四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
7月18日「暑さを凌ぎながら難所も凌ぐ」の様子

お待たせしました、久方ぶりのシノギングイベント。
「暑さを凌ぐ」と銘打ちながらも、当日はドンヨリとした空模様に思いのほか涼しい気候。元々「難所を凌ぐ」にも比重を寄せていたルートではあるが、念のため参加者の皆さんに意思確認をし、半ば強制的に?涼しいけど暑さを凌げるルート取りで決行する事に。これも良い機会なので、大いに「暑さ(転じて寒さ)」を凌いでいただこう。
入渓ポイントの手前、良さげな神社内にて下準備と、簡単なコンパス談義。沢をタドルルートは尾根と違って、非常に目印が少なく分かりづらい。大まかな目指す方角と、エスケープ出来る方角を理解しておくと安心だ。
そうこうしていると、まさかの雨が本降りに。6月中止になった「雨を凌ぐ」も出来そうな予感。いやぁ今回はてんこ盛りのシノギングになりそうだ。
林道を詰めて行くと、現る入渓ポイント。人工感は否めないが、いざ入渓!
意外にちょうど良い水温であったが、沢に足を浸け、冷やっこい沢の水が靴下を伝って足先に広がる瞬間は、ついつい「ひゃっ」と感じてしまう。何とも言えない心地良さがある。様相も人工的なそれからすぐに沢らしいそれに移り変わっていく。
いや水量も程々で、良い沢と化している。いつもはほとんど水量のない場所なもので、一人テンション上がってしまった。
すると人工物にして核心ともいえるポイントへ到着。果敢に挑む、漢シノラー。
よっこら、、、せい!!
ナイスマントリング!思わず歓声が上がる。
それに続く漢シノラー達。。
無事完登。勿論皆びしょびしょに。ただ一度濡れてしまえば潔く沢に浸かれるってもんでぇい。
この直登が心配なシノラー達は右岸の堰堤横から巻く。ただ濡れはしないがこっちのルートの方が連日雨のグズグズで登りづらいという。そして勿論泥だらけに。ある意味凌いでいた。
汚れたって沢でジャブジャブすれば良いのさ。皆調子が乗ってきたのか、足取りは軽やかだ。
と、少し開けた場所で森勝さんの「抜き打ちタープ張り試験」を実施。タイアウトのループしかついていない一枚布のタープを様々な道具や自然物を駆使し屋根を作ってもらうという何とも実践的な試験。
選ばれたシノラー達は協力しながら、あーでもないこーでもないと少しずつタープを屋根として形作っていく。
途中、一行の「寒いよ~」「早く~」という野次にも負けず、難なく屋根の完成。これで暖が取れるぞー。
森勝さんが採点をしつつ、補足のロープワークや豆知識を披露。実践を交えた補習でスキルアップ間違いなし。
この後、抜き打ちで数回実施するとの事で、最後の方たちは、それまでを踏まえた上でスマートに張れるはずである。そしてそのプレッシャーにも打ち勝つ必要があるという。。
個人的にタープ道具を詰め込んでいたあきたこまちの米袋がツボだった。(本人曰く、厚くて丈夫で気兼ねなく使えるよ、との事。確かに...)
程よく身体が冷え切った所で、再出発。動いていれば程良い沢歩きも、一度停滞すると濡れた箇所から一気に冷える。この点もよく感じていただけたのではなかろうか。
少しずつ狭くなっていく沢筋。次第にゴーロや倒木も目立ちだす。しかしながら、雨により緑も綺麗で何とも乙な沢歩きだ。
終点も近い頃、小滝も出てき、沢登りの片鱗も垣間見れる。(とはいえ脇から巻けるルートもあり)それにしても緑が濃い!
