これはBLE◆CHの「京楽×スターク」です。腐的表現があります。
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<君の温もりを護りたい>
雨乾堂からの帰り。
暫く眠そうにしていたスタークの手を引き、京楽はゆっくりとした足取りで帰路を進んでいた。
時刻は日付が変わった頃だろうか。
温かかった風はひんやりと冷えて頬を撫でていく。
スタークは仔犬のようにふるりと背筋を震わせた。
少し寝汗でも掻いたのだろうか。
京楽は自分の羽織りを開いて「おいで」と誘った。
いつもなら「恥ずかしい真似するな」と一蹴されるだろう行為も、
寝惚けているのか三日間離れていた為の寂しさか、
スタークは大人しく頷くと京楽の傍らにするりと収まった。
京楽は緩む頬を隠せない。
暫くひんやりとした体温を楽しんでいたが、そんなに淋しい想いをさせたのかと軽く反省する。
羽織り毎、軽く引き寄せて肩を抱き締めると、スタークは身体を預けて来た。
細い体躯から硝煙のような甘い香りが漂ってくる。
彼の体臭なのだろう。
男の本能を刺激する、護ってやりたいと思うような、引き裂いて嬲りたいと思うような不思議な香り。
京楽は暫く彼の香りを堪能していたが、脇腹を引っ張られ意識を戻す。
視線を遣るとスタークが京楽の腰の辺りの服を掴んでいるのが分かった。
頬が仄かに朱に染まっている。
「どうしたんだい?まだ寒いのかな」
問い掛けにスタークは無言のまま首を横に振る。
京楽の見下ろした視線を感じながらも応じる事が出来ず不安気に周囲を彷徨わせている。
京楽は如何にかしてスタークの気持ちを汲み取ろうとしたが適わなかった。
幾つか問い掛けが終わった頃、スタークがやっと重い口を開いた。
不安気な瞳が哀しみに雲っている。
「なぁ…、俺と…浮竹さんと…どっちが好き?」
京楽は「ぇ?」と間の抜けた声を出した。
京楽にとって浮竹は幼馴染であり、旧友であり、兄弟同然の間柄なのだ。
好きと聞かれれば勿論好きと答えるが、スタークと同じ次元で考える仲ではない。
浮竹は飽くまでも友なのだ。
同じ護廷十三隊の隊長同士であり、戦友であり、スタークを愛でる者同士でもある。
好きかと聞かれれば考えるまでも無い。
しかしスタークが欲しい答えを京楽は考える。
もしかして…と可能性を考え、ついつい顔が緩んでしまうのを必死に堪える。
妬いてくれているのだ。
スタークは浮竹に嫉妬してくれているのだ。
「どっちが好きかと聞かれれば、浮竹だろうね」
スタークは京楽が自分だと言ってくれると少しは期待していたようだった。
京楽にけろりと浮竹だと言われ、ぎくりと徐に身を硬直させるのが肌に伝わってくる。
京楽は間髪入れずに続ける。
「だって、スタークの事は好きって言うより、愛してるからね」
スタークの歩みが止まる。
呆然とした顔で要約京楽の視線を受け止める。
京楽は満面の笑みを浮かべていた。
「愛してるよ。スターク。淋しい思いをさせちゃったね」
今日何度目になるか分からない謝罪の言葉を聴きながら、スタークは京楽に抱き締められた。
雨乾堂でスタークは浮竹に京楽の話を沢山聴いた。
浮竹は、スタークの知らない京楽を知りたいだろうと思い遣っての事だったのだろうが、
スタークは二人の歴史を思い知らされて身の置き処が無くなる思いだったのだ。
100年を超える二人の年月に敵わない。
浮竹と京楽の仲に割り込めない。
スタークは再び孤独の淵に追い遣られていた。
それでも京楽は自分の事を選んでくれるというのだ。嬉しさに身体が震えた。
「……しゅ……春水……」
「…うん」
「………春水………」
「何だい、スターク」
「…………もう一人はイヤだ」
「うん、ゴメンね」
体温の低いスタークの身体が仄かに熱い。
抱き締めている為に顔は見えないが、朱に染まった項が全てを物語っていた。
京楽は護廷十三隊の八番隊隊長なのだ。
また遠征の命が出れば屋敷を留守にするしかない。
スタークとて分かっているのだ。
でも、それでも京楽を欲してしまう。
我侭を言いたくなる。それ程に好きなのだ。
「今度は山じいに頼んで一緒に連れて行こうか。そうすれば、ずっと一緒だよ」
「……俺は、其処等辺のガキよりも戦力にならない」
「ボクの霊圧が上がるから、いい戦力になると思うよ」
「……馬鹿…」
「ふふ……やっと笑ってくれた」
京楽とて一生護ると決めた愛しい存在にこれ以上淋しい思いをさせたくは無かった。
幾ら親友とは言え、浮竹は京楽では無い。
京楽の事を幾ら分かってくれている相手でも、スタークにとっては京楽が居ない事には変わりは無いのだ。
やっと微笑んでくれたスタークを抱き上げ、
その引き締まった腹に顔を押し付け、
その体臭を吸い込む。
肩に手を遣りその生温かさにスタークは身を捩って嫌がった。
しかしがっちりと尻の下に腕を廻され抱き上げられている為に逃れる事が出来ず、
小さく吐息を漏らすしかない。
「やっと名前……呼んでくれたね」
「……え?……あぁ」
嬉しいよと上目遣いで不敵に微笑まれると、スタークは照れて顔を逸らしてしまう。
抱き上げたまま京楽は歩き出す。
スタークは慌てて降ろすように言うが、京楽は「もうちょっとだけ」と宥めながらその幸せを噛み締め、
短い京楽邸への道程を暫し歩き続けた。
<了>
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初めて京楽を「春水」と呼んだ日。
嫉妬が原因ってのがスタらしくて可愛いかと。