天上天下唯我独尊

夢に生き、夢のように生きる人の世を
憐れと思へば、罪幸もなし・・・

葡萄の運命

2003-01-01 00:00:00 | 



桶に注ぎ込まれた葡萄果汁が

 
酵母によって葡萄酒になるように

聖なる夜、神の命によって

正直な男は義理堅い紳士に、清純な娘は優婉な淑女になる。



可憐な花を咲かせて膨らんだ、甘く切ない想いも

誰かに摘まれて踏まれなければ、間もなく萎んで腐ってしまう。

いくらでも泣けばよい、踏みつけられても、それで穢れてしまうわけではないから。

寧ろ喜び叫ぶくらいでもいいのだ、搾られても、それで旧い皮を脱ぎ去ることができるのだから。



よい葡萄酒になるためには、痩せた畑に植えられて、飢えさせられ

よい時期に、誰かに摘まれて踏まれ、桶の中で生まれ変わらねばならない。

そして濾過され、瓶詰めされたら、気高い香りが熟すまで、埃に塗れて過ごさねばならない。

それは神が定めた葡萄の試練、やがて神と世界に甘美な夢を見させるための。



いくら香りが華々しくても、いくら酸味が鮮烈でも

酒精がなければ人を酔わせるには至らない。

いくら容色に恵まれていても、いくら才力に秀でていても

己の為に生きるなら、愛し愛されることは叶わない。



男の心を酔わすのは

色気や若さではなく、歳と共に深まる女の心遣い。

女の胸を熱くするのは

地位や財産ではなく、大義に生きる熱い男の志。



シオンの子らよ
 
あなたに聖霊が降ったら

あなたの心が、泡を立てて醸され始めたら

高鳴る胸を抑えて、口を閉じていよ。

酒を供する家は、黙っていても知られようから。



甘酸っぱいだけの葡萄果汁が、薫り高い美酒へと変貌する夜

生まれ変わったあなたの心が、愛の鼓動を始めたら……。

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