俺は驚くしかなかった。
しかしカイさんは苦笑いをして俺を見るばかりだった。
「…なーんてね…でも、やっぱりオミが前面だから、〈礼霊ず〉は上手くいってるでしょ」
と、いたずらっぽく笑って、この話は終わりになったようだった。
「ダイキ君、コーヒーでも飲まない? 」
「すみません、気がつかなくて」
俺はほっとして、ドリンクバーに向かった。
…席を離れてから、俺が意外に思った、というか残念に思ったのは、クールでストイックと言われるカイさんが、歩いてくる女性にチラチラと視線をやっていることだった。
手をつないでいるカップルの女の子の方にも。
俺が席に戻って、2人でコーヒーにロをつけてからもカイさんは…
もちろん俺は不快さを押し隠していたのだが、カイさんは気づいたらしく、
「ごめん、いや、みんな麻里華ちゃんのデザインしてる服に似てたから…そういう時代なんだなあ、って 」
「…? 」
聞けば、オミさんの彼女の麻里華さんは、福岡の出身で、進学のために東京に来て、今は小さな工房を都内で経営しているのだそうだ。
「大金持ちの実家にも頼らないで、若いのに立派なんだよ。オミの実家も金持ちだから、社長同士だし育った環境も似てるようだから、年はひと回りも違って犯罪級だけど、いい感じだったんだ」
…えっ? 過去形?
「ダイキはオミと同居してるからこっそり教えるけど、二人は最近うまくいってないみたい 」
「なぜ…」
「…まあ麻里華ちゃんはオミの横でウェディングドレスが着たいらしい。オミに夢中で、早く独占したいからね。でも、工房でのデザインが、思いつかなくなってきているらしいんだ…でもオミはYouTubeも順調…オミは焦らずひと休みしたら、ってアドバイスもしてるし…」
無理やりデートの時間も増やしてるけど…しっかりしててもやっばり24才の若さだから…
「オジサンのアドバイスとしか思ってないかも、ってオミがぐったりして言ってたよ 」
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