マーチンクラブ主催のギターショウとコンサートがあるというので、先日行ってみた。
以前にも行ったことがあるが、行くのは数年ぶりだった。
以前行った時は、ギターショウの会場で、マーチンの社長を発見。
向こうは私のことなど知る由もないのだが、こちらとしては一方的に知ってるわけで(ギターの本などで)、目が合った時に私は思わず会釈してしまったのを覚えている(笑)。
今回もマーチン社長来てるかな・・・と思って会場をぶらついてみたが、今回はいなかったようだった。
ギターショウというのは、マーチンギターの比較的安価なモデルから、高級モデルまでが会場に展示され、来訪者は、展示されてるマーチンを手にとって試奏できる。
当初私は遠慮がちに比較的安価なモデルを試奏していたが、どうも高級モデルが気になってしかたなくなった。
特に、噂のオーセンティックモデル。
会場には何本ものオーセンティックマーチンも展示されていたのだが、なにせ100万以上もするので、傷つけたら大変なことになるし、気軽には手に取れなかった。
弾いてもいいのかな・・・などとも思って。
なので当初は安価なモデルを気軽に試奏してたのだが、だんだん物足りなくなっていった。
安価なモデルを弾いて、この音なら我が家のマーチンの方が上だな・・・などと思うと、特に。
やがて、来訪者がオーセンティックを試し弾きしてる光景を見て、私もいてもたってもいられなくなり、まずはオーセンティックのD-28を手にとって弾いてみた。
オーセンティックを抱いた瞬間、私は周りの人たちのことが目に入らなくなった。
そこは私とオーセンティックだけの世界にでもなったかのようだった(笑)。
会場はかなり盛況で、あちこちで色んなマーチンを試し弾きしてる音が聞こえるし、話し声もたくさん。
なので、ギターをじっくりと試し弾きする場としては、ギターの1本1本のサウンドは聴きとりにくい。
実際、安価なモデルばかりを弾いてた時は、各ギターの細かい個体差まではわかりにくかった。
もちろん、おおまかな個体差は分かったけれど。
そんな中。
オーセンティックD-28を手にとって軽くポロンと鳴らしてみたら、これがもう音の次元が違う。
軽く弾いただけでも、深遠なサウンド。そう、深みが違う。
賑やかな会場であっても、そのサウンドの違いは一発で分かった。
それまで会場で試し弾きしていたモデルとは明らかに違った。
続いて、別のオーセンティックに手を伸ばした。
それは同じ28型でも、12フレットジョイントのモデルで、ボディが通常のDサイズよりも大きい。
確か・・このモデルは、「S」という表記が加わるD-28なのではないかな。
値段を見ると、通常のD-28オーセンティックよりもさらに若干高価。
これらのモデルは、普通の楽器屋では中々お目にかかれないし、仮にあったとしても、ショーウインドウの中に大事に保管され、おいそれとは弾かせてもらえそうもないモデルばかり。
はやる心をおさえ、平静を装い、その12フレットジョイントのオーセンティックD-28を弾いてみたのだが・・・
これがもう、スゴイ。おったまげた(笑)。
音量では、前述のオーセンティックの14フレットジョイントのD-28以上では?
