蒼天在眼 (そうてんまなこにあり)ーベランダで星を見る

昔、昔、天文少年でした。そして、今は、ベランダから、星を見ています。
いろいろの忘備録

アリガターアリミゾの謎 の巻

2021-08-04 11:50:29 | 天体観測

コロナ禍がとんでもないことになって、本業が忙しく、しばらく更新ができませんでした。さて、天体観測ネタにを久しぶりに投稿します。

 

私が天文少年だった頃は、天体望遠鏡は、赤道儀(架台)とセットで販売されていて、望遠鏡と赤道儀は、鏡筒バンドで結合されていました。KE-60型赤道儀も60mm口径の屈折望遠鏡と、赤緯体と一体になった鏡筒バンドで、固定するようになっています。こんな感じ。

ところが、新しく発注したlosmandy のGM8赤道儀は、アリミゾ金具で、アリガタ金具を咥えて固定するとのこととです。

ハテナ?です。

どうやら、ビクセンが、1992に発売したGP赤道儀から、この形式が普及して、今では、デフェクトスタンダードになっているようです。このGP赤道儀は、現在でも、多くのユーザーがいて、廉価な中華製の赤道儀も、GP赤道儀をまるまる模倣して販売されているようなので、オリジナルのGP赤道儀は名器と言えるでしょう。

そういうわけで、アリガタ金具と、6cm鏡筒に適合する鏡筒バンドを手に入れることにしました。ここで、問題発覚、内径63mmの鏡筒バンドが検索してもなかなか見つかりませんでした。

もっと大きい口径の鏡筒バンドならば、容易に見つかるのですが、60mm用はなかなかありせん。諦めかけた時に、救いの神が、現れました。スコープテックという会社です、このマニアも注目する入門用の屈折望遠鏡を製造している会社のパーツ販売サイトにお目当ての63mm内径の鏡筒バンドが見つかりました。ビクセン規格のアリガタの方は、いろいろ選択肢がありましたが、astrostreet 社の35cmのものにしました。

アリガタ金具と、鏡筒バンドを結合して、こんな感じに。あとは、赤道儀が到着するのを待つばかりです。


南中は何時? の巻

2021-07-07 23:13:52 | 天体観測

では、いよいよ、観測地での太陽の南中時刻を秒まで求めましょう。

手始めに、天体の時角(Hour Angle)を導入します。時角は天体が、観測地の子午線を横切ってからの時間です。ある天体が、子午線を横切ってから2時間30分4秒経っていれば、その天体の時角は、2時間30分4秒です。0から24時間の間で表します。天体が、子午線の東にあって、あと1時間で、子午線を通過する位置にある時は、時角は、23時です。

同じ天体の時角は観測地の数だけ決定できるので、混乱を避けるため、ロンドン郊外のグリニッジの本初子午線(Prime  meridian)の時角を基準として、各観測地の時角を換算して使用します。

時角は角度で表すこともあります。1日24時間を360度に換算します。

具体的には、時間に15を掛ければ、角度表現になりますが、日本では、時間で表現することが多いです。逆に、角度を時間表現にするには、15で割り算すれば求めることができます。

観観測地Pの時角HAは、グリニッジの時角HAgと観測地の経度Longで表すと、

HA = HAg ± Long    ・・・・式1 ただし、Longは、時間表現

ただし、観測地の経度が東経(Pe)の時はプラス、西経(Pw)の時はマイナス

で計算できます。

太陽が南中しているときは、太陽はちょうど子午線上を通過するときですから、観測地での時角は0または24時です。

観測地が日本国内であれば、東経ですから、式1から、

24 = HAg+Long    ・・・・式2

となります。

ある日、ある時間の太陽のグリニッジの時角は、天測暦から求めることができます。

では、2021年の冬至の日12月22日の天測暦のページを見てみましょう。

太陽の項目の一番左の列のデータを使います。Uとあるのは世界協定時(UTC)です。

次の欄のE◎はイーサンと呼ぶ日本の海上保安庁の天測暦だけにある特殊なデータで、

E◎ = HAg - UTC   ・・・・式3

となる値が記載されています。E◎は、時間と共に変化する値です。

式2と式3から、

24 = E◎ +UTC+Long   ・・・・式4

南中の時刻は、式4を UTC で解いて、

UTC  = 24 - E◎ - Long   ・・・式5 

で求められます。実務では式5を公式として使っています。西経の場合はLongの前の符号は+になります。 

その昔、三等航海士は、あらかじめ推定位置での式5で計算しておいた太陽南中時間近くになると、六分儀を構えて太陽を観測しました。南中時刻で、経度が出て、太陽高度で、緯度が一回の観測で計算できるnoon positionを、船長に報告するという三等航海士の大事なお仕事だったそうです。noon position は、さらに、無線で船主に報告しなければなりません。戦時中、日本商船が報告する ポジション レポートは、米軍に解読されて、潜水艦の待ち伏せを食らったということなので、律儀すぎるのも、何だかねぇ。

