蒼天在眼 (そうてんまなこにあり)ーベランダで星を見る

昔、昔、天文少年でした。そして、今は、ベランダから、星を見ています。
いろいろの忘備録

ドリフトで決める の巻 その2 デジタルカメラ利用編

2021-09-23 15:32:04 | 天体観測

デタルカメラ時代の極軸合わせのドリフト法

 (Drift Alignment with CCD or CMOS camera)

このページを読んでこの方法を初めて知りました。

★彡 改良ドリフト法による極軸合わせ(1); 試行結果

新春の手始めに昨年末やり残しの極軸合わせを行いました。短焦点のFSQ-106ED...

 

 

Cloudy Nightsにもこんな記事があります。

OGPイメージ

D.A.R.V (Drift Alignment by Robert Vice) - Articles

D.A.R.V. (DSLR / CCD Drift Alignment by Robert Vice) For many yea...

Cloudy Nights

 

以下の書籍の第12章にこの方法の紹介があります。

「Gerald R. Hubbell , Patrick Moore's Practical Astronomy Series 

Scientific Astrophotography :How Amateurs Can Generate and Use Professional Imaging Data 

© Springer Science + Business Media New York 2013」

https://www.amazon.co.jp/Scientific-Astrophotography-Professional-Practical-Astronomy-ebook/dp/B00AKIFGNS

 

さて、前置きは、このぐらいにして、この方法のポイントは、撮影中に赤道儀を赤経軸回りに往復運動させて、ドリフト量とその方向を“見える化“するといういうものです。

いろいろやり方はあると思いますが、balcon の普段行っているやり方を示します。

普通にドリフト法で選定する対象の恒星を選びます。極軸を東西方向に合わせるならば、天の赤道近くの南中前後の恒星を、極軸を 南北方向に合わせるならば、東北方向の水平線から少し昇ってくる赤緯40〜50度の恒星を選定します。

セオリー通りならば、上記の通りなのですが、balconのベランダは北東方向は、視界が悪く、南西方向が開けているので、南西方向の沈みつつある恒星を利用しています。手早く測定しないと、沈んでしまうので、精神衛生に悪いです。(笑)

赤道儀を振る速度は、大雑把に合わせるときは、日周運動の5倍速(75秒角/分)、もう少し精密に合わせるときは、日周運動の2倍速(30秒角/分)で動かしています。

機材は、KE-60屈折望遠鏡(口径60mm、焦点距離910mm)、CMOS カメラは、ZWO asi 224 mc を asi air に接続して、直焦点撮影します。asi airは、wifiでiPadに接続しています。

赤道儀は、Losmandy GM8です。対象の恒星を導入したら、コントローラの追尾速度(speed)に、guideにセットします。デフォルトでは、日周運動の5倍速です。

実際の方法は、次の通りです。

1) asi air をpreviewモードに設定して、露出時間を1分か3分にセットします。撮影を開始します。

2) 日周運動追尾で、10秒間撮影をします。

3) ハンドコントローラの右向き矢印 -> を押して、総露出時間の1/2(30秒または、90秒)押し続けます。

4) 30秒または90秒になったら、左向き矢印 <-を押し続けて撮影が終わるのを待ちます。

結果、このようなV字型の星像の写真が得られます。

丸くなっている端が開始点、丸みのない端が終点です。ドリフト0の場合は、往路と復路が一致して、2本の線が重なります。

赤道儀の基部にある微動ネジを一定量回転して、2回目の写真を撮影します。

幸いドリフト量は減少してきました。もしドリフト量が増えたら、反対方向に、先ほど回転量の二倍回して、撮影します。これを繰り返して、復路の線が、恒星像の中心のを通過するように、調整します。

