
気持ち良さげに目を細め、アーシエは思う。
いつもこの優しい友の傍に居てやろう。
例え彼の味方が誰も居なくなっても自分だけは裏切るまい。
アーシエはアポロニアスの手に頬を押し付け小さく鼻を鳴らした。


アーシエは沢山いる天翅犬の1匹だった。
いや、一匹と言うのは間違いである。
アーシエは実際、他の天翅達と同じ、いやそれ以上の知恵と神話力を持っていた。
アーシエの能力を知るものは誰もいない。
生まれた時から其処にいるのと同じように天翅達は天翅犬達をただの愛玩動物だと思っているのだ。
実際、天翅犬は低天翅や創天翅達のように搾取される事はなく、
妖精のように花園を管理する使命もなく、ただ其処に居て、
戦いで疲れた天翅達の心を和ませた。
アポロニアスが知りたい花の名も、シルハが知っているかどうかも、アーシエは分かっていたが、
言葉を話す術が無いアーシエはただ仔犬のように啼くのみだった。
心の声で伝える事は出来る。
しかし、アポロニアスはただ「天翅犬」として自分の存在を望んでいる以上、
決して声は出すまいとアーシエは決意していたのだ。
アポロニアスがアーシエに話し掛け、アーシエは黙って聴く。
そしてアポロニアスはアーシエに優しく微笑む。
二人の関係はそれで良かったのである。


しかしあの日。
アポロニアスが翅なしの女を庇い、処刑される時。
彼を救う為遥かアトランディア城にまで侵入してきた翅なしの女を更に庇い、
アポロニアスは天翅の象徴とも言うべき一対の翅を捨てた。
あの時、アーシエは彼に付いて行きたかった。
しかし、翅が生えている自分は彼の足手纏いであると思い、黙って見送ったのである。
あの翅なしの女は寿命がある。
愛する女が死ねばきっと、彼は帰って来てくれる。
そう信じていたのだ。


アーシエは待った。
アポロニアスが太陽の翼アクエリオンを持ち出し、
アトランディアを次元の狭間に封印したと聴いても何も感じなかった。
いつか、彼は目が覚めてこのアトランディアに戻ってくるのだ。
そう信じて疑わなかった。
数え切れない程にいた仲間達も次第に数を減らし、気付けばアーシエは唯一の天翅犬になっていた。
しかし、彼が消えた遠いアリシア王国の方角に向かって座りずっと待っていたのだ。


「遅くなったな?アーシエ」
身体が燃え、灰になり、塵芥になる一瞬、アーシエは優しいアポロニアスの声を聴いた気がした。
嬉しくていっぱいに尾を振り、声のした方へ駆け出そうとする。
アポロニアスの逞しい太い腕と温かい胸にやっと飛び込めるのだ。
宙を蹴る脚もなく、羽ばたく翅もなく、光の粒へと変わるアーシエはやがて何も分からなくなった。


<了>

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まさかそのアポロがその天翅犬の転生した姿だとは知らなかったので、
こういう妄想をしていました。
思えば第一回の放送では、アポロニアスの声は運昇さんがやっていた気がするのですよ。
後からたっくんだったと聴き、「そうなのかな」と首を傾げたものです。

 

 

 

 


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