毎月第一週に行われている新井薬師の骨董市。東京近辺にアンティークを売る市はいろいろあれど、ここは最も行ってみたかったところだ。というのも、私の愛読書、「きもの熱」にこの市が登場し、著者の浦野さんが掘り出し物を手に入れるからだ。それ以外にも、着物好きのブログでときどきこの市のことは、目にしていた。そうした記述のなかで、多くの人が名物(?)として言及していたのが、K氏だ。
この方、箱単位で日本各地の逸品を持ち込み、その品質で有名となった人物。K氏目当てに通う十年来の常連さんもいるとか。
当日、私が到着したのは朝の9時。一方、一緒に回る予定のブログ仲間の黒猫さんや、のの吉さんとの待ち合わせは10時。1時間も前に到着して、なんだか買う気まんまんみたいだが、お財布の中にはろくに現金を入れてこなかった。いや、「入れてこられなかった」というのが正しい。
立て続けに大物を買ってしまい、財政危機に瀕しているのだ。
とはいえ、あまり遅く行くとめぼしいものがなくなってしまうという噂もあり、どんなものが出品されているのか確認するには、ちょっと早めに言ったほうがよいだろうと判断したのだ。特に、K氏のお店のにぎわいっぷりはぜひ見学させてもらいたかった。
会場は思ったより狭い。参堂からお寺の敷地を囲むように露天が並ぶが、敷地自体がそれほど大きくなく、30分もぶらつけば、一通り見ることはできる。
敷地の真ん中に、特別ステージのようにブルーシートを敷いてお店を広げていたのがK氏。「どの人がK氏かわからないかも?」という懸念はすぐにふっとんだ。それほど、K氏のお店は、場所も雰囲気も特別で、着物好きならすぐに目が行くだろう。
ひきつけられるように、目の前に広げられたを手に取ってみる。うーむ、これはもしかしたら宮古上布?これは単衣の更紗も素敵だ。K氏は、常連さん達といろいろやりとりしている。ここで時間を取られても仕方ないので、まずは他のお店ものぞいてみることに。
着物関係は3割ぐらいだろうか。予想よりもちゃんと着られる状態のものを扱っている店が多い。
他のお店で茶碗や九谷焼なども眺めていたのだが、それでもどうしてもK氏のお店のものが気になる。明らかに(本物ならば)希少性の高いものが多い。で、またまた戻ってしまう。
朝一番に集まる常連さんとの対応が一巡したタイミングだったのか、布を広げた私に今度は向うからお声がけ。
「この箱は結城。うん、これは塩沢かな」「更紗ね、ここにあるのは堺更紗」「宮古上布だよ。戦前に沖縄で着られていたものだから、柄が違う」
テンポよく、目の前の着物について説明してくれる。こちらの質問についても、ぽんぽんと返事が返ってきて、話すこと自体が楽しい。
商品そのものの解説に加えて、K氏ご自身が独自に作った布の見本帳もある。話がのってくると、それを広げて昔と今の柄や繊維の特徴を説明してくれる。穴や傷のものもあるが、「こうしたらうまく穴を隠せるよ」とアドバイスもしてくれる。
K氏の知名度が高くなったのは、品物の質もさることながら、こうしたやりとりの楽しさで人をひきつけてきたことも大きな理由ではないだろうか。
K氏の本業は、表装などに使うための古布を集めることだったとか。その中で派生的に着物を扱うようになったらしい。常連さんも多いので、その顔を思い浮かべながら「この価格だったら買ってもらえるかも」という値段付けをするのが商売のコツだとか。K氏ご自身が、何よりこの場での出会いを楽しんでいらっしゃるように見受けられた。
しかし、この市に出店した店の人は、本音を交えて解説してくれるのが面白い。未使用の胴裏を1000円で買ったお店の店主は、そこにあった帯について「人間国宝の○○さんのですよね」と尋ねてみたら「うん、実際には弟子がつくってるけどね」と返ってきた。えー、売り物なのに、そんな本当のこといっちゃっていいんですかー?
