
六月の町
国道沿い、いつものガソリンスタンド。
交差点で信号待ちをしている時は、ガソリンを入れる人を見ているか
レギュラー価格をチェックしてから視線をスライドさせて、
目の前の空を見る。
電線が数本、夜には、ぼんやりと月が電線の上に乗っているように見える。
見ていると夜風がそよそよ吹いてきて、夏の初めの風はとても良い匂いである。
子供の頃は、電線に乗っている月なんて見たことなかった。
その頃は遅刻しないように急ぎ足か、早く家に帰ろうと急ぎ足かのどっちかだった。
あの頃も、月が浮かんでいたんだな。
見ていなかったなんて、なんてもったいないことしていたのだろう。
食後だけでなくて、喉が渇いた時は、いつもお茶を飲む。
毎年、新茶の季節になると、おなじみのお店からハガキが届くので
一年分のお茶を買いにドライブがてら出掛ける。
我が家の分だけでなく、よそへ贈る分も買うから、沢山のお茶を持ち帰る。
新茶は甘く、まろやかで優しい。
そして心が落ち着く。
お茶には殺菌作用もあるし、癌予防にもなるし、女性には喜ばれるビタミンCもある。
お風呂上がりにマグカップでお茶を飲むのは自分ぐらいかもしれない。
お茶畑から見上げる月は、静かで、まろやかに澄んでいます。
音楽は、弾くのも聴くのもどちらも好きだ。
弾くのは、ヘタだけれど、自分の好きな曲を好きなように弾いているし
聴くのも、何度も何度も、自分の好きな曲を好きなように聴いている。
いつでもどこでも思い出せるように
一つ一つの細胞までサウンドに染まってしまうくらいに聴いていたいくらいなのだ。
ついこの間、窓からフワッと入ってきた風で、ふと好きな曲を思い出し、
一つ一つの細胞とまではいかないだろうけど
一つ一つの何かに繋がっているような気がした。
気のせいかもしれないけど、それでも良いくらいの、初夏の風でした。
月を見て、お茶で一服して、その風に触れられたら
幸せの欠片が星のように降ってくる
六月の町