ほぼ、ドリフト量は0に近づきました。

さらに暗い恒星を対象にして、日周運動の二倍速で3分露出して、極軸を追い込んでいくとこんな感じ極軸が合ってきます。

赤経方向、赤緯方向の2方向で追い込んだあと、オートガイドを行なって、ガイドエラーを見てみます。

ガイドエラーは、赤経方向0.68秒角/秒、赤緯方向で0.53秒角/秒と、どちらも、1秒角/秒以下となります。

望遠鏡の焦点距離ガイドエラーの許容範囲についての「天体写真の世界」

http://ryutao.main.jp/tips_howto22.html

の記事によれば、それぞれの焦点距離に対して、恒星が点像になるガイドエラーの許容範囲は、以下の通りで、

今回の精度で、焦点距離2000mm以上まで対応できるようです。(Balconの独自計算上は約2400mm)

焦点距離910mmのKE-60で撮影する場合を考えると、必要な精度の約三倍の精度です。

北極星の見えないベランダでも、十分な精度で、極軸を合わせることができたと思います。

あらかじめ、子午線に沿って赤道儀が設置されて、緯度に合わせられていれば、所要時間は、1分の露出が5回程度、3分の露出が3回あれば、合わせられるので、一方向15分程度、2方向で、30分ほどで、極軸を十分な精度で合わせることできます。

今回はasi air を使いましたが、時間が計れて、デジタル写真を撮れる環境があれば、特別なソフトも、pcも必要ありません。

原法とも言うべき記事が、

http://www.minorplanet.info/ObsGuides/Misc/ccdpolaralignment.htm

にあるので、次回は、少し理論的背景について、説明を掲載する予定です。


ドリフトで決める の巻 その1

2021-09-23 12:52:09 | 天体観測

ドライビングテクニックの話ですと言っても、車ではなく、赤道儀の運転ですけど。

ベランダに赤道儀を設置する場合、大多数の設置場所は、南向きで、北極星を直接観測できません。このような状況で、赤道儀の極軸を合わせて、天体の日周運動を、望遠鏡できちんと追尾するためによく使われる方法はドリフト法と言われるやり方です。

極軸が合っている赤道儀で、恒星を観測すれば、時間が経過しても、視野中では恒星は動かないはずです。極軸が合っていなければ、時間の経過とともに恒星が動いてしまいます。この動きをから、極軸のズレの方向を検出する方法がドリフト法です。

新版 天体望遠鏡ガイドブック(西條善弘、渡辺和明 著 誠文堂新光社 1989年)  p66;によれば、極軸のズレは下の表のように判断すれば良いとのことです。

これで、全てなのですが、どうして、そうなるのかちょっと考察してみます。

上の表の左から3番目の場合、極軸が西にズレている場合を考えるます。

上の図で、黄色円の一部が星の日周運動で、白い円は赤道儀の回転を表しています。観測者は、赤道儀の北に立って、南の空に望遠鏡を向けているとします。あれれ、赤道儀の回転軸は、東にズレているぞと思った方は鋭い! 赤道儀の極軸は、北半球では、天の北極を基準にズレを表現するので、今見ている向きは、極軸を反対側から見ているのです。いわば犬の頭からお尻を見ている感じです。「犬が西向けば、尾は東」なので、赤道儀が西に向けば、赤道儀の回転の軌跡は南天では、東にズレるわけです。日周運動は、この場合東から西に向かうので、図にあるように、星は北にドリフトします。通常利用するケプラー式望遠鏡は、上下が逆転するので、望遠鏡の視野内では、下向きにドリフトします。

各場合についても、図を書くと、表の通りにドリフトします。図を書くときは、「犬が西向けば、尾は、東」をお忘れなく。

しかし、複雑でわかりづらいです。また、極軸のズレが小さい場合、どちらの方向にドリフトしているのか判断するのも難しいです。

そこで、次回は、デジタル写真を利用して、直感的に、正確に極軸を合わせる方法を紹介する予定です。

「新版 天体望遠鏡ガイドブック」は、良書だと思いますが、残念ながら絶版です。デジタル写真関連の記事を加え、「新新版 天体望遠鏡ガイドブック」としたら、ー絶対、売れると思いますが、どうでしょうか誠文堂新光社さん。


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