まあ、客としてはありがたい限りだが…。
新しいものを誂える晴れやかな喜びは確かに何事にも代えがたい。
しかし、こうして自分の目を頼りに発掘したものを、自分の才覚でよみがえらせる醍醐味もある。それを堪能できるのが骨董市の魅力だ。
とはいえ、結局この日は胴裏を購入したにとどまった。のの吉さんは、絞りの入った麻の長襦袢をゲット。
一緒に行った黒猫さんは、K氏のお店でしばらく宮古上布について検討。穴があるので驚くほどの格安価格。しかも波頭柄がなんともかっちょよい。広げるとそのかっちょよさが一段と際立つためか、広げた瞬間に反対側からおばさんが「いいわよねー」と品物を握ってきた。手放そうとした黒猫さんの代わりに、取られてならじとつい握り返す私(^^;)
結局、手放したのだったが…。
個人的には、薩摩上布と更紗の単衣、そして鏡柄の龍村の帯が心残りでしたわん。
あー、また来月も行きたい。たとえ花粉症が悪化しても…^_^;。いや、それよりお財布がお寒い状態だからな・・・。
この方、箱単位で日本各地の逸品を持ち込み、その品質で有名となった人物。K氏目当てに通う十年来の常連さんもいるとか。
当日、私が到着したのは朝の9時。一方、一緒に回る予定のブログ仲間の黒猫さんや、のの吉さんとの待ち合わせは10時。1時間も前に到着して、なんだか買う気まんまんみたいだが、お財布の中にはろくに現金を入れてこなかった。いや、「入れてこられなかった」というのが正しい。
立て続けに大物を買ってしまい、財政危機に瀕しているのだ。
とはいえ、あまり遅く行くとめぼしいものがなくなってしまうという噂もあり、どんなものが出品されているのか確認するには、ちょっと早めに言ったほうがよいだろうと判断したのだ。特に、K氏のお店のにぎわいっぷりはぜひ見学させてもらいたかった。
会場は思ったより狭い。参堂からお寺の敷地を囲むように露天が並ぶが、敷地自体がそれほど大きくなく、30分もぶらつけば、一通り見ることはできる。
敷地の真ん中に、特別ステージのようにブルーシートを敷いてお店を広げていたのがK氏。「どの人がK氏かわからないかも?」という懸念はすぐにふっとんだ。それほど、K氏のお店は、場所も雰囲気も特別で、着物好きならすぐに目が行くだろう。
ひきつけられるように、目の前に広げられたを手に取ってみる。うーむ、これはもしかしたら宮古上布?これは単衣の更紗も素敵だ。K氏は、常連さん達といろいろやりとりしている。ここで時間を取られても仕方ないので、まずは他のお店ものぞいてみることに。
着物関係は3割ぐらいだろうか。予想よりもちゃんと着られる状態のものを扱っている店が多い。
他のお店で茶碗や九谷焼なども眺めていたのだが、それでもどうしてもK氏のお店のものが気になる。明らかに(本物ならば)希少性の高いものが多い。で、またまた戻ってしまう。
朝一番に集まる常連さんとの対応が一巡したタイミングだったのか、布を広げた私に今度は向うからお声がけ。
「この箱は結城。うん、これは塩沢かな」「更紗ね、ここにあるのは堺更紗」「宮古上布だよ。戦前に沖縄で着られていたものだから、柄が違う」
テンポよく、目の前の着物について説明してくれる。こちらの質問についても、ぽんぽんと返事が返ってきて、話すこと自体が楽しい。
商品そのものの解説に加えて、K氏ご自身が独自に作った布の見本帳もある。話がのってくると、それを広げて昔と今の柄や繊維の特徴を説明してくれる。穴や傷のものもあるが、「こうしたらうまく穴を隠せるよ」とアドバイスもしてくれる。
K氏の知名度が高くなったのは、品物の質もさることながら、こうしたやりとりの楽しさで人をひきつけてきたことも大きな理由ではないだろうか。
K氏の本業は、表装などに使うための古布を集めることだったとか。その中で派生的に着物を扱うようになったらしい。常連さんも多いので、その顔を思い浮かべながら「この価格だったら買ってもらえるかも」という値段付けをするのが商売のコツだとか。K氏ご自身が、何よりこの場での出会いを楽しんでいらっしゃるように見受けられた。
しかし、この市に出店した店の人は、本音を交えて解説してくれるのが面白い。未使用の胴裏を1000円で買ったお店の店主は、そこにあった帯について「人間国宝の○○さんのですよね」と尋ねてみたら「うん、実際には弟子がつくってるけどね」と返ってきた。えー、売り物なのに、そんな本当のこといっちゃっていいんですかー?
