ギターには、世界中でスタンダードとされているモデルがあるのは周知の通り。
エレキギターでは、ギブソンのレスポール、フェンダーのストラトキャスターとテレキャスターがそうであろう。
レスポールは、大学時代に友達が持ってたので、学園祭でのライブではその「本物のレスポール」を借りて演奏したことがある。
ちなみに私は、レスポールを買いたいと思ったことは一度もない。
初めて買ったエレキは、SGのコピーモデルだったし(まあ、SGもレスポールと呼ばれていた時期があるのは、レスポールファンならご存知だとは思うが・・)。
レスポールは重いうえに、ジャックを差し込む位置もあまり好きではない。
ジミー・ペイジがレスポールを弾いてる姿はカッコいいし、その音も好きなんだけど、どうも外観的にレスポールは私の好みではないみたいだ(笑)。
ストラトは、20代後半に、自分のバンドの方向性から必要性があったので実際に購入。まあ、もともとストラトにはあこがれもあった・・というのもあったけど。
なにより、あの、流れるようなデザインが好きだった。
いつかは手に入れたい・・と思ってたギターだったので、入手した時は嬉しかった。
バンドのためにも、自分のためにも、ストラトは買って大正解だった。
結局、20代後半の頃に組んでたバンド、そして30代前半に組んでたバンド、この2つのバンド時代を、私はこのストラト1本で過ごした。
なので、そのストラトに関しては、思い出が多く、例え最近あまり弾いてなくても、愛着はひとしおである。
だが、テレキャスターに関しては、少なくてもフェンダー(USA)社製のテレキャスは私は弾いたことがない。
あの形は好きだし、弾いてみたいという気持ちはあるし、欲しいという気持ちもあるのだが、どうもテレキャスは「扱いが難しいギター」というイメージがある。
上手くない人が弾いたら、悲惨になる・・そんなイメージがある。
そのサウンドは非常に個性が強い。
使い方をあやまると、耳障りな音に聞こえるが、逆にツボにはまった使い方をしたら、他のどのギターにも出せない無比の存在になる。
テレキャスじゃないと、ダメ!そんな存在感。
山下達郎さんが、テレキャスのリズムカッティング時の歯切れの良さを愛してやまないのはよく知られている。
また、エルビスのギタリストとしてあまりにも有名なジェームス・バートンの弾くテレキャスは、ロックンロールギターに多大なる影響を与えたといえるだろう。
キース・リチャードにとっても、今や彼のトレードマークみたいなギターになっている。
スプリングスティーンが「明日なき暴走」のジャケットで持ってたテレキャス・シンラインも実にカッコイイ。
そして、クラプトン、初期のジミー・ペイジ、その他、テレキャスを愛してやまない著名なギタリストは、限りないくらい存在する。
で、個人的には・・・テレキャスと言えば、極めつけ!とも言えるギタリストがいる。
その極めつけのテレキャス・ギタリストこそ、ロイ・ブキャナンだ。
もちろん、名器テレキャスターには数多く愛用者がいるのは分かってるんだけど、私にとってはやはり、テレキャスターといえば、まずロイ・ブキャナンの名が浮かぶ。
ブキャナンは、テレキャスの特性を知り抜いて、テレキャスならではの弾き方やサウンドを引き出しぬいたギタリスト・・・・そんなイメージがある。
一度聴いただけで、すぐに「これはテレキャスだ!」と分かる音だ。
鋭くキンキンしたサウンド、ピッキングハーモニックス、などなど。
ブキャナンの代表曲といえば「メシアが再び(the messiah will come again)」という曲をあげる人は多い筈。
スタジオレコーディングバージョンの「メシアが再び」では、最初は静かに語りの部分があり、それが終わるといきなりタメをたっぷりとった高音チョーキングでリードギターがメロディを奏で出す。
もう、この部分だけで、ノックアウトものだ。メロディも音色も、弾き方も。
そして曲の途中で突然引っ掻くような速弾きが始まり、その音階はどんどん上がっていき、しまいには指板やフレットを超えて、ピックアップの上あたりまで音が駆け上がっていく。
行き着くところまで行ってくれる・・・・そんな感じだ。
で、違うパートでは、ピッキングハーモニックスの妙。
これが絶品!!
テレキャスでなきゃ出せない音で、まさにギターがむせび泣いているとしか思えない。ギターが感情を持った生き物になる瞬間だ。
ボリュームコントロールをしながらのバイオリン奏法まで加えられた日には、そりゃあもう・・・。
テクニック、情感、メロディライン、フレージング、音色、奏法、表現力。
まさに、テレキャス職人、ロイ・ブキャナン!ここにあり。
ブキャナンは確か、来日公演を行ったことがあるはず。
だが、私は何かの用事で行けなかった。
行きたかった。生で、あの演奏を聴いたら、鳥肌ものだったろうな。
ブキャナンの日本公演には、当時の私の知り合いが見に行った。
なんでも、そのコンサートはライブ録音されていたらしく、その知人の席の近くには録音マイクが設置されてたらしい。
それを知ってか知らずか、その知人は・・・・じっくり聴かせる曲の静かなパートで、マイク方面に向かって
「オッサン!」と叫んだらしい(爆)。そう、ブキャナンに向かって。
・・まあ、ブキャナンは確かにオッサンと言えばオッサンだったんだろうけど、何もそのタイミングで言わなくても。
当然その声はマイクに拾われたはず。
あたりはシ~~ンと聴き入ってた筈だから。
よりによって、場内がシーンとなってる静かなパートで「オッサン!」の声が入っていたんじゃねえ。
そのコンサートのライブアルバムが、結局発売されたのかどうかは定かではない。
でも、もし、その「オッサン!」が原因で発売されなかったのだとしたら・・・泣くに泣けないよねえ。
まあ、レコード会社の録音技術でその「オッサン」を消すことは技術的にできただろうけどね。
ローリングストーンズ(!)は、ブキャナンに「ストーンズの正式メンバーとして加入してもらいたい」というオファーを出した。でも、断られた。
ジェフ・ベックは「ロイ・ブキャナンに捧げる」という言葉を、自身のアルバム「ブローバイブロー」の「哀しみの恋人たち」という曲のクレジットにいれた。
ロビー・ロバートソン(ザ・バンドのギタリスト)は、ブキャナンのライブを観るために、わざわざ遠い地方の小さな店にまで出向いた。
エリック・クラプトンに至ってはブキャナンのすべての音源を集めていた。もちろん海賊版も含まれるし、プライベートなカセットテープ音源も含めて、だという。
ジョージ・ハリスンは、ロイ・ブキャナン・モデルのギターを持っていた。
望めば、彼は、世界的な知名度と人気を誇るスーパースター・ギタリストになることも容易くできた。
でも、ブキャナンは、それをしなかった。
華やかさとは無縁の、まさに「職人ギタリスト」だった。
そして、最高のギタリストの一人であったのも、間違いない。
彼の凄さや実力は、スーパースターたちは誰よりもよく知っていた。
もちろん、ファンも。
1988年、彼は泥酔して収容された刑務所で、首つり自殺をしてしまった。
一説によると、刑務所にいる自分自身に対する自己嫌悪が動機だったともいう。
この情報を知った時、私は、悲しさや寂しさと共に、やりきれない思いでいっぱいになったのを覚えている。
その時、彼の愛用したテレキャスターは、弾き手もいないのに、むせび泣いたに違いない。
キュウィ~~~ン ・・・と。
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時間の外にようこそ。
ロイは、まさに職人的なロックギタリストといわれてました。
テレキャスターの特性を極限的に引き出していたと思います。
彼がその後若くして亡くなることを考えれば、ライブに行っておけばよかったです。
本当、行けなかったことを後悔してます。
そう、確かに見た目はおじさんという感じでしたね。
なので、圧倒的に男性ファンが多かったと思います。
逆に、ロイの女性ファンは、相当渋い感性を持ってたのでしょうね。
ちなみに私のまわりでは、ロイファンの女性は、、、いませんでした(笑)。