ポロンと軽く奏でただけで、ブォーンと鳴り、まるでグランドピアノのような響き。
ボディの奥の奥の方までを使って残響している感じ。
なんだ、こりゃ~?おいおい、すごいぞ、これ。
ネックはやや幅広なので、通常のD-28オーセンティックの方が当初は弾きやすく感じるかもしれない。
だが、音の深さ、響き・・というか、音圧が圧倒的。
どちらの28も甲乙つけがたく、明らかに他のギターとはモノが違う感じ。
個人的には12フレットジョイントの28の方が凄みを感じた。
だが仮にもしも私が買うとしたら(買えるわけはないけど)、どちらを選ぶかなあ。
音だけなら12フレットジョイントの方。
だが、自分の音楽スタイル考えたら、やはり14フレットジョイントのほうかなあ。
ハイポジションを弾くこともあるから。
・・まあ、どちらにせよ、とても買えないから、悩む必要はないのだが(笑)。
ともあれ、これがオーセンティックか・・とため息が出た。
次にD-18のオーセンティックも弾いてみた。
これまた、マホガニーとは思えない深さ。それでいて、28とは違う、マホならではの軽やかさもあって。
ともかく、通常の18とは違う。
はっきりいって、オーセンティックを弾いたら、他のマーチンが弾けなくなってしまった。
オーセンティックを弾いて聴いた音を耳に保管しておきたくて(笑)。
それでも、エレアコは別物ととらえ、オーセンティックの次にエレアコだけは弾いてみようと思った。
高価なエレアコのモデルも展示してあったので。
生音のすごさはオーセンティックにかなわないのはあたりまえで、そのへんはエレアコ仕様だからと思って弾いてみた。
でも、・・エレアコだからと割り切ってはいても、どうしてもオーセンティックの音が頭にこびりついて・・。こりゃまずい(笑)。
これじゃあ、エレアコの正当な判断はできないよ(笑)。
エレアコを試し弾きする前には、オーセンティックみたいなギターは弾かないほうがいい・・と実感。
さて。ふと、オーセンティックのコーナーを振り返って見てみたら。
展示してあったオーセンティックを私が一通り弾いて、ギターを慎重にギター台に戻した途端、他の人が次々とオーセンティックを手に取りはじめた。
皆、私が弾き終わるのを待っていたのだろう。それまで。
私が弾いてるのを見て、我も我もとばかりにオーセンティックが「空く」のを待っていたように見えた。
それ後も、絶えずオーセンティックは誰かが弾いてる状態になってしまった。
きっと、その響きに、他のマーチンとは違った凄みを感じたんじゃないかな。
これまで私は、オーセンティックはその値段ゆえにあまり現実的な存在とは思ってなかった。
また、弾く機会もなかった。
だが、ああして実際に弾いてしまうと・・・さすがにモノが違うことはよくわかった。
やはり凄いわ。
大昔は・・あのオーセンティックの仕様が、通常のマーチンの仕様だったことを思うと、ビンテージのマーチンがいかに凄かったかが窺い知れる気がする。
会場には、D-180なる、聞き慣れないマーチンもあった。
なんと値段は200万円以上!!
さすがに、これは試奏はできないみたいだった。
となると、試奏できるギターで一番高価だったのは、やはりオーセンティックだったのだろう。
欲を言えば、D-180も弾いてみたかった。だが、もしも傷つけたら大変なことになる。もっとも、それはどのマーチンにも言えるけどね。
マーチンといえば、45が最上級のはずなのに、50だの、100だの、180だの、簡単に45以上の型番を作ってしまっていいのかな・・・という複雑な思いは私の中にくすぶっていたけど、この180というのは、マーチン社の180年記念モデルだったんだね。
1976年にアメリカの建国モデルとしてD-76というモデルをマーチンは出したことがあるが、このD-180は、それに近い意味合いのモデルなんだね。だとしたら納得。
D-180は、豪華な飾りがありながらも、あまり成金っぽさ(?)がなく、適度に抑えられていた。
そんな点はいいかな~。
ともかく、オーセンティックマーチンを弾けただけでも、このギターショウに行ったかいはあった。
ギターショウは入場無料だった。しかも、来訪者は、マーチンのカタログなどがはいるロゴ入りの袋がただでもらえ、なんと!その袋の中には、弦が1セット入っていた。
つまり、行けばただで弦はもらえるし、高価なマーチンは弾けるし・・で、マーチンファンにとってはお得なイベントだったと思う。
それにしても・・
あのオーセンティック28は
凄かったなあ。
レベルが違う気がした。
さすがではありました。
会場を出た後・・・
私は家にある秘蔵のギターをケースから引っ張り出したくて仕方なくなった。
大事にするあまり、ケースに入れて、普段あまり弾けていないから。
我が家にあるギターで、あのオーセンティックに対抗できるギターというと、とりあえず1本くらいしか思いつかなかった。
それはつまり、オーセンティックを入手できない自分への、あきらめとなぐさめでもあった(笑)。
なんとしても自分をあきらめさせるには、それしかないような気がした。
お店などで素晴らしいものを見つけても、値段的に入手したくても入手できない時のもどかしさや、くやしさ・・・きっと誰にも経験はあるのではないだろうか。
その場合、皆、どうやってあきらめているのだろう・・・。
それはなにもギターに限らないのだ。
ファッション、骨董品、美術品、車、家電、旅行、その他。
時には、人の心も。 ・・・なんてネ(笑)。
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