その日からしばらくは本当に大変だった。
退職代行業に頼んで在籍していた会社をやめる手続きを始め、そこに、会社から電話をもらった母親から電話ががかってきてどこにいるのか何をやっているのかを訊かれ、父からも電話がきた。
父の方はまず、
「何やってるんだお前は! 」
と、カミナリから始まり、会社に迷惑をかけるとは何事か、とまた怒鳴られ、
「今日中にそっち行くからな! 」
と叫ぶと…
…本当に両親は夜遅くにやってきた…
二人とも、札幌より田舎のお堅い公務員。
いつもの応接室で…
たまたまやってきて巻き込まれてしまった「専務」のカイさんとオミ社長のピアスやリングやタトゥー(実はシール)、ロックっぽいシャツなんかを見て…苦々しい表情を見せた。
「…専務…高井一成さん…株式会社レイレイズ…ねえ…」
二人の名刺を見て、珍しく母の方からロを開いた。
「いえいえ、今では北海道のような田舎でも、色んな犯罪がありますからねえ…」
と、オミさんとカイさんをじろじろ見た。そして、
「うちの子は、恥ずかしながら高校の時は一年に何日かだけ、不良だったんです。ススキノで、ロッカーの何とかさんを年上の女の子たちと追いかけて家に帰ってこない。挙げ句の果てには朝帰り。何やってたんだか、女親としては考えたくありません 」
そのあたりを少し知っているオミさんは困った表情になって、うつむいた。
「…ですので、特殊詐欺とか、男の子でも売春とか、臓器売買に引っかかるようなバカですので、連れ戻しに来たんです 」
「母さん! そんな言い方ないだろ! それにもう俺は社会人なんだから… 」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます