
鈴木茂さんの、クラウン在籍時のソロアルバムをまとめたボックスセットが発売されている。
その名も「鈴木茂ヒストリーボックス クラウン・イヤーズ1974~1979」という名のCDボックスセット。
収録アルバムは「BAND WAGON」「LAGOON」「Caution!」「TELESCOPE」「COSMOS `51」「レアトラック集」の計6作。
このうち、「BAND WAGON」「LAGOON」「Caution!」の3枚のアルバムは、私にとっても馴染み深く、よく聴いた作品である。『TELESCOPE」「COSMOS`51」の2枚は聴いたことがなかった。
今回このボックスセットを入手して、初めて聴くことができるアルバムになる。
だが、今回このブログでは、3枚目のアルバム『Caution!」中心に書いてみたい。
正直、「BAND WAGON」や「LAGOON」は名作の誉れ高く、これまでにあちこちで述べられてきている。
特にファーストの「BAND WAGON」の評価は圧倒的だった。私は以前、ボーナス映像付きのバージョンを買ったこともある。
確かに「BAND WAGON」のファンキーなサウンドはゴキゲンで素晴らしいし、名盤と言われるのはよくわかる。
これを聴いた時は、ちょうど私はリトルフィートの「ディキシーチキン」を聴いてた頃だったので、心の中に「ストライク!」って感じだった。ただ、サウンドがすご過ぎて、もっぱら「聴いて楽しむ」音楽だった。1曲目から、心をわしづかみ。
最初から最後までテンションが落ちない。
また「LAGOON」での落ち着いてスマートでトロピカルで、洒落たサウンドも素晴らしい。
心に染み込んできた。今の時代屋でやってる私が作った曲には「LAGOON」からの影響は出てないけど、実はこのアルバムのサウンドはいつも心のどこかに漂っている。夢のひとつだ。特に「コルドバの夜」には聴きほれ、「8分音符の歌」という楽曲には涙涙だった・・。
この2枚のアルバムは、狙いもコンセプトも分かりやすい。
「Caution!」は、上記2枚のアルバムの前にかすんでしまっているかのような印象があるし、実際あまり語られるのを見たことがない。だからこそ、私が取り上げたい。
このアルバムを制作した頃の鈴木さんは、はっぴいえんど解散後ソロになって、ニューミュージックのシンガーたちと一緒に仕事をすることが多かった。そのせいかどうかは分からないが、このアルバムはギタリストとしてよりも、ニューミュージックのシンガーソングライターのアルバムのような出来上がりになっている。
前2作に比べると、ややこじんまりした地味な仕上がりにも思える。
だが、よく聴いてみると、個人的には好きな曲がいっぱいつまっているのだ。私にとっては好盤。
簡単ではあるが、1曲ずつ取り上げていこうと思う。
「レイニーステーション」は、当時のヒットチャートを大いに意識したようなポップスに仕上がっていた。
「映画ならここで終わり」という歌詞が、好きだったなあ。
「サマーワイン」のサビでの一瞬のエレキの入り方は印象的だった。ちょっと、ジョージ・ハリスンのギターを思い出した私は、ヘン? 出だしの感じは、当時人気のあった一連の男性ニューミュージックシンガーの楽曲っぽいかな~。
「風信子」などは、アルバムのラストにもってきてもおかしくないような、スケール感を感じた。今ならもっと派手なアレンジにするのかな。アルバムのこの位置にあるのがもったいない・・そんな名曲だと思う。
「ジュリエット」は、軽快な曲で、夏向きのポップナンバー。コーラスに、ビーチボーイズを彷彿とさせる箇所があるのがミソ。アルバムの中渡し曲としては、もってこいって感じ。この曲の存在は、アルバムの構成にアクセントを与えている。
「サテンドール」のサビは大好き。つい口ずさんでしまう、歌詞とメロディの一体感が好き。どこか「LAGOON」に収録されててもおかしくないようなアレンジの匂いを感じた。粋なアレンジだった。好きな曲。
「はるかぜを待つ人」は、どっちかというとフォーク系ニューミュージックのような楽曲で、親しみやすい曲だ。キーの高いアコースティックデュオがハモりを効かせて歌ってもサマになりそうだ。
「はじめは他人」は、フォークをもっと洗練させたポップス・・って感じの曲。ちょっと聴いただけでは地味な感じだが、よく聴いてみると、中々味わい深い曲。
「TSUPPARING BLUES」は、当時のニューミュージックと呼ばれたジャンルのヒット曲のアレンジが色濃く反映された仕上がり。当時アメリカで流行ってたAORのようでもある。このアルバムの中では、個人的にはあまり好きではないかも?
「MOON BABY」は、このアルバムのラストナンバー。甘く優しく、ロマンティックでドリーミーなラブソング。中々ム-ディな曲。女の子に人気あったんじゃないかなあ、この曲。
以上が、この「Caution!」というアルバムの内容だ。
「BAND WAGON」の派手さや、「LAGOON」のオシャレさは無いが、その分、味わい深いアルバムになっていると思う。
もっとじっくり聴かれてほしかったアルバムだ。
ギタリスト鈴木茂のアルバムというよりも、シンガーソングライター鈴木茂のアルバム・・・として聴くと、その良さに気づきやすいと思う。
このボックスセットを通して聴いてみると、はっぴいえんど解散後の鈴木茂の歩みがよく分かる。
スタジオミュージシャンとしても活躍した鈴木茂のアルバムには、その時代の音楽の流れが色濃く反映されている。
ボックスセットなので、いざ買おうとすると、けっこう高価かもしれない。
でも、はっぴいえんどのメンバーの1人の歴史が、確実にここに記録されているので、彼のアルバムを聴いたことがない人には、良いチャンスになると思う。
ハイトーンのボーカル、独特の流れを持つポップなメロディ、カラフルな歌詞(松本隆が中心)、そしてギタリストのアルバムにありがちな「どうだ、俺のギターってすごいだろう」的な要素のない、さりげなく要所を押さえたギターワーク。
心地よく聴けると思う。
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