ということで、日本の天測暦は、太陽の南中時間を簡単に計算できるように工夫されています。

では、バルコニーでの2021年12月22日の南中時刻を求めてみます。

バルコニーの経度をスマートホンのGPSで求めると、東経139度40分30秒と出たとします。

これを、時間表現に変換するには、15で割算をすれば良いのですが、昔は、天測計算表(米村表)を引いて、換算してました。この表は冊子になっていて結構便利です。 今なら、関数電卓があれば、答え一発で、

Long = 9時18分42秒が得られます。

まだ、南中時刻のE◎は分からないので、

仮に、UTC =0時のE◎=12時1分36秒を使って計算してみます。

式5からUTC = 24時-12時1分36秒-9時18分40秒=2時39分44秒

E◎が12月22日の1日で、30秒ぐらいしか変化していないので、この太陽南中時刻は概ね分単位まで正確です。

次に 12月22日2時39分のE◎を2時と4時の値から補間計算します。2時間で、2秒減少しているので、-2 x 39/120=-0.65秒を2時のE◎12時01分33秒から減じて、12時01分32.35秒を得ます。

1秒以下の端数を四捨五入して、E◎=12時1分32秒を使い、もう一度計算します。

UTC =24時-12時1分32秒-9時18分40秒=2時39分48秒

日本標準時(JST)はUTC+9時ですから、JST=11時39分48秒が求める南中時刻です。

海上保安庁の天測暦は、角度で0.1分、時間で1秒を保証していますから、秒までは正確です。

練習問題

次の場所の2021年12月22日の南中時刻を日本標準時で求めてください。

1)  北海道 網走市 東経144度15.5分(9時37分02秒)

2) 福岡県 福岡市 東経130度25.0分(8時41分40秒)

答えは最後に

 

大多数の方は、海上保安庁の天測暦を利用できないと思いますので、インターネットでダウンロードできる天測暦(nautical  almanac)を紹介します。

https://www.thenauticalalmanac.com/

ここから、PDF形式の天測暦が無料でダウンロードできます。再配布も自由です

Everything you need for 2021をクリックすると、ダウンロードページに飛びます。

では、ダウンロードした天測暦の2021年12月22日の太陽の項目を見てみましょう。外国の天測暦は、3日分のデータが1ページに載っているので、注意してください。水曜日、Wedの項目が、12月22日です。一番左のカラムに1時間おきに太陽のグリニッジ時角(GHA)が記載されています。

E◎は式3で計算できます。さしあったって必要なデータは0時、2時、4時のE◎ですから、グリニッジ時角をそれぞれを15で割って時間表現にして、時刻を引くと

当たり前ですが、海上保安庁の天測暦記載のE◎と全く同じ値が得られます。

時間の計算は、関数電卓が便利です。スマートホンのアプリでもいいので、一つあると重宝します。

天測暦は、北極星を始めとする主要な恒星や、肉眼で観測できる惑星(水星を除く)の時角計算もできますが、今日はここでおしまい。

 

練習問題の答

1)  11時21分25秒

0時のE◎=12:01:36を使って南中時刻を求めると、

24時−12時01分36秒ー9時37分02秒=2時21分22秒

補間計算で2時21分のE◎を求めると、

2時21分のE◎= 12時01分33秒-2x21/120秒=12時01分32.65秒

12時01分33秒をE◎の値として、南中時刻を再計算

24時-12時01分33秒-9時37分02秒=2時21分25秒

UTC 日本標準時の時差 +9時間を加えて、

11時21分25秒が求める南中時刻になる。

2) 途中経過は略

答 12時16分48秒

 


天には快晴を、 ベランダには経線を の巻

2021-07-07 14:57:28 | 天体観測

ベランダで、真北の方向を、太陽の南中時の鉛直線の影から求めます。

用意するものは、糸、重り、油性のサインペン黒、ビニールテープ、スマートホン、天測暦です。天測暦は、持っていない方が多いと思いますが、インターネットから、無料ダウンロードで、手に入れられるので、ご心配なく。記事の最後に、やり方を記載します。あると良いもの、三脚、電波時計、関数電卓。

なるべく天気の良い、風の無い日に決行します。重りを、糸に結びつけて、ベランダの手摺り、三脚などから吊り下げて、鉛直線を作ります。糸は、重りが床に接触しない限り、長くするのが、吉です。糸の影が床にはっきりと見えない場合、糸を黒く塗るか、太いものと変えましょう。11時ぐらいまでに、準備が、完了すると良いです。

スマートホンの時計か、電波時計を見ながら、あらかじめ求めた南中時刻を待ちます。南中時刻になったら、素早く、鉛直線の影に沿って、ベランダの床に、点を3つ打ちます。点の間隔は、1秒以内で打てる限り、できるだけ広い方が正確な方位線が引けます。あとは、ゆっくり、ビニールテープに適当なテンションをかけて、テープの縁が3点を通過するようにテープをを床に貼ります。スマートホンの時計は、肝心な瞬間に画面が消えることがあるので注意して下さい。

