四季の山を歩き、思い、創造する。
凌 手記
モグ連載② モグの開発経緯
凌ではハンモック専用の寝袋「モグ」を9月上旬に発売する。
これに合わせてモグについていろいろと紹介しよう。
今回はモグの開発経緯。
モグの開発はここから始まった
2019年のお泊りシノギングでアグラスカートにすっぽり包まれている少年。この姿を見て、うん?これは!と思った私はラフなデザイン画を基に一枚の仕様書を作成した。
その名はモグラ
仕様書を工場に送ってずいぶんそわそわしながら試作の依頼をしたのを覚えている。
約一ヶ月して試作品が届くと私はすぐに会社のショールームで夜を凌ぐことに(笑)
しかしこれではやっぱり物足りないのでいつもの南タ別荘尾根に向かう。
ぴょこん。アグラスカートに上半身を足して「つなぎ」へと変化させ、手が出るようにしたのだ。
この姿が土の中から出てきた土竜みたいだったので、それはすぐにモグラと名付けられた。この時は創業当時のモグバッグのことは頭の片隅にもなかった。
はじめはこうやってハンモックに座って首から足首までを温めるだけのものと考えていた。両手が出せるから焚き火のお世話もできるし食事もできる。そして何よりアグラスカートと同様にとても暖かい。
うん?待てよ待てよ?
うーん。遅まきながらひらめいた。
こうしてハンモックを通して使えば簡易的なハンモック用寝袋になるではないか! 首まわり、お腹まわり、裾まわりは伸縮するからハンモックにもフィットしてヒートロスが少ない。それにすぐに手が出せるから何かを取ったりスマホを見たりするにはとても具合がいい。
しかし、モグラはセカンドサンプルから先には進まず、展示会に出展することもなかった。それは、日帰りのシノギングで数時間の利用ならばいいのだが、お泊りシノギングでの長時間の利用を考えると、ハンモックに対して斜めに寝るのに十分な横巾がないので少々窮屈に感じてしまうこと、頭と足が露出するので秋冬春にはそれをカバーするインサレーションを別に持たなければないことなど、いくつかの問題点があったからだ。
結果としてお蔵入りとなってしまった不運なモグラではあったが、実はこの後の展開にとても大きな役割を果たすことになる。
モグの誕生
私はモグラのことを諦められなかった(笑)仕様を変えればきっと面白いモノができるに違いないと思った。私はモグラを見ながらあれこれ考えた。その頃すでにウキグモを販売していたのだが、ウキグモの特徴は何といっても専用のアンダーキルトとトップキルトの付いたハンモックで、使い方にいろいろなバリエーションがあるということだった。
モグラはアグラスカートの様に着ることがメインで、ハンモックのキルトとしての使い方は2次的なものだったが、そのバランスを変えてハンモック専用の寝袋にしたらどうだろう? そうなると当然ウキグモとは違う特徴を持たせる必要があるから、ウキグモよりもシンプルな作りにして保温効率の高いものにしようと考えた。頭にはカヤックのようなカタチが浮かんできた。モグラをそのまま長く頭と足をすっぽり覆うようにして顔を出せる穴を設ける。その穴はジッパーで下に開いてそこからカヤックの様に出入りできるようにする。頭と足の先はハンモックのラインまで伸ばして絞り込んで固定すればいい。そうすることでほとんどのシングル巾のハンモックに対応できる。
ざっくりと出来上がりを確認するための試作品を修正して、セカンドサンプルで細かい部分の修正が終わるとある程度満足するものにはなっていたが、繰り返し行われた冬季のテストでどうも期待していた保温性が得られない。この段階で大きな変更はしたくなかったが思い切ってそちらに舵を切る。それによって販売価格も上がってしまうだろうがいいモノを作ればお客さんは納得してくれるだろう。
・・・何度も修正を加えて出来上がったのは、顔出し穴以外にほとんど隙間がなく、身体への密着具合をバッフルごとに調節できるハンモック専用のバフバフの寝袋だ。
意外な進化を遂げてもうモグラとは違うモノになったそれをモグと名付けることにした。カヤックの様に潜り込む動きからまずモグという言葉が出てきた。そして昔モグという寝袋を作っていたことを思い出した。その当時のカタログを引っ張り出してみると「潜る」と、同じようなことが書かれていた。そのネーミングセンスに敬意を表してモグに決めた。それにモグラのモグも残っている(笑)
このようにしてアグラスカート⇒モグラ⇒モグへと劇的な進化を遂げたモグは9月からの販売開始に向けてそろそろ生産が始まる。
次回からはモグの詳細をお話しする予定である。

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