Der König Hat Eselsohren

『ドレスデン、運命の日(原題:DRESDEN)』




たいして話題になってませんね~、この映画。
そういう自分だって、Nさんに教えて貰わなければ公開されていることすら知らなかったんだし。
ドイツ映画だとか、実際にドレスデンに行ったとかってことがなければ、興味がなかったと思うし。

そして何より、この映画はドイツではZDFでTVドラマとして放映されたんだけど、その宣伝をさんざん見て憶えていたからこそ、今回は見る気になったというか。
向こうでは日本と違って、2時間半ものドラマをそのままぶっ通しでTV放映すると言うことがないから、確か2週かそこいらに分けて放映されたんだと思うけど、そのせいでず~~~~っとZDFでCMが流れ続けていたからこそ記憶が鮮明なんだよね。
でも、その時点では、ドレスデン空爆の話と言うことだけは予測できたけれど、それ以上は見ても絶対に内容が理解できないと思ったから見なかった。
今回、映画館で観ても、字幕がなかったらよくわからなかったよ。
そもそも顔を覚えられないんだもんf(^ー^; ←かなり重症です

で、案の定、観客はものすご~~~く少なかった。
宣伝費をあまり掛けていないこともあるだろうけれど、そもそも日本人が食らいつくような要素がほとんど無いし。
ハリウッド映画好きな人にとってみたら、知らない役者ばっかり。
日頃ヨーロッパ系の映画が好きな人にとってみたら、マニア受けするような芸術的要素や哲学的要素は全くなし。
興行的には絶対にうまくいかないだろう。
むしろDVD化されてから、各地の図書館なんかで視聴覚教材として利用されるのが一番の道のような気がする。

なんて、かなり否定的なことばかり言っているような気がするけれど、この映画こそ、なるべく多くの日本人が見るべきだと思う。
もちろん、ちょっと調べればドレスデン爆撃がどれほどのものだったかくらいはわかるから、映画のクライマックスで街が破壊し尽くされると言うことは最初からわかっている。
それでも観客の興味を最後まで惹きつけるために、全体のストーリーとしてはメロドラマになっているんだけれど、その内容がイマイチなんだな。
見ながら、「私ならこうするのに」と思ってしまうほど。
でも、ストーリーにも一応のメッセージを乗せているとはいえ、これはあくまでも「従」であって、「主」は爆撃がどんなものであったのかを克明に描くことなのだから、その目的ではこの映画は大いに成功しているだろうと思う。

思うに、日本でも戦争絡みの映画は結構作られていると思うが、《銃後の生活・苦しみ》を正面から描いた映画やドラマはほとんど無いのではないだろうか。
特に最近は、前線の兵士を描く映画ばかりだ。
もちろん、それはそれで意味のあることだろうけれど、自ら参戦することなく、ただ戦火を逃げまどう人々の苦しみがどんどん忘れ去られていっているのが気にかかる。
たまたま私の場合は、母が空襲で焼け出された経験の持ち主で、ずっと戦時中の話を聞いて育ったから、今回の映画を見ていても《あぁ、聞いていたとおり》と思ったけれど、実は日本全国で考えたら、そういう環境にいる人の方が少数派なんじゃないのか?
だからこそ、この映画で多くの人に《戦争の疑似体験》をして欲しいと思う。

見てもいないでこんなことを言うのもなんだが、たぶん、石原慎太郎の特攻映画よりも、『ドレスデン』を見た方が絶対に良いと思うぞ。
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