そして終点の大滝が姿を現す。。
通年枯れている事が多いこの滝が、これだけの水量で流れているのは初めて見た。中々圧巻な光景。連日の雨のお陰か、皆さんにお見せ出来て良かった。思う存分マイナスイオンを感じ取る。
そんな癒しの時間も束の間。いよいよ「難所を凌ぐ」のはじまりはじまり。そう、この滝をロープを使って詰めていただくのだ。
というのは冗談で笑。その横の尾根への直登を詰めていただくのだ。上写真は少し登った、上からのぞいた図。ここも中々の急登で、かつ雨でグズグズになった斜面がまた嫌らしいルートである。
そんな時に役立つ凌ピッケルを駆使していただき、一人一人安全を確保しながら登る。
凌ピッケルのヘッド部は”バチツル”の異名を持つように、ピック側は鶴のくちばしが如く少し下に傾斜している。かつ少し横巾があるので、上の方に差し込んだ際、食いつきがとても良い。(その分抜く時に少しコツはいるが)勿論石突の方を深く差し込み、ヘッドを手掛かりにしながら登っても良い。今回のようにグズグズで手がかりも少ない様な斜面では、凌ピッケルがあるだけで随分安心感が違う。
皆、手直接、手掛かりになる枝葉、ピッケルを上手に使いながら登っていた。極限に近い状況だと、人間意外に合理的な動きを取るもので、それも感じていただけたならば幸い。
壁を登り切った後も、ガレたトラバースが続く。これが意外に厄介だが、浮石に注意し右手にピッケルでバランスを取りながら行くと渡りやすい。
その後も思い思いにピッケルを使って尾根を詰めていただく。このような斜面での登り方の手順やルールを理解していただき、少しは凌ピッケルの有用性も感じていただけたかな。
そうして尾根に上がり切った時の達成感は一入だ。なぜか間髪入れず森勝さんのナイフ談義も始まり、適度にクールダウン。
沢も含めて進んだ距離は大したことないが、充実感はかなりのもの。時間も程よいので、モックポイントへ向かって勇み足。
目星を付けていたポイントに到着。抜き打ちタープ試験をやる余裕もなかったので、森勝的スマートタープ講座にてタープを張り、そこを拠点にする。
スタンダードな8’×5’のタープでも対角線にピンと張れば十分広い屋根が出来る。(勿論EXPED定番のSolo Tarpでも)
十分凌いだので、帰りは主尾根をタドリゆっくり下りる事に。そうと決まれば各々の自由時間。
孤高のハンモックシノラーもいれば。
ギア談義に花を咲かせるシノラーもあり。。
初めてのウキグモlightにウトウトするシノラーもいれば。。。
完璧な物干しシノラーもあり笑
十人十色の凌ぎっぷりを見させていただいた。嬉しい事に、皆さん持参されていたタープが全てSolo Tarpだった。これが色といいサイズといい、本当に絶妙なタープなのだ。そして今季新製品のハヲリモノocta(在庫切れすみません)の着用率も高く、今回のような汗や沢での濡れを拡散させる用途でちゃんと使っていただいていたのも嬉しかった。この用途は本当に良く使える。この時期、我々も手放せない(特に汗かきの柳谷は)アイテムの一つとなっている。
たっぷり2時間近く休憩し、晴れ間も見えてきた所で撤収。気温も上がってきていたので、思いのほか寒い思いもせずに済んだ。(しかしながら皆しっかり防寒対策していたのが素晴らしい)
古道をタドリ、主尾根を目指す。
このトラバース古道が思いのほか厄介で、そろりそろりと慎重にタドル。
ここで1時間に1本のバス時間ギリギリである事に気付く。しかし満場一致で”急がず”下りる事に。その心のゆとりも”凌”には大切な事。
後は単調な登山道を下る。あれよあれよとバス停近くのビジターセンターに到着。事前に調べていた毎時「29分」のバスまで時間はある。バス通りまで歩けばすぐにバス乗れるが、ここも余裕をもってバスを待つことに。濡れた物の身支度を終え、近くのベンチでのんびり話に花を添える。(あまりにも心地よい時間がゆえ、写真忘れました。。)
5分前頃にすぐそこのバス停へ移動し、時刻表を見て発覚した事実...
16時台.......20分???
なんと乗ろうとした16時台から謎の毎時20分発に変わっているという。
結局とほほな気持ちで車道を歩きバス通りまで出てバスに乗ったとさ。(私の確認ミスですみません!)
最後にそんなオチがありつつも、久しぶりのシノギングイベントはやはり楽しく乙なものであった。今回「暑さを凌ぐ」「難所を凌ぐ」「雨を凌ぐ」の3拍子揃ったシノギングで、参加された方々も充実した凌体験が出来たのではないか。
まだまだ予断を許さない状況ではあるが、様子を見ながら今後も細々と活動を続けていきたい。
最後に3拍子凌ぎ終えたシノラー達のいつもの笑ってはいけないヤツにて。(実はこの写真も久しぶりで撮るの忘れかけてました。。)