こうして引いたベランダの線は、北極と南極を通過する大円の一部となり、経線と呼ばれます。経線を天球に投影した線は子午線です。スマートホンのコンパスの指す北とは13度ほどズレていました。磁気偏差7度20分に加えて6度弱の自差(鉄製品によるズレ)が我が家のベランダではあるようです。

 

ここまで書いたら、疲れててしまいました。南中時刻の予測計算は、次回に続きます。

 


真北はどっちだぁ の巻 ーベランダで真の北を探すー

2021-07-06 20:58:24 | 天体観測

赤道儀を注文したけれど、ベランダに設置するとなると、いろいろ問題が出てくるのです。

まず、望遠鏡を取り回せる空間を確保しなければなりませんし、南だけでなく、東西の視角も確保したいし、北の方向が見えてないながらも、北極と南極を結ぶ子午線も求めたいです。

真北の方向を知る簡単な方法は、磁石を使う方法でしょう。ビクセンから、赤道儀の設置を助ける磁気コンパスと傾斜計と水準器が一体化したポーラメーターという商品が出ています。

 

Vixen ポータブル赤道儀 ポーラメーター | ビクセン Vixen

株式会社 ビクセン 「Vixen ポータブル赤道儀 ポーラメーター」ページです。天体望遠鏡、双眼鏡、単眼鏡、フィールドスコープ、顕微鏡、ルー...

ビクセン Vixen

 

 

磁石が指す北は、実は、磁北で、北極から約1200kも離れていて、年々移動しています。Balconの住んでいる東京西部では、磁石は、真北から、西に7度20分ズレたところを指すようです。

我が家のバルコニーに磁石を置いてみると、変な方向を指します。うーん、バルコニーに含まれる鉄筋にかなり影響を受けているようで、バルコニーでは、磁石は当てにできません。

「エコノミー機材で行く ゆるーい天文趣味」のlambdaさんが紹介しているGoogle  mapを使う方法も面白いです。

下のリンクのページの後半に出ています。

近代的な極軸合わせ (PHD2による追い込み)

デジタル化の波は極軸合わせにも革命をもたらしていたようです。世の中にはカメラと組み合わせた極軸合わせのための製品も登場していて、極軸合わせも...

 

 

 

大雑把な私がこの方法を採用すると、2度ぐらいの誤差が出そうです。

なるべく誤差が少なそうで簡単な方法は、小学校の時にやった太陽の南中を利用する方法じゃないかなと思うわけです。太陽南中時に鉛直線の影は、北を指すことを利用するわけです。

南中の時刻を秒単位で、決定できれば、15秒角の精度で経線(子午線)が引けるはずです。

赤道儀が到着するまで、経線(子午線)をベランダに引いておきましょうと。

 


赤道儀品定め の巻

2021-07-06 14:03:35 | 天体観測

KE-60と QX 100の組み合わせで、いろいろ天体を撮ってみましたが、月、惑星は、何とかなっても、星雲は、全くうまくいきませんでした。せっかく、オリオン大星雲などは、肉眼でも我が家のベランダから見えるのですから何とかならないかなと思案してみました。

やはり赤道儀を21世紀の赤道儀に更新してみようとの結論になりまして、ネットで、情報を収集してみることにしました。

天文少年の頃、先輩に、「赤道儀は、しっかりしたものを買え。後悔しないぞ。」と言われていたので、一応、アマチュア用の中級機で、積載量10kg以上の機種から選ぼうと思いました。あのの頃は、五藤光学、PENTAX、NIKONなどのメーカーが憧れの赤道儀でした。

21世紀には、これらのメーカーはアマチュア用赤道儀から撤退してしまったようです。天文少年の頃よりは、予算も奮発できるので、国産から、高橋製作所のEM200、ビクセンのSXDP2の2機種、外国製はLosmandy社のG11sの3機種から選ぶことにしました。ざっくりとした比較は下の表のとおりです。

このうちビクセンは、子供頃の印象がどうも良くないし、目盛環もついていないので、脱落としました。

Losmandy G11sに関しては、ネットの情報も少ないので、代理店のジズコさんに見せてもらおうと、恵比寿に電車で出かけることにしました。

ジズコさんのお店は、JR恵比寿駅のすぐ近くのマンションにあって、普通の家の玄関のような入り口を恐る恐る入ると、架台がたくさん置いてあります。あいにく、Losmandyの赤道儀は、デモ機がありません。

私の目的は、都内から見える惑星、月、明るい星雲をベランダから見たいとお話したところ、経緯台が設置が簡単だからいいのではと勧められました。まあ、もっともな助言でしたが、視野の回転が嫌だとこちららの考えを話したところ、G11の弟機のGM8はどうだろうかと提案されました。たしかに、狭いベランダに置くのならば、小さな赤道儀の方が取り回しはいいですし、積載量も13kgありますから、十分ですし、PCなしで、自動導入も可能です。その後、頭ボーッとして、しばらくして、意識が戻ったら、GM8を発注していました。


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