まあ、客としてはありがたい限りだが…。
新しいものを誂える晴れやかな喜びは確かに何事にも代えがたい。
しかし、こうして自分の目を頼りに発掘したものを、自分の才覚でよみがえらせる醍醐味もある。それを堪能できるのが骨董市の魅力だ。
とはいえ、結局この日は胴裏を購入したにとどまった。のの吉さんは、絞りの入った麻の長襦袢をゲット。
一緒に行った黒猫さんは、K氏のお店でしばらく宮古上布について検討。穴があるので驚くほどの格安価格。しかも波頭柄がなんともかっちょよい。広げるとそのかっちょよさが一段と際立つためか、広げた瞬間に反対側からおばさんが「いいわよねー」と品物を握ってきた。手放そうとした黒猫さんの代わりに、取られてならじとつい握り返す私(^^;)
結局、手放したのだったが…。
個人的には、薩摩上布と更紗の単衣、そして鏡柄の龍村の帯が心残りでしたわん。
あー、また来月も行きたい。たとえ花粉症が悪化しても…^_^;。いや、それよりお財布がお寒い状態だからな・・・。
お財布に余裕が出たら、次ぎは早起きしたいと思いました。
はつきさんの「大物」ご披露も楽しみです。
また、宜しくお願いいたします。
10時を境に、お客さんの顔ぶれが変わった気がしました。たぶん、時間によって客層がだんだんと変化しているのでしょうね。
Kさんのお話は、ほんと面白かったですよ。
またゆっくり聞きたいもんです。おすすめです。
常連さん相手に「セミナー」なども開いているやにうかがったので、今度はそのあたりも確認したいですね。
こういうイベントの良さは、やはり出店者とお客さんとの距離の近さですよね~その中で、お書きになられているとおり、楽しいやりとりがあって、お買い物したお客さんは商品以上の「お得感」を得るのかな何て思いました。
それにしても宮古上布まで出るなんて・・・うーん興味あります。お値段が気になるわー。
ニアミスだったんですね(笑)。
あの日、私は必死に「買ってはいけない」と、物欲を抑えていたせいか、お値段はあまりよく覚えていないのですが、高いものでも二桁の万円にはならなかったかと。もっと朝早ければ、良いものがあって、それはお値段も高いかもしれません。
ただ、古いものなので、サイズは小さいです。
結局、何度か行っても買った布ものは堺更紗の小布だけ。でもそれで古袱紗を作り、お茶のお稽古によく使いましたから、高くても元はとれた気がします。しかし、骨董市はやっぱり現ナマが要りますよねえ~、とほ。
なるほど~。私は着物ばかり目が行ってましたが、考えてみれば端切れもいろいろアレンジできるんですね。もっと端切れをのぞけばよかった。それならお財布にも優しそうですし。
朝早い殺気立った雰囲気もちょっとのぞいてみたいです。
掘り出しものを見つけた時の感激は、癖になりますよね。
宝さがし大好きです。
その節はどうも(^^)/
目利きのゆこさん(私の勝手な想像です)にとっては、宝の山だと思います!ぜひ一度、行かれてみてください。
宮古上布の引っ張り合い、おかしかったですよね、笑。他人にとられると思うとなんか悔しくて、、。
しかし、自分の知識不足というのも同時に痛感して、もっと色々学ばなくてはと反省。
私も来月また行こうかなと思いました。
いやー、あの宮古上布は思い返してもやっぱり素敵でしたね。
Kさんの説明をもっと深掘りできるような知識と布を見る目を養いと思ったと同時に、「人を見る目」が問われる場だなあとも思ったのでした。お店の人を信じてよいのかどうか、結局そこに行きつくような気がしてます。